マタイの福音書第21章第18節~第22節:イエスさまがイチジクの木を呪うマタイの福音書第21章第1節~第11節:イエスさまの勝利の入城

2015年12月11日

マタイの福音書第21章第12節~第17節:イエスさまが寺院を一掃する

第21章



(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


Jesus Clears the Temple

イエスさまが寺院を一掃する



12 Jesus entered the Temple and began to drive out all the people buying and selling animals for sacrifice. He knocked over the tables of the money changers and the chairs of those selling doves.

12 イエスさまは寺院に入り、いけにえの動物を買ったり売ったりしている人たちをみな追い出し始めました。イエスさまは両替商人のテーブルと、鳩を売る人たちの椅子をひっくり返しました。

13 He said to them, “The Scriptures declare, ‘My Temple will be called a house of prayer,’ but you have turned it into a den of thieves!”

13 イエスさまは人々に言いました。「聖書は『私の寺院は祈りの家と呼ばれる。』と宣言しています。しかしあなた方はそれを泥棒の巣にしてしまいました。」

14 The blind and the lame came to him in the Temple, and he healed them.

14 寺院では、目の不自由な人たちや足の不自由な人たちがイエスさまのところへ来ました。イエスさまは彼らを癒しました。

15 The leading priests and the teachers of religious law saw these wonderful miracles and heard even the children in the Temple shouting, “Praise God for the Son of David.” But the leaders were indignant.

15 祭司長たちや律法学者たちは、これらの驚くべき奇跡を目にし、寺院の中で子どもたちまでもが「ダビデの子について神さまを褒め称えよ。」と叫ぶのを耳にしました。しかし指導者たちは憤慨しました。

16 They asked Jesus, “Do you hear what these children are saying?”  “Yes,” Jesus replied. “Haven’t you ever read the Scriptures? For they say, ‘You have taught children and infants to give you praise.’ ”

16 指導者たちはイエスさまにたずねました。「あなたには子どもたちが言っていることが聞こえていますか。」 イエスさまは答えました。「はい。あなた方は聖書を読んだことがないのですか。なぜならそこには『あなたは子供と幼児にあなたを褒め称えるように教えました。』と書いてあります。」

17 Then he returned to Bethany, where he stayed overnight.

17 それからイエスさまはベタニヤに戻り、そこに泊まりました。




ミニミニ解説

イエスさまの一行はついにエルサレムへ到着しました。今回のシーンは前回の「勝利の入城(Triumphant Entry)」を経て、城壁に囲まれたエルサレムの町の中に入った後のシーンです。

今回と同じ部分の記述は「マルコ」「ルカ」「ヨハネ」の全福音書が伝えています。エルサレムに到着した直後のイエスさまの話は「勝利の入城」「寺院での出来事」「イチジクの木を呪う話」の三つで、今回はそのうちの「寺院での出来事」にあたりますが、マルコは「イチジクの木を呪う話」を二つに分けてその間に「寺院での出来事」を挟んでいるのに対し、マタイは先に「寺院での出来事」を伝えて、「イチジクの木を呪う話」はその後に置いています。結果として今回の「寺院での出来事」が起こった日付がマルコとマタイでは一日ずれています。マルコは「イチジクの木を呪う話」と「寺院での出来事」が起こったのは「勝利の入城」の翌日ですが、マタイでは「勝利の入城」の直後の同じ日に「寺院での出来事」が起こり、「イチジクの木を呪う話」は翌日になっています。

今回と同じ部分のマルコは、Mark 11:15-18(マルコの福音書第11章第15節~第18節)です。

「15 それから、彼らはエルサレムに着いた。イエスは宮に入り、宮の中で売り買いしている人々を追い出し始め、両替人の台や、鳩を売る者たちの腰掛けを倒し、16 また宮を通り抜けて器具を運ぶことをだれにもお許しにならなかった。17 そして、彼らに教えて言われた。「『わたしの家は、すべての民の祈りの家と呼ばれる』と書いてあるではありませんか。それなのに、あなたがたはそれを強盗の巣にしたのです。」 18 祭司長、律法学者たちは聞いて、どのようにしてイエスを殺そうかと相談した。イエスを恐れたからであった。なぜなら、群衆がみなイエスの教えに驚嘆していたからである。」([新改訳])。

ルカは非常に簡潔で、前回の続きのLuke 19:45-46(ルカの福音書第19章第45節~第46節)の二節です。

「45 宮に入られたイエスは、商売人たちを追い出し始め、46 こう言われた。「『わたしの家は、祈りの家でなければならない』と書いてある。それなのに、あなたがたはそれを強盗の巣にした。」([新改訳])。

「マタイ」・「ルカ」=「マルコ」+「Q資料」+「独自の資料」の公式にあてはめると、マタイはこの部分をマルコから採用していると思われます。

最後にヨハネを見てみます。John 2:13-22(ヨハネの福音書第2章第13節~第22節)です。

「13 ユダヤ人の過越の祭りが近づき、イエスはエルサレムに上られた。14 そして、宮の中に、牛や羊や鳩を売る者たちと両替人たちがすわっているのをご覧になり、15 細なわでむちを作って、羊も牛もみな、宮から追い出し、両替人の金を散らし、その台を倒し、16 また、鳩を売る者に言われた。「それをここから持って行け。わたしの父の家を商売の家としてはならない。」 17 弟子たちは、「あなたの家を思う熱心がわたしを食い尽くす」と書いてあるのを思い起こした。18 そこで、ユダヤ人たちが答えて言った。「あなたがこのようなことをするからには、どんなしるしを私たちに見せてくれるのですか。」 19 イエスは彼らに答えて言われた。「この神殿をこわしてみなさい。わたしは、三日でそれを建てよう。」 20 そこで、ユダヤ人たちは言った。「この神殿は建てるのに四十六年かかりました。あなたはそれを、三日で建てるのですか。」 21 しかし、イエスはご自分のからだの神殿のことを言われたのである。22 それで、イエスが死人の中からよみがえられたとき、弟子たちは、イエスがこのように言われたことを思い起こして、聖書とイエスが言われたことばとを信じた。」([新改訳])。

