ルカの福音書:第4章ルカの福音書第3章第1節~第20節:洗礼者ヨハネが道を整える

2015年10月29日

ルカの福音書第3章第21節~第38節:イエスさまの洗礼、イエスさまの祖先たち

第3章



 
(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


The Baptism of Jesus

イエスさまの洗礼


21 One day when the crowds were being baptized, Jesus himself was baptized. As he was praying, the heavens opened,

21 ある日、群衆が洗礼を受けているときにイエスさまご自身も洗礼を受けました。イエスさまがお祈りされていると天が開きました。

22 and the Holy Spirit, in bodily form, descended on him like a dove. And a voice from heaven said, “You are my dearly loved Son, and you bring me great joy.”

22 そして聖霊が形を成して鳩のようにイエスさまの上に降りました。そして天からの声が告げました。「あなたは私の深く愛する息子、あなたは私に大きな喜びをもたらします。」



The Ancestors of Jesus

イエスさまの祖先たち


23 Jesus was about thirty years old when he began his public ministry. Jesus was known as the son of Joseph. Joseph was the son of Heli.

23 イエスさまが公然と仕事を始められたとき、イエスはおよそ30歳で、ヨセフの息子として知られていました。ヨセフはヘリの息子でした。

24 Heli was the son of Matthat. Matthat was the son of Levi. Levi was the son of Melki. Melki was the son of Jannai. Jannai was the son of Joseph.

24 ヘリはマタテの息子、マタテはレビの息子、レビはメルキの息子、メルキはヤンナイの息子、ヤンナイはヨセフの息子でした。

25 Joseph was the son of Mattathias. Mattathias was the son of Amos. Amos was the son of Nahum. Nahum was the son of Esli. Esli was the son of Naggai.

25 ヨセフはマタテヤの息子、マタテヤはアモスの息子、アモスはナホムの息子、ナホムはエスリの息子、エスリはナンガイの息子でした。

26 Naggai was the son of Maath. Maath was the son of Mattathias. Mattathias was the son of Semein. Semein was the son of Josech. Josech was the son of Joda.

26 ナンガイはマハテの息子、マハテはマタテヤの息子、マタテヤはシメイの息子、シメイはヨセクの息子、ヨセクはヨダの息子でした。

27 Joda was the son of Joanan. Joanan was the son of Rhesa. Rhesa was the son of Zerubbabel. Zerubbabel was the son of Shealtiel. Shealtiel was the son of Neri.

27 ヨダはヨハナンの息子、ヨハナンはレサの息子、レサはゾロバベルの息子、ゾロバベルはサラテルの息子、サラテルはネリの息子でした。

28 Neri was the son of Melki. Melki was the son of Addi. Addi was the son of Cosam. Cosam was the son of Elmadam. Elmadam was the son of Er.

28 ネリはメルキの息子、メルキはアデイの息子、アデイはコサムの息子、コサムはエルマダムの息子、エルマダムはエルの息子でした。

29 Er was the son of Joshua. Joshua was the son of Eliezer. Eliezer was the son of Jorim. Jorim was the son of Matthat. Matthat was the son of Levi.

29 エルはヨシュアの息子、ヨシュアはエリエゼルの息子、エリエゼルはヨリムの息子、ヨリムはマタテの息子、マタテはレビの息子でした。

30 Levi was the son of Simeon. Simeon was the son of Judah. Judah was the son of Joseph. Joseph was the son of Jonam. Jonam was the son of Eliakim.

30 レビはシメオンの息子、シメオンはユダの息子、ユダはヨセフの息子、ヨセフはヨナムの息子、ヨナムはエリヤキムの息子でした。

31 Eliakim was the son of Melea. Melea was the son of Menna. Menna was the son of Mattatha. Mattatha was the son of Nathan. Nathan was the son of David.

31 エリヤキムはメレヤの息子、メレヤはメナの息子、メナはマタタの息子、マタタはナタンの息子、ナタンはダビデの息子でした。

32 David was the son of Jesse. Jesse was the son of Obed. Obed was the son of Boaz. Boaz was the son of Salmon. Salmon was the son of Nahshon.

32 ダビデはエッサイの息子、エッサイはオベデの息子、オベデはボアズの息子、ボアズはサラの息子、サラはナアソンの息子でした。

33 Nahshon was the son of Amminadab. Amminadab was the son of Admin. Admin was the son of Arni. Arni was the son of Hezron. Hezron was the son of Perez. Perez was the son of Judah.

33 ナアソンはアミナダブの息子、アミナダブはアデミンの息子、アデミンはアルニの息子、アルニはエスロンの息子、エスロンはパレスの息子、パレスはユダの息子でした。

34 Judah was the son of Jacob. Jacob was the son of Isaac. Isaac was the son of Abraham. Abraham was the son of Terah. Terah was the son of Nahor.

34 ユダはヤコブの息子、ヤコブはイサクの息子、イサクはアブラハムの息子、アブラハムはテラの息子、テラはナホルの息子でした。

35 Nahor was the son of Serug. Serug was the son of Reu. Reu was the son of Peleg. Peleg was the son of Eber. Eber was the son of Shelah.

35 ナホルはセルグの息子、セルグはレウの息子、レウはペレグの息子、ペレグはエベルの息子、エベルはサラの息子でした。

36 Shelah was the son of Cainan. Cainan was the son of Arphaxad. Arphaxad was the son of Shem. Shem was the son of Noah. Noah was the son of Lamech.

