マタイの福音書第4章第18節~第22節:最初の弟子たちマタイの福音書第4章第1節~第11節:イエスさまの誘惑

2015年12月28日

マタイの福音書第4章第12節~第17節:イエスさまの活動が始まる

第4章



(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


The Ministry of Jesus Begins

イエスさまの活動が始まる


12 When Jesus heard that John had been arrested, he left Judea and returned to Galilee.

12 イエスさまがヨハネが逮捕されたことを耳にすると、イエスさまはユダヤを離れてガリラヤへ戻りました。

13 He went first to Nazareth, then left there and moved to Capernaum, beside the Sea of Galilee, in the region of Zebulun and Naphtali.

13 イエスさまは最初にナザレへ行き、それからナザレを去って、ゼブルンとナフタリの地方でガリラヤ湖のほとりにあるカペナウムへ移動しました。

14 This fulfilled what God said through the prophet Isaiah:

14 これで神さまが預言者イザヤを通して言われた事柄が成就しました。

15 “In the land of Zebulun and of Naphtali, beside the sea, beyond the Jordan River, in Galilee where so many Gentiles live,

15 「ゼブルンとナフタリの地、湖のほとり、ヨルダン側の向こう側、たくさんの異邦人が住むガリラヤで、

16 the people who sat in darkness have seen a great light.   And for those who lived in the land where death casts its shadow, a light has shined.”

16 暗やみの中に座っていた人々が大きな光を見た。死が陰を落とす地に住んでいた人々に光が輝いた。」

17 From then on Jesus began to preach, “Repent of your sins and turn to God, for the Kingdom of Heaven is near.”

17 この時からイエスさまは説き始めました。「あなたの罪を悔いなさい。そして神さまに向き直りなさい。なぜなら天の王国が近いからです。」




ミニミニ解説

洗礼者ヨハネの逮捕をきっかけに、イエスさまはパレスチナ南部のユダヤ地方を離れ、自分が育った北部のガリラヤ地方へ戻ります。「マタイ」にはユダヤ地方でのイエスさまの活動は、ヨハネによる洗礼と荒野での悪魔による誘惑の話しか書かれていませんが、イエスさまは本格的な伝道活動に入る前に、しばらくユダヤ地方で洗礼者ヨハネの近くで過ごしていたのかも知れません。

この頃、ヨハネの説教を聞くためにたくさんの人が荒野へ集結していました。ローマ帝国支配下の属国で、ひとりの指導者のまわりにたくさんの人々が集結するのはいかにも不穏です。暴動を起こして独立を勝ち取ろうと画策しているのではないかと疑われても不思議はありません。ヨハネを逮捕したのはヘロデ大王の四人の息子の一人で、ガリラヤとペレアを支配していたヘロデ・アンティパスです。ヘロデ・アンティパスは恐らく洗礼者ヨハネ本人と、ヨハネがもたらす評判を危険視して、ことが大きくなる前に逮捕したのでしょう。ヨハネは死海湖畔のマケラスの要塞に閉じこめられます。イエスさまはこれを見ると、無用な衝突を避けるために活動拠点をガリラヤ地方に求めたのだろうと思います。

イエスさまはユダヤ地方を後にすると、まず生まれ故郷のナザレに戻り、そこからガリラヤ湖畔のカペナウムへ移りました。南北に長いイスラエルは南のエルサレムから北のガリラヤ湖までは直線距離で100kmくらいです。ナザレはガリラヤ湖の北西15kmくらい、ちょうどガリラヤ湖と地中海の間くらいのところにあります。カペナウムはガリラヤ湖の北岸の町で、イエスさまがガリラヤ地方で行った伝道活動の拠点となる町です。

「マタイ」の著者はこれを預言の成就としています。引用箇所はIsaiah 9:1-1(イザヤ書第9章第1節~第2節)です。「1 しかし、苦しみのあった所に、やみがなくなる。先にはゼブルンの地とナフタリの地は、はずかしめを受けたが、後には海沿いの道、ヨルダン川のかなた、異邦人のガリラヤは光栄を受けた。2 やみの中を歩んでいた民は、大きな光を見た。死の陰の地に住んでいた者たちの上に光が照った」([新改訳])。「ゼブルン」と「ナフタリ」はユダヤの十二部族の名前です。十二部族はパレスチナに定着したときに、それぞれ部族ごとに土地を割り振られたのですが、この二つの部族はガリラヤ地方の土地を与えられたのでした。ガリラヤ地方が受けた「はずかしめ」とは北朝イスラエルがアッシリアに征服されて滅ぼされたことだろうと思います。アッシリアの支配下に入ったガリラヤは「異邦人のガリラヤ」となったのです。そのような暗い歴史を背負うガリラヤの地なのですが、イザヤはやがてガリラヤの人々は「大きな光」を目にする、と預言しています。「マタイ」はガリラヤ地方に住んでいた人たちを照らした「光」が、すなわちガリラヤ地方で伝道活動を開始したイエスさまだと言うのです。

アッシリアが北朝のイスラエルを滅ぼしてからしばらくして、南朝のユダヤもバビロニアに滅ぼされ、このときにエルサレムの寺院も破壊されます。紀元前586年のことです。ユダヤから連れ去られた人々の一部は、その70年後にエルサレムに戻って寺院を再建し(紀元前516年)、それ以降、エルサレム周辺に再びユダヤ人は定着し始めますが、北部のガリラヤ地方が再びユダヤ人の土地になるのは紀元前100年頃です。つまり、イエスさまの時代のほんの100年前まで、北部のガリラヤ地方は異邦人の土地だったのです。 ユダヤに住む保守派のユダヤ人から見れば、ガリラヤはつい最近まで汚れた異邦人に支配されていた辺境の土地です。とても正当なユダヤ人の地と認められるような場所ではありません。そのような「死が陰を落とす地」で、イエスさまは福音の伝道を伝え始めたのです。

イエスさまが伝えた教えは洗礼者ヨハネが説いたのと同じメッセージです。「あなたの罪を悔いなさい。そして神さまに向き直りなさい」。そしてこれに付け加えて、イエスさまは「なぜなら天の王国が近いからです」とその理由を付け加えました。この「天の王国が近い」の意味するところは果たして何なのか、イエスさまが伝えようとした「天の王国」の意図と、これを聞いた人々のとらえ方は異なっていたのです。

この部分の「マルコ」の記述は、「ヨハネが捕らえられて後、イエスはガリラヤに行き、神の福音を宣べて言われた。『時が満ち、神の国は近くなった。悔い改めて福音を信じなさい』」だけです([新改訳])。ゼブルンとナフタリに関する預言の実現の記述は「ルカ」には見つかりませんから、ここは「マタイ」の著者が挿入したオリジナルの部分です。








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