マルコの福音書第16章第9節~第20節:マルコの福音書の短いエンディング、マルコの福音書の長いエンディングマルコの福音書:第16章

2015年11月15日

マルコの福音書第16章第1節~第8節:復活

第16章



(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


The Resurrection

復活


1 Saturday evening, when the Sabbath ended, Mary Magdalene, Mary the mother of James, and Salome went out and purchased burial spices so they could anoint Jesus’ body.

1 土曜日の夜、安息日が終わると、マグダラのマリヤとヤコブの母マリヤとサロメとは出かけて行き、イエスさまの死体に塗るための埋葬用の香料を買いました。

2 Very early on Sunday morning, just at sunrise, they went to the tomb.

2 日曜日の朝のとても早い時間、ちょうど日の出の時刻に女性たちは墓へ行きました。

3 On the way they were asking each other, “Who will roll away the stone for us from the entrance to the tomb?”

3 その途中で女性たちはお互いに話していました。「墓の入口のあの岩を誰が私たちのために転がしてどかしてくれるでしょうか。」

4 But as they arrived, they looked up and saw that the stone, which was very large, had already been rolled aside.

4 ところが女性たちが到着して顔を上げて見ると、とても大きな岩だったはずなのに、すでに横へ転がしてありました。

5 When they entered the tomb, they saw a young man clothed in a white robe sitting on the right side. The women were shocked,

5 女性たちが墓に入ると、白く緩やかな外衣をまとった若い男が右手に座っているのが見えました。女性たちは驚きました。

6 but the angel said, “Don’t be alarmed. You are looking for Jesus of Nazareth, who was crucified. He isn’t here! He is risen from the dead! Look, this is where they laid his body.

6 ところが天使は言いました。「怖がってはいけません。あなた方は十字架に掛けられたナザレのイエスさまを捜しています。イエスさまはここにはいません。イエスさまは死者の中からよみがえったのです。見なさい。ここがイエスさまの死体があった場所です。

7 Now go and tell his disciples, including Peter, that Jesus is going ahead of you to Galilee. You will see him there, just as he told you before he died.”

7 さぁ、行ってペテロと他の弟子たちに、イエスさまはあなた方に先立ってガリラヤへ行くと伝えなさい。イエスさまが死ぬ前にあなた方に伝えたように、あなた方はそこでイエスさまに会うのです。」

8 The women fled from the tomb, trembling and bewildered, and they said nothing to anyone because they were too frightened.

8 女性たちは震えて驚いて墓から逃げ去りました。そして女性たちはあまりに恐ろしかったので誰にも何も言わなかったのです。




ミニミニ解説

第1節に「土曜日の夜、安息日が終わると」とありますが、これは前回も説明したようにユダヤ人にとって一日の始まりは「日没」でしたので、土曜日の日が暮れるとそのときからが翌日の日曜日と言うことになります。日没で安息日が終わり、律法が労働を禁じる時間が過ぎ去ると、女性たちは外出をして、死体に塗るための埋葬用の香料を買い求めます。女性たちと言うのは「マグダラのマリヤ」「ヤコブの母のマリヤ」「サロメ」の三人です。この三人はイエスさまの十字架死を見ていたことが第15章第40節に書かれていました。また最初の二人は第15章第47節でイエスさまが埋葬される様子を見ていたことが書かれています。

イエスさまの埋葬は、国会議員のアリマタヤのヨセフによって日没前にあわただしく行われたのでした。ヨセフはユダヤの慣例に従い、白い布でイエスさまの死体をミイラのようにグルグル巻きにしてから岩を横に掘ってくりぬいた墓の中に横たえました。通常この作業の際にはこの白い布に防腐と消臭のための香料をたっぷりと含ませます。また横たえられた死体の近くにも会葬者が香料を置くようですので、女性たちはイエスさまの死体にさらに香料を塗り込んだり、死体の近くに香料を置きたかったのかも知れません。

第2節、翌朝になると女性たちは香料を持って墓に向かいます。日の出の時刻です。その途中、第3節では女性たちが「墓の入口のあの岩を誰が私たちのために転がしてどかしてくれるでしょうか」と話し合います。岩を掘って作る墓は通常は緩やかな坂の下のあたりに作られていて、大人が数人がかりで円盤状の岩を転がしてきて入り口をふさぐのです。女性三人ではとてもこの岩を動かすことはできないでしょうから、墓まで行ってもどうやって墓の入り口を開くことができるだろうか、と困っているわけです。