引用箇所の後半部分は異なる資料部分との組み合わせになっていますが、前半の同じ部分はマルコ、マタイとは雰囲気が違い、臨場感があります。

イエスさまの一行は城壁に囲まれたエルサレムの町に到着すると、門を通って城塞の内側へ入り、市内の北東部にある寺院へ入りました。

当時のエルサレムの寺院は建築マニアのヘロデ大王が再建した豪壮で巨大な寺院です。寺院の内部は何層かのエリアに仕切られていて、内側へ進むほどに聖域へと近づくのですが、その一番外側の層が「異邦人の庭(Court of the gentiles)」と呼ばれる広い場所になっていました。ここは本来はその名の示すとおりに異邦人(=ユダヤ人以外の外国人)が寺院の中で神さまを褒め称えたり、祈りを捧げるために用意された場所なのですが、イエスさまの時代にはここに多数の商人が入り込んで商売をしていたのです。


下の絵は、上が当時のエルサレム全体の見取り図で、右上(北東)にあるのが寺院です。下の左は寺院だけを下側(南側)から見た見取り図、右は寺院を上側(北側)から見た見取り図です。寺院の中の回廊に囲まれた広いところが異邦人の庭です。

overlook

Temple


ちょうどこの時期は「過越(すぎこし)の祭り」という年に一度の祭事の季節で、こうしたエルサレムで行われる年中行事の祭りには、イスラエル全土はもちろん、周辺諸国からも多数のユダヤ人がエルサレムを訪れます。訪れたユダヤ人たちは律法の定めに従って、寺院にいけにえの動物を納めたいのですが、遠方から動物を連れて旅をしてくるのは大変ですから、動物はエルサレムに着いてから商人から買い求めるのです。かつてはいけにえの動物を連れて旅をしていたのですが、便利な世の中になった、ということです。

ところが上京するユダヤ人たちを相手にする動物商人は、寺院の異邦人の庭に入り込んで商売をしていたのです。また動物商人に払うお金や、やはり律法で定められた寺院税を払うお金は、寺院専用の通貨に両替しなければならず、このための両替商もいました。これらの商人にとってエルサレムで開かれる祭りは稼ぎ時でしたから、きっと祭りの時期になると両替の料率が跳ね上がり、いけにえの動物の価格も上がったことでしょう(いわゆる「お祭り価格」です)。

イエスさまは異邦人の庭で、これらの商人たちのテーブルをひっくり返して追い出していきます。ヨハネの第15節~第16節にはその様子が次のように書かれていました。「15 細なわでむちを作って、羊も牛もみな、宮から追い出し、両替人の金を散らし、その台を倒し、16 また、鳩を売る者に言われた。「それをここから持って行け。わたしの父の家を商売の家としてはならない。」」([新改訳])。

祭りでにぎわう寺院の広場で、むちを振り回しながら商人を追い散らしていく男。これがイエスさまです。尋常ではありません。柔和で優しいイエスさまを頭の中に思い浮かべて福音書を読んでいる人たちにはかなりショッキングな場面です。イエスさまはこれらの商人たちを見て第13節で、「「聖書には『私の寺院は祈りの家と呼ばれる。』と宣言しています。しかしあなた方はそれを泥棒の巣にしてしまいました。」と批判します。ここの聖書の引用箇所は、Isaiah 56:7(イザヤ書第56章第7節)と思われます。「わたしは彼らを、わたしの聖なる山に連れて行き、わたしの祈りの家で彼らを楽しませる。彼らの全焼のいけにえやその他のいけにえは、わたしの祭壇の上で受け入れられる。わたしの家は、すべての民の祈りの家と呼ばれるからだ。」([新改訳])。

異邦人の庭で行われるべき祈りや神さまの賛美は行われておらず、そこは「律法に沿っていけにえを備えるため」という名目で、実のところは商売人たちの悪辣な稼ぎの場となっていたからです。イエスさまは見せかけだけで神さまへの心のない人たちが、神さまへの祈りを妨げていることに対して心の底から怒っているのです。

マルコにはイエスさまがこれらの商人を追い出したことを知って祭司長や律法学者たちがイエスさまの殺害を企てたと書いてありますから、売上の一部や、寺院内で商売をするための所場代等ががこれらの指導者たちの懐へ入っていたのかも知れません。イエスさまはそこまでもを含めて「泥棒の巣」と言ったのかも知れません。

マタイがマルコと異なるのはイエスさまが寺院の中で目や足の不自由な人たちを癒していること、また子供たちがイエスさまについて神さまを褒め称える叫びをあげていることの記述です。

第17節、イエスさまはベタニヤまで戻り、そこに宿泊します。エルサレムからベタニヤへに至る道はオリーブ山を巻くようにして東へ延びています。エルサレムからベタニヤまでは2~3キロの距離です。ベタニヤには複数の福音書に登場するマルタとマリヤの姉妹の家があり、イエスさまの一行はこの家に滞在していたと思われます。






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