マタイの福音書第22章第15節~第22節:シーザーへの税金マタイの福音書:第22章

2015年12月10日

マタイの福音書第22章第1節~第14節:盛大な宴会のたとえ話

第22章




(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


Parable of the Great Feast

盛大な宴会のたとえ話


1 Jesus also told them other parables. He said,

1 イエスさまは指導者たちに他の話もしました。イエスさまは言いました。

2 “The Kingdom of Heaven can be illustrated by the story of a king who prepared a great wedding feast for his son.

2 「天の王国は息子のために結婚の盛大な披露宴を準備した王さまの話にたとえることができます。

3 When the banquet was ready, he sent his servants to notify those who were invited. But they all refused to come!

3 宴会の準備が整うと、王さまは招待しておいた客を呼びに使用人を派遣しました。ところが客はみな来ることを拒みました。

4 “So he sent other servants to tell them, ‘The feast has been prepared. The bulls and fattened cattle have been killed, and everything is ready. Come to the banquet!’

4 それで王さまは他の使用人を派遣して言わせました。「宴会の準備が整いました。雄牛と太った家畜を殺し、すべてが整っています。宴会へ来てください。」

5 But the guests he had invited ignored them and went their own way, one to his farm, another to his business.

5 ところが招待された客たちは使用人を無視して、自分たちのやりたいようにしました。ある者は農場へ、別の者は商売に出て行きました。

6 Others seized his messengers and insulted them and killed them.

6 ほかの者たちは王さまの使用人を捕らえて恥をかかせ、殺しました。

7 “The king was furious, and he sent out his army to destroy the murderers and burn their town.

7 王さまは激怒しました。王さまは軍を送り出して人殺しを滅ぼし、彼らの町を焼き払いました。

8 And he said to his servants, ‘The wedding feast is ready, and the guests I invited aren’t worthy of the honor.

8 それから使用人たちに言いました。「婚礼の祝宴の準備はできているが、私が招待した客たちにはそれだけの価値がありません。

9 Now go out to the street corners and invite everyone you see.’

9 さぁ、通りに出て行って、会う人をみな招待しなさい。」

10 So the servants brought in everyone they could find, good and bad alike, and the banquet hall was filled with guests.

10 それで使用人たちは見つけられる人を、良い人も悪い人も同じように全員連れてきました。そして宴会場は客でいっぱいになりました。

11 “But when the king came in to meet the guests, he noticed a man who wasn’t wearing the proper clothes for a wedding.

11 ところが王さまが客たちに会うために入って来ると、王さまは婚礼にふさわしい服を着ていない者がひとりいるのに気づきました。

12 ‘Friend,’ he asked, ‘how is it that you are here without wedding clothes?’ But the man had no reply.

12 王さまはたずねました。「友よ、あなたはどうして婚礼の服を着ないでここにいるのですか。」 しかしその男は答えませんでした。

13 Then the king said to his aides, ‘Bind his hands and feet and throw him into the outer darkness, where there will be weeping and gnashing of teeth.’

13 そこで王さまは側近に言いました。「彼の手足を縛って外の暗やみに放り出しなさい。そこでは泣き声と歯ぎしりが聞こえるのだ。」

14 “For many are called, but few are chosen.”

14 なぜなら多くが呼ばれますが、選ばれる者は少ないからです。」




ミニミニ解説

マタイの福音書第22章です。

イエスさまは十字架にかけられる前の一週間、毎日寺院へ通い、そこで人々に教えています。あるときイエスさまのところへ祭司長たちと長老たちが近づいて来て、イエスさまが寺院の異邦人の庭で行った動物商や両替商を追い立てた行為について問いただします。「何の権威によって、あなたはこれらのことをしているのですか。だれがあなたにその権威を与えたのですか。」 イエスさまはこの質問に質問で応じる形で対応します。「洗礼者ヨハネの洗礼の権威は天から来たのでしょうか。あるいは単に人間のものですか。」 このようにたずねると祭司長たちと長老たちは答えに窮して回答できませんでした。