ちなみに当時の風習では死体を墓に納めた三日後に再度墓を訪れる習慣があったようですので、女性たちの行動は不自然なものではありません。ただしイエスさまは反逆者として十字架に掛けられた人物で、そう言う人物は通常は一般の墓に納められることはありませんでしたから、他の人と同様と言うわけにはいきません。いつもなら岩をどかしてくれる人がいるはずなのに、今回に限ってはそのあてがないのです。

ところが第4節、女性たちが墓に到着してみると入り口を塞いでいた岩はすでに横にどかされていたのです。これは不思議なことです。一体誰が墓の入り口を開いたのでしょうか。女性たちも意外に感じたことでしょう。

第5節、女性たちは墓の中に入ります。通常墓として使う洞窟の中は大変狭く、死体を横たえる作業ができるような小さなスペースしかありません。イエスさまの墓には「女性たち」が入ったのですから、やや広めの墓だったのかも知れません。すると墓の中の右手に「白く緩やかな外衣をまとった若い男」が座っていたので、女性たちは驚きます。これは誰でも驚きます。明け方のまだあたりが薄暗いところで、さらに暗い墓の中に足を踏み入れると中に男が座っていたのです。いったいこの男は誰なのか、いつから座っていたのか、女性たちの頭の中はパニック状態でしょう。

第6節は「ところが天使は言いました」と始まっています。つまり白いローブを着て墓の中に座っていた男は天使だったのです。「天使(angel)」は私たちは背中に羽根をつけた幼い男の子イメージの絵に接することが多いですが、これは聖書の中に登場する天使とはイメージがまったく異なります。聖書の中の天使は様々な形をとります。今回のように男性であったり、あるいは四つとか六つの翼を持って宙を飛んでいたり、四つの顔を持っていたり、さらには炎だったり光だったり風だったりもするのです。

その天使が言います。「怖がってはいけません」。これは聖書の中では神さまや天使が、あるいは超常現象を伴って出現するイエスさまが、人に向かって最初に言う言葉です。人は神さまや天使に接すると恐怖するのです。怖くて怖くて仕方なくなります。それに対して神さまの側から最初にかけられる言葉が「恐れるな」です。

さらに天使は続けます。「あなた方は十字架に掛けられたナザレのイエスさまを捜して」いるのだろうが「イエスさまはここにはいません」、なぜなら「イエスさまは死者の中からよみがえったのです。見なさい。ここがイエスさまの死体があった場所です」。そう言われてイエスさまの死体が横たえられた場所を見ると、そこにはイエスさまの死体はなかったのでしょう。天使は続けます。「さぁ、行ってペテロと他の弟子たちに、イエスさまはあなた方に先立ってガリラヤへ行くと伝えなさい。イエスさまが死ぬ前にあなた方に伝えたように、あなた方はそこでイエスさまに会うのです」。

これはMark 14:27-28(マルコの福音書第14章第27節~第28節)でイエスさまが言った部分のことです。「27 イエスは、弟子たちに言われた。「あなたがたはみな、つまずきます。『わたしが羊飼いを打つ。すると、羊は散り散りになる』と書いてありますから。28 しかしわたしは、よみがえってから、あなたがたより先に、ガリラヤへ行きます。」([新改訳])。

イエスさまはエルサレムの東側にあるオリーブ山で逮捕されますが、そのときには弟子たちが散り散りになって逃げてしまいます。イエスさまはそのことをZechariah 13:7(ゼカリヤ書第13章第7節)を引用して「羊飼いを打つ」と「羊は散り散りになる」と予告したのでした。ですがすぐその後で、そのことについては何も心配する必要がないと伝えています。「しかしわたしは、よみがえってから、あなたがたより先に、ガリラヤへ行きます」。イエスさまは死者の中から復活して伝道活動が始まったガリラヤへ先に行って待っているから、そこで再び合流しよう、とたしかに言ったのです。これを聞いていた弟子たちがイエスさまの言葉の意味を理解していたはずもありませんが。

第8節、女性たちは素直に天使の言葉に従いませんでした。まずは「震えて驚いて墓から逃げ去りました。そして女性たちはあまりに恐ろしかったので誰にも何も言わなかったのです」。とにかく怖くて怖くてたまらなくて、墓から一目散に逃げ出して走っていき、三人でどこかの家に逃げ込むと、しばらくの間、そこでブルブル震えていたのでしょう。






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