マタイの福音書第14章第13節~第21節:イエスさまが五千人に食べさせるマタイの福音書:第14章

2015年12月18日

マタイの福音書第14章第1節~第12節:洗礼者ヨハネの死

第14章




(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


The Death of John the Baptist

洗礼者ヨハネの死


1 When Herod Antipas, the ruler of Galilee, heard about Jesus,

1 ガリラヤ地方の支配者ヘロデ・アンティパスは、イエスさまのうわさを聞くと、

2 he said to his advisers, “This must be John the Baptist raised from the dead! That is why he can do such miracles.”

2 知恵者たちに言いました。「これは洗礼者ヨハネが死人の中からよみがえったのに違いない。だから彼はあんな奇跡を行えるのだ。」

3 For Herod had arrested and imprisoned John as a favor to his wife Herodias (the former wife of Herod’s brother Philip).

3 と言うのは、ヘロデはヘロデヤ(ヘロデの兄弟ピリポの前妻)の利益となるようにヨハネを逮捕して牢に入れたたのです。

4 John had been telling Herod, “It is against God’s law for you to marry her.”

4 ヨハネはヘロデに「あなたが彼女と結婚するのは神さまの法律に反します」と言い続けていました。

5 Herod wanted to kill John, but he was afraid of a riot, because all the people believed John was a prophet.

5 ヘロデはヨハネを殺したかったのですが暴動を恐れました。と言うのは、すべての人々がヨハネは預言者であると信じていたからです。

6 But at a birthday party for Herod, Herodias’s daughter performed a dance that greatly pleased him,

6 しかしヘロデの誕生祝いに、ヘロデヤの娘が踊りを踊って見せて、ヘロデを大いに喜ばせました。

7 so he promised with a vow to give her anything she wanted.

7 それでヘロデは、娘が願う物は何でも必ずあげると誓いを立てて約束しました。

8 At her mother’s urging, the girl said, “I want the head of John the Baptist on a tray!”

8 母親がしきりに促すと、娘は言いました。「私は洗礼者ヨハネの首を盆に載せたものがいただきとうございます。」

9 Then the king regretted what he had said; but because of the vow he had made in front of his guests, he issued the necessary orders.

9 王は自分の言ったことを後悔しましたが、自分の賓客の前で誓いを立てていたので、必要な命令を出しました。

10 So John was beheaded in the prison,

10 それでヨハネは牢の中で首をはねられました。

11 and his head was brought on a tray and given to the girl, who took it to her mother.

11 ヨハネの首は盆に載せて運ばれ来て、娘に与えられました。娘はそれを母親のところに持って行きました。

12 Later, John’s disciples came for his body and buried it. Then they went and told Jesus what had happened.

12 後にヨハネの弟子たちが死体を引き取りに来て葬りました。それから弟子たちは行って、イエスさまに起こったことを話しました。




ミニミニ解説

マタイの福音書の第14章です。第14章にはイエスさまの行った奇跡の話が書かれています。

今回と同じ記述は、マルコに見られます。Mark 6:14-30(マルコの福音書第6章第14節~第30節)です。「14 イエスの名が知れ渡ったので、ヘロデ王の耳にも入った。人々は、「バプテスマのヨハネが死人の中からよみがえったのだ。だから、あんな力が、彼のうちに働いているのだ」と言っていた。15 別の人々は、「彼はエリヤだ」と言い、さらに別の人々は、「昔の預言者の中のひとりのような預言者だ」と言っていた。16 しかし、ヘロデはうわさを聞いて、「私が首をはねたあのヨハネが生き返ったのだ」と言っていた。17 実は、このヘロデが、自分の兄弟ピリポの妻ヘロデヤのことで、-- ヘロデはこの女を妻としていた -- 人をやってヨハネを捕らえ、牢につないだのであった。18 これは、ヨハネがヘロデに、「あなたが兄弟の妻を自分のものとしていることは不法です」と言い張ったからである。19 ところが、ヘロデヤはヨハネを恨み、彼を殺したいと思いながら、果たせないでいた。20 それはヘロデが、ヨハネを正しい聖なる人と知って、彼を恐れ、保護を加えていたからである。また、ヘロデはヨハネの教えを聞くとき、非常に当惑しながらも、喜んで耳を傾けていた。21 ところが、良い機会が訪れた。ヘロデがその誕生日に、重臣や、千人隊長や、ガリラヤのおもだった人などを招いて、祝宴を設けたとき、22 ヘロデヤの娘が入って来て、踊りを踊ったので、ヘロデも列席の人々も喜んだ。そこで王は、この少女に、「何でもほしい物を言いなさい。与えよう」と言った。23 また、「おまえの望む物なら、私の国の半分でも、与えよう」と言って、誓った。24 そこで少女は出て行って、「何を願いましょうか」とその母親に言った。すると母親は、「バプテスマのヨハネの首」と言った。25 そこで少女はすぐに、大急ぎで王の前に行き、こう言って頼んだ。「今すぐに、バプテスマのヨハネの首を盆に載せていただきとうございます。」 26 王は非常に心を痛めたが、自分の誓いもあり、列席の人々の手前もあって、少女の願いを退けることを好まなかった。27 そこで王は、すぐに護衛兵をやって、ヨハネの首を持って来るように命令した。護衛兵は行って、牢の中でヨハネの首をはね、28 その首を盆に載せて持って来て、少女に渡した。少女は、それを母親に渡した。29 ヨハネの弟子たちは、このことを聞いたので、やって来て、遺体を引き取り、墓に納めたのであった。30 さて、使徒たちは、イエスのもとに集まって来て、自分たちのしたこと、教えたことを残らずイエスに報告した。」([新改訳])。「マタイ」・「ルカ」=「マルコ」+「Q資料」+「独自の資料」の公式にあてはめると、この部分は記述がほぼ同じ「マルコ」からの採用です。マタイはマルコの記述を簡略化しているようです。