マタイではこの出来事に続いて三つのたとえ話が書かれています。最初の「二人の息子のたとえ話」は「マタイ」だけに登場するたとえ話で、父のぶどう園で働いてくれと言う命令に対して「行きます。」と言いながら結局行かなかった弟がユダヤの指導者層を指し、「行かない。」と言いながら実際には行った兄は徴税吏や売春婦たちを指していて、イエスさまは後者が前者より先に神さまの王国に入る(あるいは入ってそこを占拠してしまう)と教えて指導者層を批判しました。

次の「邪悪な農夫のたとえ話」は「マルコ」と「ルカ」にも登場するたとえ話でした。ぶどう園つまりイスラエルの管理を任されたユダヤの指導者層は、地主つまり神さまが派遣する召使い、つまり預言者を適切に扱わず神さまの期待に背き続けます。最後には自分のひとり息子つまりイエスさままでもを殺されてしまった地主について、話を聞いていた指導者たちは、きっと地主は邪悪な農夫たちを残忍に殺してぶどう園を他の人たちに貸すでしょうと言います。このとき、ぶどう園が他の人たちに貸されると言うのはイスラエルの国がユダヤ人から取り上げられて、そこを異邦人が支配するようになる、という意味なのでした。

三つ目の今回は「盛大な宴会のたとえ話」です。これは「マルコ」には登場しないのですが、「ルカ」はに大変よく似た話があります。Luke 14:15-24(ルカの福音書第14章第15節~第24節)です。

「15 イエスといっしょに食卓に着いていた客のひとりはこれを聞いて、イエスに、「神の国で食事する人は、何と幸いなことでしょう」と言った。16 するとイエスはこう言われた。「ある人が盛大な宴会を催し、大ぜいの人を招いた。17 宴会の時刻になったのでしもべをやり、招いておいた人々に、『さあ、おいでください。もうすっかり、用意ができましたから』と言わせた。18 ところが、みな同じように断わり始めた。最初の人はこう言った。『畑を買ったので、どうしても見に出かけなければなりません。すみませんが、お断わりさせていただきます。』 19 もうひとりはこう言った。『五くびきの牛を買ったので、それをためしに行くところです。すみませんが、お断わりさせていただきます。』 20 また、別の人はこう言った。『結婚したので、行くことができません。』 21 しもべは帰って、このことを主人に報告した。すると、おこった主人は、そのしもべに言った。『急いで町の大通りや路地に出て行って、貧しい者や、からだの不自由な者や、盲人や、足のなえた者たちをここに連れて来なさい。』 22 しもべは言った。『ご主人さま。仰せのとおりにいたしました。でも、まだ席があります。』 23 主人は言った。『街道や垣根のところに出かけて行って、この家がいっぱいになるように、無理にでも人々を連れて来なさい。24 言っておくが、あの招待されていた人たちの中で、私の食事を味わう者は、ひとりもいないのです。』」([新改訳])。

「マタイ」・「ルカ」=「マルコ」+「Q資料」+「独自の資料」の公式にあてはめると、これは「Q資料」からの採用と言うことになります。

では今回のたとえ話の解釈を考えてみます。

イエスさまは第2節で「天の王国は息子のために結婚の盛大な披露宴を準備した王さまの話にたとえることができます。」と話し始めます。マタイが書かれたのは西暦65年頃、いよいよエルサレムがローマ帝国軍の攻撃に陥落してイスラエルという国家が滅び去ろうとしていく頃です(あるいはイスラエルが滅びた後の執筆かもしれません)。世はまさに世紀末の様相で人々は不安にさいなまれる日々を送っています。「終末論」、つまりこの世の終わりに何が起こるかが人々の間で盛んに話され、いよいよその日が来るのではないか、と考えられていたような時代です。

ここで盛大な披露宴を用意する王さまは神さまのこと、神さまの息子とはもちろんイエスさま自身のことでしょう。キリスト教ではイエスさまの結婚とは、十字架死~復活を経て一度天へ戻られたイエスさまが、この世の終わりの日の前に再び地上へ戻られ、そのときに地上の信者たちと合流することを指します。つまりイエスさまは信者たちと結婚するのです。

