ルカの福音書第21章第29節~第37節:イエスさまが未来を予告する(続き)ルカの福音書第21章第1節~第4節:未亡人の献金

2015年10月11日

ルカの福音書第21章第5節~第28節:イエスさまが未来を予告する

第21章



 
(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


Jesus Foretells the Future

イエスさまが未来を予告する


5 Some of his disciples began talking about the majestic stonework of the Temple and the memorial decorations on the walls. But Jesus said,

5 弟子たちの何人かが寺院の荘厳な石細工や壁の記念の装飾について話し始めました。しかしイエスさまは言いました。

6 “The time is coming when all these things will be completely demolished. Not one stone will be left on top of another!”

6 「これらすべてが完全に破壊される日が来るのです。石ひとつとして上に積まれて残ることはないでしょう。」

7 “Teacher,” they asked, “when will all this happen? What sign will show us that these things are about to take place?”

7 弟子たちはたずねました。「先生、それらすべてのことはいつ起こるのですか。これらのことが起こるときに、どのような前兆が私たちに示されるのでしょうか。」

8 He replied, “Don’t let anyone mislead you, for many will come in my name, claiming, ‘I am the Messiah,’ and saying, ‘The time has come!’ But don’t believe them.

8 イエスさまは答えました。「誰にも欺かれないようにしなさい。たくさんの者が私の名前でやって来て自分が救世主だと名乗り、その時が来たと言います。しかしその人たちを信じてはいけません。

9 And when you hear of wars and insurrections, don’t panic. Yes, these things must take place first, but the end won’t follow immediately.”

9 戦争や反乱のことを耳にしても、うろたえてはいけません。確かにそれらのことは最初に起こらねばなりません。しかし終わりはすぐ続いては起こりません。」

10 Then he added, “Nation will go to war against nation, and kingdom against kingdom.

10 それからイエスさまは付け加えました。「民族は民族に対して戦争を起こし、王国は王国に対して戦争を起こします。

11 There will be great earthquakes, and there will be famines and plagues in many lands, and there will be terrifying things and great miraculous signs from heaven.

11 大地震が起こり、多くの場所で飢饉や疫病が起こります。そして恐ろしいことや、天からの大きな奇跡のしるしが現われます。

12 “But before all this occurs, there will be a time of great persecution. You will be dragged into synagogues and prisons, and you will stand trial before kings and governors because you are my followers.

12 しかしこれらのすべてが起こる前に、激しい迫害の時代が来ます。あなた方が私の信者だから、会堂や牢へと引きずられていき、王や総督たちの前で裁きに立つのです。

13 But this will be your opportunity to tell them about me.

13 しかしこれはあなた方が私について話をする機会となるのです。

14 So don’t worry in advance about how to answer the charges against you,

14 だから自分たちへの告発にどのように答えるか、あらかじめ心を悩ませてはいけません。

15 for I will give you the right words and such wisdom that none of your opponents will be able to reply or refute you!

15 なぜなら私があなた方に正しい言葉と知恵を与えるので、あなた方の反対者からは誰も反論も論駁もできないのです。

16 Even those closest to you -- your parents, brothers, relatives, and friends -- will betray you. They will even kill some of you.

16 あなた方に最も近い人たち、両親、兄弟、親戚、友人、この人たちがあなた方を裏切ります。あなた方の中には殺される者も出るでしょう。

17 And everyone will hate you because you are my followers.

17 そしてあなた方が私の信者だから、みながあなた方を嫌います。

18 But not a hair of your head will perish!

18 しかしあなた方の髪の毛一本も失われることはありません。

19 By standing firm, you will win your souls.

19 堅く立つことで、あなた方は自分の魂を勝ち取るのです。

20 “And when you see Jerusalem surrounded by armies, then you will know that the time of its destruction has arrived.

20 「そしてエルサレムが軍隊に囲まれるのを見たら、そのときあなた方は破滅のときが来たと知るでしょう。

21 Then those in Judea must flee to the hills. Those in Jerusalem must get out, and those out in the country should not return to the city.

