マタイの福音書第16章第5節~第12節:ファリサイ派とサドカイ派のパン種マタイの福音書:第16章

2015年12月16日

マタイの福音書第16章第1節~第4節:指導者たちが奇跡のしるしを求める

第16章




(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


Leaders Demand a Miraculous Sign

指導者たちが奇跡のしるしを求める


1 One day the Pharisees and Sadducees came to test Jesus, demanding that he show them a miraculous sign from heaven to prove his authority.

1 ある日、ファリサイ派とサドカイ派の人たちがイエスさまをためしに来て、イエスさまの権威を証明するために、彼らに天からの奇跡のしるしを見せろと要求しました。

2 He replied, “You know the saying, ‘Red sky at night means fair weather tomorrow;

2 イエスさまは答えました。「あなた方は言い習わしを知っていますね。『夕に空が赤いのは、翌日は晴れるという意味、

3 red sky in the morning means foul weather all day.’ You know how to interpret the weather signs in the sky, but you don’t know how to interpret the signs of the times!

3 朝に空が赤いのは、一日中悪天候の意味。』 あなた方は天候のしるしを読み解く方法を知っていますが、時代のしるしの解釈の仕方を知りません。

4 Only an evil, adulterous generation would demand a miraculous sign, but the only sign I will give them is the sign of the prophet Jonah.” Then Jesus left them and went away.

4 邪悪で姦淫の時代の人々だけが奇跡のしるしを求めるのです。私がその人たちに与えられるしるしは、預言者ヨナのしるしだけです。」 イエスさまは彼らを残して去って行きました。




ミニミニ解説

マタイの福音書第16章です。イエスさまは第15章で一度ガリラヤ地方を離れて北のレバノンのあたりを旅してガリラヤ地方へ戻ってきました。

今回と同じ記述は「マルコ」に見られます。マルコのMark 8:11-8:12(マルコの福音書第8章第11節~第12節)、今回も前回の続きです。「11 パリサイ人たちがやって来て、イエスさまに議論をしかけ、天からのしるしを求めた。イエスさまをためそうとしたのである。12 イエスさまは、心の中で深く嘆息して、こう言われた。「なぜ、今の時代はしるしを求めるのか。まことに、あなた方に告げます。今の時代には、しるしは絶対に与えられません。」([新改訳])。

実はマルコのここの部分は一度、引用しています。マタイの第12章でした。やはり[新改訳]でその部分を読んでみます。Matthew 12:38-42(マタイの福音書第12章第38節~第42節)です。「38 そのとき、律法学者、パリサイ人たちのうちのある者がイエスに答えて言った。「先生。私たちは、あなたからしるしを見せていただきたいのです。」 39 しかし、イエスは答えて言われた。「悪い、姦淫の時代はしるしを求めています。だが預言者ヨナのしるしのほかには、しるしは与えられません。40 ヨナは三日三晩大魚の腹の中にいましたが、同様に、人の子も三日三晩、地の中にいるからです。41 ニネベの人々が、さばきのときに、今の時代の人々とともに立って、この人々を罪に定めます。なぜなら、ニネベの人々はヨナの説教で悔い改めたからです。しかし、見なさい。ここにヨナよりもまさった者がいるのです。42 南の女王が、さばきのときに、今の時代の人々とともに立って、この人々を罪に定めます。なぜなら、彼女はソロモンの知恵を聞くために地の果てから来たからです。しかし、見なさい。ここにソロモンよりもまさった者がいるのです。」([新改訳])。

同じ記述はルカの中にもありました。Luke 11:29-32(ルカの福音書第11章第29節~第32節)です。「29 さて、群衆の数がふえてくると、イエスは話し始められた。「この時代は悪い時代です。しるしを求めているが、ヨナのしるしのほかには、しるしは与えられません。30 というのは、ヨナがニネベの人々のために、しるしとなったように、人の子がこの時代のために、しるしとなるからです。31 南の女王が、さばきのときに、この時代の人々とともに立って、彼らを罪に定めます。なぜなら、彼女はソロモンの知恵を聞くために地の果てから来たからです。しかし、見なさい。ここにソロモンよりもまさった者がいるのです。32 ニネベの人々が、さばきのときに、この時代の人々とともに立って、この人々を罪に定めます。なぜなら、ニネベの人々はヨナの説教で悔い改めたからです。しかし、見なさい。ここにヨナよりもまさった者がいるのです。」([新改訳])。