第3節、婚礼の祝宴の準備が整ったので(つまりイエスさまが地上に戻り信者と合流する準備が整ったので)、神さまは祝宴に人を招くために使用人を派遣します。ところが招待客はみな祝宴に来ることを拒んだのでした。「招待客」とはユダヤ人のことです。地上で唯一、神さまから選択された民族であり、聖書の形で神さまの言葉を預かり、神さまからの祝福が約束された民族なのです。ところがユダヤ人は神さまの期待に背き、自分のやりたいようにしました(「自分のやりたいようにする」と言うのは聖書の中で神さまの意図に背く行動を指すキーワードです)。第3節は旧約聖書に書いてある通りのことで、旧約聖書は言い換えればユダヤ人がいかに神さまに背いたかを書いた裏切りの記録なのです。ユダヤ人は自ら選択して神さまの庇護と祝福から離れたことになります。

第6節には「ほかの者たちは王さまの使用人を捕らえて恥をかかせ殺しました。」と書かれています。これは神さまが警告のためにイスラエルに遣わした預言者に耳を傾けず、それどころかあざ笑い、中には殺された預言者もいたことを指しています。

第7節、神さまは激怒して「軍を送り出して人殺しを滅ぼし、彼らの町を焼き払いました。」 神さまはこれをイスラエル周辺の異民族国家にやらせています。西暦70年のエルサレム陥落も旧約聖書に書かれてきた歴史の繰り返しで、今回も異邦人であるローマ人が出兵してイスラエルを滅ぼしエルサレムの町と寺院を焼き払いました。

第8節では神さまが「婚礼の祝宴の準備はできているが、私が招待した客たちにはそれだけの価値がありません。」と言います。ユダヤ人はイエスさまの婚礼の相手としてはふさわしくない、と言うのです。

そして第9節で、「さぁ、通りに出て行って、会う人をみな招待しなさい。」と宣言し、ユダヤ人でない人たちを祝宴へ呼び始めます。これも旧約聖書に預言されてきたとおりの予告の実現で、ユダヤ人が自らの罪を認めて悔い改めなければ、神さまの庇護と祝福は異邦人へと移ってしまうのです(逆に考えれば異邦人である私たち日本人がこうして福音を知りイエスさまを信じて神さまと関係を築くことができるのも、元はと言えばユダヤ民族が神さまの期待に背いたことによるのです)。

宴会場には多数の異邦人たちが招かれますが、第11節で神さまは祝宴にふさわしくない身なりの男をひとり見つけます。男は自分の服装について神さまの質問に答えられず、結果として手足を縛って外の暗やみに放り出されてしまいます。「そこでは泣き声と歯ぎしりが聞こえる」は福音書に登場する地獄の暗闇の描写です。

放り出されてしまったこの人はいったい誰なのでしょうか。ユダヤ人に代わって福音への招待を受けたからと言って、誰でも彼でもイエスさまとの婚礼に参加できるわけではないのだぞ、そうやって選ばれる人たちの中にも実はふさわしくない人たちが紛れ込んでいて、それでもその人たちは見つけられて外の暗闇へと放り出されるのだぞ、と言うのです。これはマタイの福音書を記述した教会(あるいは教会群)の中で、教義についての意見の対立があったことの裏返しなのではないかと思います。マタイの教会はユダヤ人の保守派層を出身母体とする教会と考えられています。保守派ということは、たとえばファリサイ派のように儀式や慣習を守ることを重視したはずなので、イエスさまが福音書の中で教えていることと対立する要素をたくさん感じさせます。マタイの教会が、イエスさまを信じる教会としてのまとまりを維持するためには教義の確立と共有はとても大切なことなので、マタイはこのような戒め的な一節をここに入れたのではないでしょうか。あるいは既にマタイの教会の内部には対立する教義を説く分子が存在したのかも知れません。

これでユダヤの指導者層を痛烈に批判し、イスラエルがどうしてローマ帝国に滅ぼされていくのかを説明する三つのたとえ話が完結しました。






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