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2015年11月25日

マルコの福音書第6章第14節~第29節:洗礼者ヨハネの死

第6章
  

(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


The Death of John the Baptist

洗礼者ヨハネの死


14 Herod Antipas, the king, soon heard about Jesus, because everyone was talking about him. Some were saying, “This must be John the Baptist raised from the dead. That is why he can do such miracles.”

14 ヘロデ・アンティパス王はすぐにイエスさまのことを耳にしました。誰もがイエスさまのことを話していたからです。中には「洗礼者ヨハネが死からよみがえったのだ。だから彼はあんな奇跡を行えるのだ。」と言う人もいました。

15 Others said, “He’s the prophet Elijah.” Still others said, “He’s a prophet like the other great prophets of the past.”

15 他には「彼は預言者エリヤだ。」と言う人や、さらに他には「彼は昔の偉大な預言者のような預言者なのだ。」と言う人もいました。

16 When Herod heard about Jesus, he said, “John, the man I beheaded, has come back from the dead.”

16 ヘロデはイエスさまの話を聞いて言いました。「私が首をはねたヨハネが死者の中から生き返ったのだ。」

17 For Herod had sent soldiers to arrest and imprison John as a favor to Herodias. She had been his brother Philip’s wife, but Herod had married her.

17 と言うのはヘロデはヘロデヤのために兵を送りヨハネを逮捕して牢に入れたのでした。ヘロデヤは自分の兄弟ピリポの妻でしたがヘロデは彼女と結婚しました。

18 John had been telling Herod, “It is against God’s law for you to marry your brother’s wife.”

18 ヨハネがヘロデに対して言い続けました。「自分の兄弟の妻と結婚することは神さまの律法に反しています。」

19 So Herodias bore a grudge against John and wanted to kill him. But without Herod’s approval she was powerless,

19 それでヘロデヤはヨハネに恨みを抱いて、ヨハネを殺したいと思っていました。ですがヘロデの許可がなければ彼女にはその力はありませんでした。

20 for Herod respected John; and knowing that he was a good and holy man, he protected him. Herod was greatly disturbed whenever he talked with John, but even so, he liked to listen to him.

20 なぜならヘロデはヨハネを尊敬していたからです。ヨハネが正しい聖なる人と知っていたのでヨハネを守っていたのです。ヘロデはヨハネと話をするときにはいつも非常に気分を害しましたが、それでもヘロデはヨハネの話を聞くのが好きだったのです。

21 Herodias’s chance finally came on Herod’s birthday. He gave a party for his high government officials, army officers, and the leading citizens of Galilee.

21 ヘロデの誕生日に、とうとうヘロデヤにチャンスが訪れました。ヘロデは高官や軍隊の将軍やガリラヤの主な市民を招いてパーティを開きました。

22 Then his daughter, also named Herodias, came in and performed a dance that greatly pleased Herod and his guests. “Ask me for anything you like,” the king said to the girl, “and I will give it to you.”

22 そのときやはりヘロデヤという同じ名前の娘が入って来て踊りを踊って見せましたが、この踊りはヘロデと来賓を大変喜ばせました。王は娘に言いました。「どんなものでも好きなものを言いなさい。私がお前に与えよう。」

23 He even vowed, “I will give you whatever you ask, up to half my kingdom!”

23 ヘロデは誓いまで立てました。「私はお前の望む物なら、私の王国の半分までなら何でも与えよう。」

24 She went out and asked her mother, “What should I ask for?” Her mother told her, “Ask for the head of John the Baptist!”

24 娘は出て行って母親にたずねました。「何を願うべきでしょうか。」 母親は娘に言いました。「洗礼者ヨハネの首を求めなさい。」

25 So the girl hurried back to the king and told him, “I want the head of John the Baptist, right now, on a tray!”

25 そこで娘は急いで王のところへ戻って言いました。「今すぐ、洗礼者ヨハネの首をお盆に載せていただきたいと思います。」

26 Then the king deeply regretted what he had said; but because of the vows he had made in front of his guests, he couldn’t refuse her.

26 王は自分の言ったことを深く後悔しましたが、自分の賓客の前で誓いを立てていたので、娘の願いを拒むことができませんでした。

27 So he immediately sent an executioner to the prison to cut off John’s head and bring it to him. The soldier beheaded John in the prison,

27 そこで王はすぐに死刑執行人を牢に送り、ヨハネの首を切り落として持って来るようにと命じました。兵は牢の中でヨハネの首をはねました。

28 brought his head on a tray, and gave it to the girl, who took it to her mother.