「マタイ」・「ルカ」=「マルコ」+「Q資料」+「独自の資料」の公式にあてはめると、ファリサイ派が奇跡をしるしを求めた部分が「マルコ」から、そのほかの部分がイエスさまの語録集である「Q資料」からの採用で、マタイは両者を組み合わせているのだろうと推察できます。「マルコ」では単純に「今の時代には、しるしは絶対に与えられません」とされていた部分が、イエスさまの語録集である「Q資料」と組み合わされると「預言者ヨナのしるしのほかには、しるしは与えられません」となっています。その後に続く「預言者ヨナのしるしのほかにしるしは与えられない」の意味を解説した形の「人の子(=イエスさま)がこの時代のためにしるしとなる」の部分と、ヨナの呼びかけで悔い改めたニネベの人たちの話と、さらに遠方から知恵を求めてわざわざソロモンを訪れたシバの女王の話は、やはり「Q資料」からと考えられます。

第12章でも書きましたが、再度、「預言者ヨナのしるし」の意味を書いておきます。

予言者ヨナは旧約聖書の「ヨナ書」に登場します。ある日ヨナは神さまから「ニネベに行け」と命じられるのです。ニネベは紀元前7世紀くらいまでいまのイラクのあたりにあったアッシリア帝国の首都でした。アッシリア最盛期のニネベは巨大な城塞都市でした。ヨナ書には「行き巡るのに三日かかるほどの非常に大きな町」と書かれていますが、この周囲を巨大な城壁でぐるりと囲んでいました(城壁の上を馬車二台がすれ違うことのできる舗装路があったらしいです)。紀元前632年にメディア、バビロニア、スキタイなどの周辺国からの攻撃を受けて陥落し、その後は失われてしまいました。ヨナ書はニネベが帝都として栄えていた頃の話です。アッシリアはユダヤ人から見れば異邦人の国で、国民は異国の邪神を拝んでいます。ニネベの状況があまりにも邪悪で、その様子が神さまの耳に届いたので、行って警告しろ、とヨナに言うのです。

ところがヨナは神さまの命令を拒んで神さまから逃げます(逃げた理由は物語の最後に明かされますからぜひご自身で読んでみてください)。ヨナは船に乗ってどんどん逃げますが、神さまは嵐を起こして船を襲わせます。ヨナは嵐の理由が自分にあると知っていたので、水夫に自分を海になげ込むように言います。水夫はヨナを助けようとして、ヨナの提案を一度は退けるのですが、嵐がますます強まったのでやむなくヨナを海に投げ込みます。すると海は突然静かになります。

ひとり海に沈んでいくヨナのところへ、神さまは一匹の大魚を差し向けます。ヨナはその魚に飲み込まれて、三日三晩、魚の腹の中で過ごすのです。ヨナが神さまへの裏切りを悔いて魚の腹の中からお祈りをすると、神さまはヨナを魚の腹の中から解放します。ヨナはそれから命じられたとおりにニネベに行って、神さまの警告を伝えながら町の中を歩きます。するとニネベの人たちはヨナの言葉を信じて、行いを改めて謙虚に神さまに許しを乞います。神さまはその様子を見て、そのときはニネベを滅ぼすことを思いとどまりました。

イエスさまが語った、邪悪な世代に与えられる唯一のしるしである「ヨナのしるし」とはイエスさまの十字架刑のことなのです。マタイの第12章40節で、イエスさまは「ヨナは三日三晩大魚の腹の中にいましたが、同様に、人の子も三日三晩、地の中にいるからです」と言っています。これはイエスさまが十字架死の後で墓に葬られ、復活までの間、三日と三晩の地中にいたことを指しています。

第12章でも書きましたが、ここの部分を読んでイエスさまはガリラヤ地方にいた段階で、すでに自分の十字架と復活を予告していたのだ、と取ることもできますが、ルカもマタイもイエスさまの十字架死~復活を経て、何十年か経った後に成立した本ですし、材料として使われた「Q資料」もイエスさまの福音を伝える教会の間で流布されていた文書のひとつとされていますから、これはイエスさまの復活を旧約聖書のエピソードに結びつけて語られていた、預言の成就か、あるいは過去に示されていた「型」のひとつとして受け止めれば良いと思います。







english1982 at 22:00│マタイの福音書 
マタイの福音書第16章第5節~第12節:ファリサイ派とサドカイ派のパン種マタイの福音書:第16章