マタイの福音書:第24章マタイの福音書第23章第13節~第36節:イエスさまが宗教の指導者を批判する(続き)

2015年12月09日

マタイの福音書第23章第37節~第39節:イエスさまがエルサレムを嘆く

第23章



(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


Jesus Grieves over Jerusalem

イエスさまがエルサレムを嘆く


37 “O Jerusalem, Jerusalem, the city that kills the prophets and stones God’s messengers! How often I have wanted to gather your children together as a hen protects her chicks beneath her wings, but you wouldn’t let me.

37 ああ、エルサレム、エルサレム。預言者たちを殺し、神さまの使者を石で打つ町よ。めんどりがひなを翼の下にかくまうように、私が幾度あなたの子どもたちを集めたいと思ったことか。それなのにあなた方は私にさせようとしません。

38 And now, look, your house is abandoned and desolate.

38 さぁ、見なさい。あなた方の家は捨てられて住む人もいません。

39 For I tell you this, you will never see me again until you say, ‘Blessings on the one who comes in the name of the LORD!’”

39 なぜなら私はあなた方に言います。あなた方が『主の名前によって来る方に祝福あれ』と言うときまで、あなた方は決して私を見ることはありません。」




ミニミニ解説

マタイの福音書第23章、今回は最後の部分です。

マタイの第23章はほぼ全体がファリサイ派の批判にあてられていました。最後の第37節~第39節はイエスさまがエルサレムについて嘆く言葉です。

ここは「ルカ」に同じような記述があります。Luke 13:34-35(ルカの福音書第13章第34節~第35節)です。

「34 ああ、エルサレム、エルサレム。預言者たちを殺し、自分に遣わされた人たちを石で打つ者、わたしは、めんどりがひなを翼の下にかばうように、あなたの子らを幾たび集めようとしたことか。それなのに、あなたがたはそれを好まなかった。35 見なさい。あなたがたの家は荒れ果てたままに残される。わたしはあなたがたに言います。『祝福あれ。主の御名によって来られる方に』とあなたがたの言うときが来るまでは、あなたがたは決してわたしを見ることができません。」([新改訳])。

「マタイ」・「ルカ」=「マルコ」+「Q資料」+「独自の資料」の公式にあてはめると、ここはイエスさまの語録集である「Q資料」からの採用と言うことになります。ルカの第13章はイエスさまがエルサレムに到着するはるかずっと前の章ですので、それぞれの福音書では「Q資料」に書かれたイエスさまの語録をかなり独自の編集方針で組み込んでいるのだなと思わされます。

「めんどりがひなを翼の下にかくまうように、私が幾度あなたの子どもたちを集めたいと思ったことか。」という言葉は、遙か昔までイスラエルの歴史を遡って語る言葉のようで、イエスさまが使う「私」という言葉は、まるでイエスさま自身が預言者を派遣した神さまであるかのように感じさせます(実際、そうなのですが)。

エルサレムは西暦70年にローマ軍の攻撃に屈して陥落し、町も寺院も破壊されます。これはイエスさまの十字架から40年近くが経った後の話です。もしかするとマタイやルカが記述されたときには、すでにエルサレムの陥落が起こった後なのかも知れませんし、あるいはローマ軍の攻撃の戦火が迫り、いまにもそれが起こりそうな切迫して危機感を募らせる状況だったのだろうとも考えられます。

そういう不安と恐怖が支配する時代にあって、福音書を読みイエスさまの言葉を伝えるクリスチャンたちは、ローマ帝国からも同胞のユダヤ人からも迫害を受けて生きているのです。「あなた方が『主の名前によって来る方に祝福あれ』と言うときまで、あなた方は決して私を見ることはありません。」という言葉は、十字架死を経て天へ戻ったイエスさまが再来するときのことを自ら言っているかのようです。ここから先マタイの福音書は終末予告の様相を強めていきます。旧約聖書に書かれた「終わりの日」を予告する言葉や、イエスさまが語る終末預言の言葉は、当時の人々の心に切実に突き刺さったのだろうと思います。






english1982 at 20:00│マタイの福音書 
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