21 そうしたらユダヤにいる人たちは山へ逃げなければなりません。エルサレムにいる人たちは脱出しなければいけません。そして田舎にいる人たちは町へ戻ってはいけません。

22 For those will be days of God’s vengeance, and the prophetic words of the Scriptures will be fulfilled.

22 なぜならそれは神さまの報復の日だからです。聖書の預言が実現するのです。

23 How terrible it will be for pregnant women and for nursing mothers in those days. For there will be disaster in the land and great anger against this people.

23 その日には妊娠した女性と授乳する母親にとって、なんと恐ろしいことになるでしょうか。なぜなら地には大惨事が起こり、人々に対する大きな怒りがあるからです。

24 They will be killed by the sword or sent away as captives to all the nations of the world. And Jerusalem will be trampled down by the Gentiles until the period of the Gentiles comes to an end.

24 人々は剣で殺されるか、捕虜となって世界のあらゆる国に連れて行かれます。エルサレムは異邦人の時代が終わるまでの間、異邦人に踏み荒らされます。

25 “And there will be strange signs in the sun, moon, and stars. And here on earth the nations will be in turmoil, perplexed by the roaring seas and strange tides.

25 そして太陽と月と星に不思議なしるしが現われます。地上では騒ぐ海と不思議な波に困惑させられて、諸国民が混乱に陥ります。

26 People will be terrified at what they see coming upon the earth, for the powers in the heavens will be shaken.

26 人々は地上へとやって来るものを見て恐れおののきます。なぜなら天のさまざまな力が揺り動かされるからです。

27 Then everyone will see the Son of Man coming on a cloud with power and great glory.

27 そしてすべての人が、人の子が力と輝かしい栄光とともに、雲に乗って来るのを目撃します。

28 So when all these things begin to happen, stand and look up, for your salvation is near!”

28 だからこれらのことが起こり始めたら、立って見上げなさい。なぜならあなたの救いが近いからです。」




ミニミニ解説

「ルカの福音書」の第21章です。

イエスさまはエルサレムに到着すると、最初に寺院で動物商や両替商を追い立てて一掃し、それから逮捕までの一週間の間、毎日寺院で人々に教えていました。

今回の部分、前半の第19節までと同じ記述はマルコとマタイに見つかります。

マルコはMark 13:1-13(マルコの福音書第13章第1節~第13節)です。「1 イエスが、宮から出て行かれるとき、弟子のひとりがイエスに言った。「先生。これはまあ、何とみごとな石でしょう。何とすばらしい建物でしょう。」 2 すると、イエスは彼に言われた。「この大きな建物を見ているのですか。石がくずされずに、積まれたまま残ることは決してありません。」 3 イエスがオリーブ山で宮に向かってすわっておられると、ペテロ、ヤコブ、ヨハネ、アンデレが、ひそかにイエスに質問した。4 「お話しください。いつ、そういうことが起こるのでしょう。また、それがみな実現するようなときには、どんな前兆があるのでしょう。」 5 そこで、イエスは彼らに話し始められた。「人に惑わされないように気をつけなさい。6 わたしの名を名のる者が大ぜい現われ、『私こそそれだ』と言って、多くの人を惑わすでしょう。7 また、戦争のことや戦争のうわさを聞いても、あわててはいけません。それは必ず起こることです。しかし、終わりが来たのではありません。8 民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がり、方々に地震があり、ききんも起こるはずだからです。これらのことは、産みの苦しみの初めです。 9 だが、あなたがたは、気をつけていなさい。人々は、あなたがたを議会に引き渡し、また、あなたがたは会堂でむち打たれ、また、わたしのゆえに、総督や王たちの前に立たされます。それは彼らに対してあかしをするためです。10 こうして、福音がまずあらゆる民族に宣べ伝えられなければなりません。11 彼らに捕らえられ、引き渡されたとき、何と言おうかなどと案じるには及びません。ただ、そのとき自分に示されることを、話しなさい。話すのはあなたがたではなく、聖霊です。12 また兄弟は兄弟を死に渡し、父は子を死に渡し、子は両親に逆らって立ち、彼らを死に至らせます。13 また、わたしの名のために、あなたがたはみなの者に憎まれます。しかし、最後まで耐え忍ぶ人は救われます。」([新改訳])。

