2015年11月30日

マルコの福音書第1章第21節~第28節:イエスさまが邪悪な霊を追い出す

第1章



(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


Jesus Casts Out an Evil Spirit

イエスさまが邪悪な霊を追い出す


21 Jesus and his companions went to the town of Capernaum. When the Sabbath day came, he went into the synagogue and began to teach.

21 イエスさまと一行はカペナウムの町に行きました。安息日が来るとイエスさまは会堂に入って行き教え始めました。

22 The people were amazed at his teaching, for he taught with real authority -- quite unlike the teachers of religious law.

22 人々はイエスさまの教えに驚きました。それはイエスさまが本当の権威を持って教えたからです。律法学者たちのやり方とはまったく異なっていました。

23 Suddenly, a man in the synagogue who was possessed by an evil spirit began shouting,

23 すると突然、その会堂にいた悪霊に取り憑かれた人が叫び始めました。

24 “Why are you interfering with us, Jesus of Nazareth? Have you come to destroy us? I know who you are -- the Holy One sent from God!”

24 「ナザレのイエスよ、なぜあなたは私たちのじゃまをするのか。あなたは私たちを滅ぼしに来たのか。私はあなたが誰なのか知っている。神から送られた聖なる者だ。」

25 Jesus cut him short. “Be quiet! Come out of the man,” he ordered.

25 イエスさまはその人をさえぎって命じました。「黙りなさい。この人から出て行きなさい。」

26 At that, the evil spirit screamed, threw the man into a convulsion, and then came out of him.

26 その言葉で悪霊は大声で叫び、その人にひきつけを起こさせました。そしてその人から出て行きました。

27 Amazement gripped the audience, and they began to discuss what had happened. “What sort of new teaching is this?” they asked excitedly. “It has such authority! Even evil spirits obey his orders!”

27 聞いていた人々は驚きに包まれました。そして何が起こったのかを互いに話し始めました。人々は興奮してたずねました。「これは何という新しい教えだろうか。大変な権威がある。悪霊さえこの人の命令に従うのだ。」

28 The news about Jesus spread quickly throughout the entire region of Galilee.

28 イエスさまに関するニュースはすぐにガリラヤ地方全体に広まりました。




ミニミニ解説

第21節に書かれているカペナウム(Capernaum)の町は、イスラエル北部のガリラヤ地方にある町でガリラヤ湖の北岸にあり、イエスさまがガリラヤ地方で伝道をした際の活動拠点でした。支配国のローマ帝国軍が駐留しており、また交易が盛んな裕福な町でした。ユダヤ人から見て外国人であるローマ人が多数いましたから外国の宗教や習慣が入り込み、また多数の軍人やビジネスの生み出す富裕が退廃と堕落をもたらしている町でもありました。旧約聖書では預言者の多くがこのような町に現れて「悔い改めよ。罪を認めて神さまに向き直れ」と説きましたから、イエスさまが伝道を伝えるには良い舞台だったのです。

イエスさまが人々に教えた場所は「会堂(Synagogue)」です。ユダヤ人にとって「寺院」と呼べる場所は一つだけで、それはエルサレムの都にあります。寺院の最深部にはユダヤ人の中でただひとり大祭司だけが入れる至聖所(the holy of holies)があり、ここは神さまが降臨する場所なのです。律法の定めによりユダヤ人の男子は年に何回か、祭事に参加するためにエルサレムの寺院へ出かける必要がありますが、それ以外の機会にはわざわざ遠方のエルサレムへ出向くことはできません。このため人々が神さまを崇拝し、またユダヤの律法を学ぶための施設として紀元前5世紀頃から各町に会堂が作られるようになりました。

平日はユダヤ人の少年が会堂へ集められて旧約聖書やユダヤ教の慣習を学びました(女子は参加が許されていませんでした)。毎週土曜日の安息日には成人の男子が会堂に集まり、ユダヤ教の律法博士(ラビ)が旧約聖書に基づく話をしました。聖書を教えるラビや先生は各町に定住しているわけではなかったので、町を訪れているラビや先生がいると、会堂の長が訪ねていって安息日に話をしてくれるようにと頼みました。だからイエスさまは各町を訪れると安息日に会堂へ出かけて行って話をしたのです。

第22節には「イエスさまが本当の権威を持って教えた」とあり、聞いていた人々がこれに驚いたと書かれています。会堂で教えた先生たちは通常は過去にラビが話した有名な説教から引用して話していました。これらの知識はユダヤ教育を通して習得されたもので、こういう話を知っていれば知っているほど聞き手の人々は話し手に権威を認めたのです。つまりたくさん知っている人が偉い人ということです。ところがイエスさまの話にはラビの説教からの引用は一切なくて、まったくのオリジナルなのでした。旧約聖書から一節を引用すると、その部分がどうして書かれたのか、書き手の趣旨や意図を語りました。旧約聖書の書き手は神さまです。預言者は神さまの啓示を受けて聖書を記述したのです。と言うことはつまりイエスさまは神さまの視点で話したのです。そしてその教えを自分たちの生活や生き方に実際にどのように当てはめていくべきかを説きました。イエスさまの話は筋が通っていて大変わかりやすく、しかもそれまでに聞いてきたスタイルとはまったく異なったのです。人々は驚き、これこそが「本当の権威」だと思いました。

第23節で突然叫び始めた「悪霊に取り憑かれた人」とはサタンの配下の「悪魔」が取り憑いた人のことです。サタンはもともとは高位の天使だったのですが、神さまに反抗して天国から追い出され地上へ落とされました。そのときサタンに従っていた天使たちがいたのですが、この天使たちも一緒に追放されています。聖書にはその数がすべての天使の三分の一もいたと書かれています。このサタンに従属していた天使たちが地上に落とされて悪霊/悪魔(evil spirit/ demon)になりました。

神さまや天使は霊(spirit)と呼ばれる存在です。「霊」と日本語で書くと幽霊のようなイメージになりますが、ここで言う「霊」は「肉体」を持つ私たちとは異なる存在です。聖書には霊が人間や動物の肉体の内側に憑依したり宿ったり、外部から影響を与えたりする様子がたくさん書かれています。ひとつの肉体には多数の霊が同時に憑依できるようです。悪魔は人に憑依するとその人の聴覚や視覚を奪ったり、病気にしたり、狂気を起こさせたりすることがありました(必ずしもそれらの障害がすべて悪魔によって引き起こされているということではありません)。

第24節を読むと、この男の人に取り憑いていた悪魔がイエスさまの正体を知っていたことがわかります。第25節では、イエスさまはまだ世の中に自分の正体や自分が地上に現れた意味を伝える時期が来ていないことを知っていたので悪魔に黙るように命じ、さらに「この人から出て行きなさい」と命じます。すると悪魔はこの人から出て行きます(第26節)。オカルト映画に描かれた悪魔払い(エクソシズム)の儀式やアクションは必要なく、悪魔はイエスさまのシンプルな「言葉」に従うのです。もともと地上に落とされた天使だった悪魔は、神さまの創造物のひとつですから、神さまの前にはまったくの無力なのです。人々は悪霊さえもがイエスさまの言葉に従うのを見て、イエスさまの言葉の持つ力や権威を自分の目で確認することができたのでした。






english1982 at 19:00│マルコの福音書