28 兵はヨハネの首をお盆に載せて持って来て娘に渡しました。娘はそれを母親へ持っていきました。

29 When John’s disciples heard what had happened, they came to get his body and buried it in a tomb.

29 ヨハネの弟子たちが起こったことを聞くと、やって来てヨハネの遺体を引き取り、墓に葬りました。




ミニミニ解説

第14節の「ヘロデ・アンティパス 王」(英文でHerod Antipas)は、ヘロデ大王(Herode the Great)の子供です。ヘロデ大王(Herode the Great)の子供です。ヘロデ大王はローマ帝国から任命されてパレスチナ地区の王をつとめました。在位は紀元前37~西暦4年です。つまりイエスさまが生まれたときにパレスチナを支配していたのはヘロデ大王ということになります。ヘロデ大王が西暦4年に没すると遺言に従って息子のアルケラオ、ヘロデ・アンティパス、フィリポスの三人の兄弟がパレスチナを分割して後を継ぎました。この三人はローマ帝国から「王」と名乗ることは許されなかったそうで、ヘロデ・アンティパスはガリラヤ地方とペレア地方を治めた「領主」です。

今回の話の中にあるようにヘロデ・アンティパスは自分の兄弟のピリポ(=フィリポス)の妻のヘロデヤと結婚するために、そのときの自分の妻を離縁しています。これはユダヤの律法では罪に当たります。旧約聖書のLeviticus 20:21(レビ記第20章第21節)には次のように書かれています。「人がもし、自分の兄弟の妻をめとるなら、それは忌まわしいことだ。彼はその兄弟をはずかしめた。彼らは子のない者となる。」([新改訳]) 。

洗礼者ヨハネはこのことでヘロデ・アンティパスを公然と批判したため、ヘロデに逮捕されて投獄されていたのでした。

「洗礼者ヨハネ」はイエスさまの弟子で十二使徒のひとりのヨハネとは別人です。洗礼者ヨハネは旧約聖書の預言に従って救世主イエスさまの先駆けとして世に現れ、荒野で「罪を悔い改めよ。神さまに向き直れ。」とのメッセージを説いて人を集め、イエスさまの前に道を整えていた人です。

恐らくヘロデヤはヘロデ・アンティパスの心を操って妻の座を手にしたのでしょう。ヘロデの嫁としてあれこれとやりたいことを画策しているのに、自分の結婚を公然と批判するヨハネは目の上のたんこぶの存在なのでした。ヘロデヤは恨みを抱いていつかヨハネを殺してやりたいと思っていましたが、自分自身には人を処刑する力はありませんでした。

一方のヘロデはヨハネを尊敬していたと書かれていて、その後の展開もヘロデに好意的に書かれますが、このあたりは福音書の流布にあたっての影響が考慮されたのではないかと考えられているようです。ヨハネの逮捕や投獄もヘロデヤの策略で、ヘロデはそのようにせざるを得ない状況に追い込まれたとされます。今回の話では調子に乗って賓客たちの前で大言を吐いて誓いを立てたために、自分の意志に反してヨハネを殺すことになってしまいました。そもそもヘロデ・アンティパスはローマ帝国下の領主の立場なので、帝国の許可がなければ「王国の半分」などという領土を他の人に渡すことなどできないはずです。ヘロデはまんまとヘロデヤの策略にはまり、洗礼者ヨハネは殺されてしまいました。

イエスさまの伝道活動の噂はヘロデ・アンティパスの耳にも届いたのでした。それを耳にしたヘロデは「私が首をはねたヨハネが死者の中から生き返ったのだ。」と思いました。イエスさまの伝道活動の噂、その権威ある言葉や奇跡のわざの話が洗礼者ヨハネを想起させたのでしょう。ヘロデはイエスさまに一度会ってみたいと思ったはずです。その願いはイエスさまの十字架刑の直前に実現します。

他にはイエスさまは預言者エリヤだと言う人がいたと書かれています。これは旧約聖書のMalachi 4:5(マラキ書第4章第5節)に「見よ。わたしは、主の大いなる恐ろしい日が来る前に、預言者エリヤをあなたがたに遣わす。」と書かれていることにもとづいています。預言者エリヤはイエスさまの時代を数百年も遡る昔に実在した預言者です。ですが、この主の大いなる恐ろしい日が来る前に再び現れると預言されたエリヤこそ、洗礼者ヨハネのことなのでした。






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