マタイはMatthew 24:1-13(マタイの福音書第24章第1節~第13節)です。「1 イエスが宮を出て行かれるとき、弟子たちが近寄って来て、イエスに宮の建物をさし示した。2 そこで、イエスは彼らに答えて言われた。「このすべての物に目をみはっているのでしょう。まことに、あなたがたに告げます。ここでは、石がくずされずに、積まれたまま残ることは決してありません。」 3 イエスがオリーブ山ですわっておられると、弟子たちが、ひそかにみもとに来て言った。「お話しください。いつ、そのようなことが起こるのでしょう。あなたの来られる時や世の終わりには、どんな前兆があるのでしょう。」 4 そこで、イエスは彼らに答えて言われた。「人に惑わされないように気をつけなさい。5 わたしの名を名のる者が大ぜい現われ、『私こそキリストだ』と言って、多くの人を惑わすでしょう。6 また、戦争のことや、戦争のうわさを聞くでしょうが、気をつけて、あわてないようにしなさい。これらは必ず起こることです。しかし、終わりが来たのではありません。 7 民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がり、方々にききんと地震が起こります。8 しかし、そのようなことはみな、産みの苦しみの初めなのです。9 そのとき、人々は、あなたがたを苦しいめに会わせ、殺します。また、わたしの名のために、あなたがたはすべての国の人々に憎まれます。10 また、そのときは、人々が大ぜいつまずき、互いに裏切り、憎み合います。11 また、にせ預言者が多く起こって、多くの人々を惑わします。12 不法がはびこるので、多くの人たちの愛は冷たくなります。13 しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われます。」([新改訳])。

「マタイ」・「ルカ」=「マルコ」+「Q資料」+「独自の資料」の公式にあてはめると、これは「マルコ」からの採用と言うことになります。

イエスさまが寺院で教えていたある日の終わりのことでしょうか、マルコの記述ではイエスさまの一行が寺院を去ろうとするところで弟子のひとりが寺院の石細工や、壁の装飾をほめたのでした。当時の寺院はイエスさまの時代から500年ほど前にエズラなどをリーダーにして小規模に再建されていたものを基礎に、建築マニアとして知られるヘロデ大王が30年以上もかけて増改築を続けてきた壮大な寺院です。建築プロジェクトはヘロデ大王の死後も続き、結局20BC~AD64までの80年以上をかけて行われました。

建物をほめた弟子に対してイエスさまは「これらすべてが完全に破壊される日が来る」「石ひとつとして上に積まれて残ることはない」と寺院が破壊されることを予告します。実際にはイエスさまの十字架の後、時代が進んでユダヤ民族とローマ帝国の衝突が激しくなり、西暦70年にローマ帝国軍がついにエルサレムを陥落させ、そのときに寺院を破壊します。帝国軍が寺院に火を放ったため、寺院内部に使われていた金の装飾が熱で溶けて流れ落ち、石の隙間に流れ込んでしまったそうで、この金を回収するためにローマ軍の兵士が石をひとつずつ動かすはめになったのだとか。これが「石ひとつとして積まれたまま残ることはない」の意味だとも言われています。

ユダヤ民族にとって「寺院」と呼べる場所は過去も今日もエルサレムにある一箇所だけで、日本のように国のあちこちに寺が立っているのとは考え方が違います。ユダヤ民族とっての「寺院」は創造主である神さまが降臨するただ一つの場所であり、そこは祭儀や政治の中心であり、民族の象徴なのです。その寺院が破壊されるという予告は、サンヘドリンの耳に入ればその場で逮捕されてもおかしくないくらいの冒涜にあたる発言です。弟子たちにとっては「寺院が破壊される」と言うショッキングな予告のことは頭から離れず、それがいつ起こるのか、どんな前兆があるのか、とイエスさまにたずねます。やはりマルコによると、これをたずねたのはペテロ、ヤコブ、ヨハネ、アンデレの四人でした。最初の三人はいつもイエスさまと行動をともにするイエスさまの弟子の中の側近たちですが、今回はここにペテロの兄弟のアンデレも加わっています。またマルコではこの質問が、エルサレムの城壁の外側で東に広がるオリーブ山で密かに行われた、と書かれています。イエスさまの一行はいつもオリーブ山の山中に宿営していたのです。