ここには洗礼者ヨハネの死の顛末が書かれています。イエスさまの時代にガリラヤを支配していたヘロデ王はヘロデ・アンティパスと言って、エルサレムの寺院を壮大に大改築したヘロデ大王の息子です。ヘロデ大王は建築マニアでした。ヘロデ大王の死後、領地は三人の息子に分割されて、そのうちのひとり、ヘロデ・アンティパスはガリラヤとペレヤ(ヨルダン川の東側)を引き継ぎました。残りの二人の兄弟はヘロデ・アルケラオスとヘロデ・フィリッポスです。

これを読むとヘロデ・アンティパスは、兄のフィリッポスの妻だったヘロディアを自分の妻にしたとわかります。これは旧約聖書の律法に照らせば姦淫の罪にあたります。たとえばLeviticus 18:16(レビ記第18章第16節)には「あなたの兄弟の妻を犯してはならない。それはあなたの兄弟をはずかしめることである。」([新改訳])と書いてあります。

当時、荒野で「悔い改めよ。神さまに向き直れ」と警告のメッセージを発して民衆を集めていた洗礼者ヨハネは、ヘロデ・アンティパスがヘロディアと結婚したことを非難したのです。相手が王であろうと領地の支配者であろうと、神さまの意志に反することであれば遠慮なく非難するのは、旧約聖書に登場する預言者たちの姿勢とまったく同じです。

ヘロディアという女性については詳しく書かれていませんので私個人の憶測になりますが、おそらく世の中の流れを見て、フィリッポスの妻でいるよりも、アンティパスの妻となった方が良いだろうと判断して、狡猾に夫を乗り換えたのでしょう。この乗り換え婚をヨハネから激しく非難されたので、きっとヘロディアがアンティパスに命じてヨハネを逮捕させたのだと思います。なにしろヨハネは民衆の支持を広く集めていましたから、ヘロディアにはヨハネが邪魔で仕方なかったのです。

きっとヘロディアはヨハネを殺してしまえとアンティパスに言ったのです。しかしアンティパスはヨハネを捕らえて投獄するまではしましたが、殺せないままでいました。マルコには「それはヘロデが、ヨハネを正しい聖なる人と知って、彼を恐れ、保護を加えていたからである。また、ヘロデはヨハネの教えを聞くとき、非常に当惑しながらも、喜んで耳を傾けていた」と書かれていますが、きっとアンティパスは民意が怖かったのです。もしヨハネを殺したことを発端に領土内で暴動が起これば、鎮圧のためにローマ帝国軍が押し寄せて来ることでしょう。アンティパスは統治能力の欠如を指摘されて、ヘロデ大王から受け継いだ領土を全部取り上げられて追放されてしまいます。

ヘロディアも、アンティパスからそのように言われて、一度はヨハネの殺害をあきらめた風を装いましたが、いつかヨハネを殺してやろうとチャンスを狙っていたのです。恐ろしいことです。アンティパスの誕生日に宴会の席上で、自分の娘にヘロデの気に入りそうな踊りを舞わせます(いったいどんな踊りでしょうか)。そしてそれをいたく気に入ったヘロデから「願う物なら何でもあげる」という約束を取り付けさせます。これもヘロディアの策略通りというところでしょうか。あらかじめそういう展開に持って行くようにヘロデをそそのかしておいたのかも知れません。ところが娘の口から出てきた所望の品は、ヘロデの予想に反して、あろうことかヨハネの首なのでした。ヘロデが願いを拒否できないようなシチュエーションをまんまと作り上げたのです。何から何までヘロディアの計画通りにやられちゃっている感じです。獄中ではねられたヨハネの首は、盆に載せられて誕生日の祝宴の席へ届けられます。それを笑顔で迎えるヘロディア。何というおぞましい光景でしょうか。

洗礼者ヨハネの弟子たちはヨハネの死体を引き取って埋葬すると、イエスさまに事の次第を報告に行きました。「マルコ」ではヨハネの死がイエスさまの伝道活動を次のステージへ進めるきっかけのように書かれていて、マタイでもその流れが踏襲されています。

さてヘロデはガリラヤの領土内で民衆の支持を集めているというイエスさまの噂を聞いて、自分が処刑させた洗礼者ヨハネがよみがえったのではないか、と思います。死んだはずのヨハネがよみがえってきて怖い、と言うようなオカルトホラー的な話と言うよりも、領土内に新たな民衆の暴動の種が生まれ、やがて自分の地位を危うくするかも知れない、ととらえていたのかも知れません。







english1982 at 22:00│マタイの福音書 
マタイの福音書第14章第13節~第21節:イエスさまが五千人に食べさせるマタイの福音書:第14章