イエスさまはそのときに起こる「前兆」について話し始めます。まず第8節で「誰にも欺かれないようにしなさい」、「たくさんの者が私(イエスさま))の名前でやって来て自分が救世主だと名乗り、その時が来たと言います」、「しかしその人たちを信じてはいけません」と語られます。これは当時、熱心党などに代表される活動家によって、ローマ帝国からの独立を勝ち取ろうとする運動がだんだんと国家全体に拡大していく時代だったのですが、それがやがてイスラエル対ローマ帝国の全面戦争の様相へと発展していく中で、「私こそがイスラエルを救う救世主だ」と名乗る人が、国内のあちこちに多数出現したことを表しているのだと思います。

たとえばイエスさまが十字架死から復活して天に戻られた後の使徒の伝道活動の様子を書いている新約聖書の「Acts(使徒の働き)」は、ルカの福音書の後編に位置づけられた本で、やはりルカの記述なのですが、その中で、Acts 5:35-39(使徒の働き第5章第35節~第39節)にはペテロが逮捕された場面で、サンヘドリンでファリサイ派に属するガマリエル(この人は使徒のパウロの先生だった人です)が議院に向かって次のように言っています。 「35 それから、議員たちに向かってこう言った。「イスラエルの皆さん。この人々をどう扱うか、よく気をつけてください。36 というのは、先ごろチゥダが立ち上がって、自分を何か偉い者のように言い、彼に従った男の数が四百人ほどありましたが、結局、彼は殺され、従った者はみな散らされて、あとかたもなくなりました。37 その後、人口調査のとき、ガリラヤ人ユダが立ち上がり、民衆をそそのかして反乱を起こしましたが、自分は滅び、従った者たちもみな散らされてしまいました。」([新改訳]) 。ここに登場している「チゥダ」と「ガリラヤ人ユダ」がそのような活動家の例です。きっと彼らは自分こそがイスラエルを再び独立へと導く救世主であると言うような発言をして人々を扇動し反乱を起こしたのでしょう。他にもイエスさまが十字架にかけられる前に、総督のピラトがイエスさまと引き換えに釈放するかどうかを議論した「バラバ」もそうです。そんな戦乱の世の中なのですから人々は、第9節にあるように「戦争や反乱のこと」を毎日のように耳にするでしょう。しかしうろたえてはいけないのです。こういう戦争や反乱は最初に起こるのですが、「終わり」はすぐ続いては起こらないのです。第10節、イスラエルとローマ帝国は全面戦争へと向かい、つまり民族は民族に対して戦争を起こし、王国は王国に対して戦争を起こすのです。

第11節には「大地震」と「飢饉や疫病」についての記述があります。当時、飢饉がたくさんあったことは、「Acts(使徒の働き)」の中にも、歴史資料の中にも書かれています。地震などの災害についても、たとえば現イタリアのヴェスヴィウス火山が噴火してポンペイ市が埋没したのは西暦79年の出来事です。

第12節には「しかしこれらのすべてが起こる前に、激しい迫害の時代が来ます。あなた方が私の信者だから、会堂や牢へと引きずられていき、王や総督たちの前で裁きに立つのです。」と書かれています。迫害はユダヤの各町や村の共同体にあった地方の会堂(シナゴーグ)で始まり、「王や総督たちの前で裁きに立つ」は、ローマ帝国の法廷で裁かれることを指しています。西暦70年のエルサレム陥落の前の頃であれば、それはイエスさまの十字架から30~40年が経った頃になります。初期のキリスト教徒はしばらくの間はいままでどおりにユダヤ人の会堂に集うことができたようですが、やがてクリスチャンはユダヤ人からもローマ帝国からも迫害されるようになるのです。ここに書かれているのは当時、実際にクリスチャンが直面していた迫害の様子です。

ですがイエスさまは、第13節で「しかしこれはあなた方が私について話をする機会となるのです。」と言います。そして第14節~第15節では、「自分たちへの告発にどのように答えるか、あらかじめ心を悩ませてはいけません。なぜなら私があなた方に正しい言葉と知恵を与えるので、あなたの反対者からは誰も反論も論駁もできないのです。」と伝えます。マルコにはこの助言を与えるのは聖霊であると書かれていますから、この一節も三位一体説として、父なる神さま、子なるイエスさま、そして聖霊の三つは、位相は異なるが、三つので一体の神さまを形成していると書いていることになります。

そこからは「あなた方に最も近い人たち、両親、兄弟、親戚、友人、この人たちがあなたを裏切ります。あなた方の中には殺される者も出るでしょう。そしてあなた方が私の信者だから、みながあなた方を嫌います。」と迫害の悲惨な状況が書き連ねられた後で、第18節~第19節には、「しかしあなた方の髪の毛一本も失われることはありません。堅く立つことで、あなた方は自分の魂を勝ち取るのです。」と結ばれます。マルコの最後は「しかし、最後まで耐え忍ぶ人は救われます。」と結ばれていて、この部分が「では最後まで堪え忍べなかった人はどうなるのか」という議論を巻き起こすこととなりますが、ここの部分はイエスさまが自身の十字架の前に、弟子たちに話したこれから起こるイスラエルの終わりについての予告の言葉に、実際に迫害を受けて苦しむクリスチャンの実情を盛り込んで書かれた「励まし」のメッセージと解釈すれば納得がいきます。

後半の第20節以降と同じ記述はマルコとマタイに見つかります。

マルコはMark 13:14-26(マルコの福音書第13章第14節~第26節)です。「14 『荒らす憎むべきもの』が、自分の立ってはならない所に立っているのを見たならば(読者はよく読み取るように。)ユダヤにいる人々は山へ逃げなさい。15 屋上にいる者は降りてはいけません。家から何かを取り出そうとして中に入ってはいけません。16 畑にいる者は着物を取りに戻ってはいけません。17 だがその日、哀れなのは身重の女と乳飲み子を持つ女です。18 ただ、このことが冬に起こらないように祈りなさい。19 その日は、神が天地を創造された初めから、今に至るまで、いまだかつてなかったような、またこれからもないような苦難の日だからです。20 そして、もし主がその日数を少なくしてくださらないなら、ひとりとして救われる者はないでしょう。しかし、主は、ご自分で選んだ選びの民のために、その日数を少なくしてくださったのです。21 そのとき、あなたがたに、『そら、キリストがここにいる』とか、『ほら、あそこにいる』とか言う者があっても、信じてはいけません。22 にせキリスト、にせ預言者たちが現われて、できれば選民を惑わそうとして、しるしや不思議なことをして見せます。23 だから、気をつけていなさい。わたしは、何もかも前もって話しました。24 だが、その日には、その苦難に続いて、太陽は暗くなり、月は光を放たず、25 星は天から落ち、天の万象は揺り動かされます。26そのとき、人々は、人の子が偉大な力と栄光を帯びて雲に乗って来るのを見るのです。 」([新改訳])。

マタイはMatthew 24:1-13(マタイの福音書第24章第1節~第13節)です。「14 この御国の福音は全世界に宣べ伝えられて、すべての国民にあかしされ、それから、終わりの日が来ます。15 それゆえ、預言者ダニエルによって語られたあの『荒らす憎むべき者』が、聖なる所に立つのを見たならば、(読者はよく読み取るように。) 16 そのときは、ユダヤにいる人々は山へ逃げなさい。17 屋上にいる者は家の中の物を持ち出そうと下に降りてはいけません。18 畑にいる者は着物を取りに戻ってはいけません。19 だがその日、哀れなのは身重の女と乳飲み子を持つ女です。20 ただ、あなたがたの逃げるのが、冬や安息日にならぬよう祈りなさい。21 そのときには、世の初めから、今に至るまで、いまだかつてなかったような、またこれからもないような、ひどい苦難があるからです。22 もし、その日数が少なくされなかったら、ひとりとして救われる者はないでしょう。しかし、選ばれた者のために、その日数は少なくされます。23 そのとき、『そら、キリストがここにいる』とか、『そこにいる』とか言う者があっても、信じてはいけません。24 にせキリスト、にせ預言者たちが現われて、できれば選民をも惑わそうとして、大きなしるしや不思議なことをして見せます。25 さあ、わたしは、あなたがたに前もって話しました。26 だから、たとい、『そら、荒野にいらっしゃる』と言っても、飛び出して行ってはいけません。『そら、へやにいらっしゃる』と聞いても、信じてはいけません。27 人の子の来るのは、いなずまが東から出て、西にひらめくように、ちょうどそのように来るのです。28 死体のある所には、はげたかが集まります。29 だが、これらの日の苦難に続いてすぐに、太陽は暗くなり、月は光を放たず、星は天から落ち、天の万象は揺り動かされます。」([新改訳])。

「マタイ」・「ルカ」=「マルコ」+「Q資料」+「独自の資料」の公式にあてはめると、これは「マルコ」からの採用と言うことになります。

マルコやマタイにあるのにルカには登場しない強烈な印象を残す一節、「 『荒らす憎むべきもの』が、自分の立ってはならない所に立っているのを見たならば(読者はよく読み取るように。)」あるいは「あの『荒らす憎むべき者』が、聖なる所に立つのを見たならば、(読者はよく読み取るように。)」ですが、ここに登場する「荒らす憎むべきもの」は、マタイに「預言者ダニエルによって語られた」と書かれているように旧約聖書の「Daniel(ダニエル書)」の何カ所かに登場します。ダニエル書は終末論と結びつけて解釈されるため、ダニエル書の「荒らす憎むべきもの」の登場箇所が、果たしてエルサレムの陥落を指すのか、あるいはこの世の終わりを指すのか、あるいはエルサレム陥落の様相が、この世の終わりの「型」となって繰り返されることを言っているのか、なかなか解釈の難しいところなのですが、今回の場面では素直に、イエスさまの時代のエルサレムの状況下で「立ってはならない者がエルサレムの寺院の至聖所に立つとき」と考えてみましょう。そもそも至聖所と呼ばれる寺院の最深部は、ユダヤ人の中でもただひとり大祭司だけが入ることを許された場所なのですから、大祭司以外の人物がここへ立てば、それは誰でも「立ってはならない者」となるわけですが、ユダヤ人はわざわざ禁を破って至聖所へ入ろうなどとは考えませんから、ここはローマ帝国軍であるとか、さらにはローマ帝国皇帝と考えるのが良いでしょう。つまりこれはいよいよローマ帝国軍がエルサレムの寺院へ足を踏み込むとき、と解釈できます。

そのような状況が訪れたらとにかく後先考えずに逃げなさい、と言うのがイエスさまの予告です。エルサレムを捨てて、速やかに山岳部へと逃げ込むのです。

第22節にはどうしてこのような酷い出来事になってしまうのか、その理由が書かれています。「なぜならそれは神さまの報復の日だからです。聖書の預言が実現するのです。」と。これは第25節の「そして太陽と月と星に不思議なしるしが現われます。」や、マルコやマタイに登場する「星は天から落ち、天の万象は揺り動かされます。」とも合わせて、旧約聖書のイザヤ書の次の部分の成就を言っているものと思われます。Isaiah 13:1-13(イザヤ書第13章第1節~第13節)です。

「1 アモツの子イザヤの見たバビロンに対する宣告。2 はげ山の上に旗を掲げ、彼らに向かって声をあげ、手を振って、彼らを貴族の門に、入らせよ。3 わたしは怒りを晴らすために、わたしに聖別された者たちに命じ、またわたしの勇士、わたしの勝利を誇る者たちを呼び集めた。4 聞け。おびただしい民にも似た山々のとどろきを。聞け。寄り合った王国、国々のどよめきを。万軍の主が、軍隊を召集しておられるのだ。5 彼らは遠い国、天の果てからやって来る。彼らは全世界を滅ぼすための、主とその憤りの器だ。6 泣きわめけ。主の日は近い。全能者から破壊が来る。7 それゆえ、すべての者は気力を失い、すべての者の心がしなえる。8 彼らはおじ惑い、子を産む女が身もだえするように、苦しみと、ひどい痛みが彼らを襲う。彼らは驚き、燃える顔で互いを見る。9 見よ。主の日が来る。残酷な日だ。憤りと燃える怒りをもって、地を荒れすたらせ、罪人たちをそこから根絶やしにする。10 天の星、天のオリオン座は光を放たず、太陽は日の出から暗く、月も光を放たない。11 わたしは、その悪のために世を罰し、その罪のために悪者を罰する。不遜な者の誇りをやめさせ、横暴な者の高ぶりを低くする。12 わたしは、人間を純金よりもまれにし、人をオフィルの金よりも少なくする。13 それゆえ、わたしは天を震わせる。万軍の主の憤りによって、その燃える怒りの日に、大地はその基から揺れ動く。」([新改訳])。

何とも恐ろしい預言です。この部分もまた、ここがそのままエルサレム陥落の予告なのか、あるいはこの世の終わりを指すものなのか、あるいはエルサレム陥落が、この世の終わりの「型」となって繰り返される形を取るのか、なかなか解釈の難しいところです。

第24節には「エルサレムは異邦人の時代が終わるまでの間、異邦人に踏み荒らされます。」と書かれていますが、この「異邦人による踏み荒らし」が終わるとき、第27節にある「すべての人が、人の子が力と輝かしい栄光とともに、雲に乗って来るのを目撃します。」が実現するように読めます。何度か書いて来ているように福音書に登場する「人の子」はイエスさまが好んで自分を呼ぶのに使った呼称なのですから、これは十字架死を経て一度天へ戻ったイエスさまが、いよいよ再来するタイミングを予告していると言うことになります。イエスさまの再来がいつ起こるのか、そのタイミングについてのヒントが、第24節の「異邦人の時代が終わるまでの間」になります。この部分はすぐその後の「(エルサレムは)異邦人に踏み荒らされます。」とつなげて解釈し、これはつまりエルサレムから異邦人が去り、聖地としてのエルサレムが完全にユダヤ人の手に取り戻されるとき、と解釈することが出来ます(ご存じのように現在のエルサレムには多数のアラブ人も居住しています)。

「異邦人の時代が終わるまでの間」のもう一つの解釈のヒントは、前回のマルコの第13章の引用の中にあったのですが、クリスチャンが迫害に会う場面の予告です。「9 だが、あなたがたは、気をつけていなさい。人々は、あなたがたを議会に引き渡し、また、あなたがたは会堂でむち打たれ、また、わたしのゆえに、総督や王たちの前に立たされます。それは彼らに対してあかしをするためです。10 こうして、福音がまずあらゆる民族に宣べ伝えられなければなりません。」([新改訳])。イエスさまは、クリスチャンは迫害の中で、ローマ帝国総督やローマ皇帝の前に立たされて証言をする機会を得る、それは福音が述べ伝えられるためのチャンスなのだ、と述べた後で、「こうして、福音がまずあらゆる民族に宣べ伝えられなければなりません。」と言っています。だとすると「異邦人の時代が終わるまでの間」の「異邦人の時代」と言うのは、福音がエルサレムもイスラエルからも外へ出て、私たち日本人を含むユダヤ人以外の外国人に述べ伝えられる時代、と解釈することができます。そうすると第24節は「福音が異邦人に述べ伝えられる時代が終わるまでの間、エルサレムは異邦人に踏み荒らされる」との解釈になり、福音があらゆる民族に宣べ伝えられた後で、聖地としてのエルサレムが完全にユダヤ人の手に取り戻されて、いよいよイエスさまが再来する、と言うことになります。






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