36 サラはカイナンの息子、カイナンはアルパクサデの息子、アルパクサデはセムの息子、セムはノアの息子、ノアはラメクの息子でした。

37 Lamech was the son of Methuselah. Methuselah was the son of Enoch. Enoch was the son of Jared. Jared was the son of Mahalalel. Mahalalel was the son of Kenan.

37 ラメクはメトセラの息子、メトセラはエノクの息子、エノクはヤレデの息子、ヤレデはマハラレルの息子、マハラレルはカイナンの息子でした。

38 Kenan was the son of Enosh. Enosh was the son of Seth. Seth was the son of Adam. Adam was the son of God.

38 カイナンはエノスの息子、エノスはセツの息子、セツはアダムの息子、アダムは神さまの息子でした。




ミニミニ解説

「ルカの福音書」の第3章です。

洗礼者ヨハネがヨルダン川の両岸を巡り、荒野で教え始めるとたくさんの人々が集まって来ました。この場所にいよいよイエスさまが登場します。

イエスさまもほかのみなと同じようにヨルダン川に入り、ヨハネから洗礼を受けました。すると天が開いて鳩の姿のような聖霊がイエスさまの上に降りて来ます。この出来事はイエスさまがこれからスタートする伝道の活動では、神さまが常にイエスさまと共にいることの証になっています。ここからのイエスさまは精霊の力を借りて行動するのです。

なおイエスさまが十字架にかかって人の罪を背負うというミッションが完遂した後では、神さまへの裏切りで負ってきた私たちの「罪」の負債の支払いが完済し、神さまと人の間の不和は解消しました。イエスさまは十字架死からよみがえって一度天に帰るにあたり、自分に代わって天から聖霊を送ると約束されました。そして前回書きましたように「Acts(使徒の働き)」の第2章で、信者ひとりひとりに最初に聖霊が訪れたところから始まって、この日から今日に至るまで、ヨハネが荒野で説いたように、神さまに対する自分の罪を認めてそれを悔い、神さまが私たちのために用意くださったイエスさまを通じた救済の計画に感謝して、それからの人生を神さまを向いて生きると宣言したすべての信者ひとりひとりには聖霊が訪れて封印されることになっています。つまり今回のイエスさまと同様、福音を受け入れたクリスチャンの人生は、日々を自分の中の聖霊と共に歩むことになるのです。なんと心強いことでしょうか。

イエスさまの洗礼の場面では、私たちには目で見ることのできない聖霊が鳩のように形を成して降りてくるのが見えたのです。そして天から声が聞こえます。「あなたは私の深く愛する息子、あなたは私に大きな喜びをもたらします。」 これは神さまの声です。こうしてこの場面は、父なる神さま、子なるイエスさま、そして聖霊という三位一体のすべてが一度に登場する場面として紹介されます。

第23節、イエスさまがヨハネの洗礼を受ける形で舞台に登場し、伝道の仕事を開始したのはイエスさまが30歳のときだったと書かれています。「30歳」と言う年齢は旧約聖書の中に何度か登場するようです。たとえば「Numbers(民数記)」では第4章でユダヤの十二氏族の中で特別に神さまのための仕事をするために選ばれた「レビ族」の仕事を家系毎に定めていますが、その仕事をする成人の年齢を30歳以上としています。たとえば一番最初のNumbers 4:1-3(民数記第4章第1節~第3節)の部分です。「1 主はモーセとアロンに告げて仰せられた。2 「レビ人のうち、ケハテ族の人口調査を、その氏族ごとに、父祖の家ごとにせよ。3 それは会見の天幕で務めにつき、仕事をすることのできる三十歳以上五十歳までのすべての者である。」([新改訳])。

あるいはアブラハムの孫にあたるヤコブがエジプトでパロ(=ファラオ)の信頼を勝ち取り、エジプトの国家運営を任された年齢が30歳でした。Genesis 41:38-46(創世記第41章第38節~第46節)です。「38 そこでパロは家臣たちに言った。「神の霊の宿っているこのような人を、ほかに見つけることができようか。」 39 パロはヨセフに言った。「神がこれらすべてのことをあなたに知らされたのであれば、あなたのように、さとくて知恵のある者はほかにいない。40 あなたは私の家を治めてくれ。私の民はみな、あなたの命令に従おう。私があなたにまさっているのは王位だけだ。」 41 パロはなおヨセフに言った。「さあ、私はあなたにエジプト全土を支配させよう。」 42 そこで、パロは自分の指輪を手からはずして、それをヨセフの手にはめ、亜麻布の衣服を着せ、その首に金の首飾りを掛けた。43 そして、自分の第二の車に彼を乗せた。そこで人々は彼の前で「ひざまずけ」と叫んだ。こうして彼にエジプト全土を支配させた。44 パロはヨセフに言った。「私はパロだ。しかし、あなたの許しなくしては、エジプト中で、だれも手足を上げることもできない。」 45 パロはヨセフにツァフェナテ・パネアハという名を与え、オンの祭司ポティ・フェラの娘アセナテを彼の妻にした。こうしてヨセフはエジプトの地に知れ渡った。46 -- ヨセフがエジプトの王パロに仕えるようになったときは三十歳であった -- ヨセフはパロの前を去ってエジプト全土を巡り歩いた。」([新改訳])。

そしてイスラエル史上で最高の王と讃えられるダビデも30歳で王となりました。2 Samuel 5:1-5(サムエル記第二の第5章第1節~第5節)です。「1 イスラエルの全部族は、ヘブロンのダビデのもとに来てこう言った。「ご覧のとおり、私たちはあなたの骨肉です。2 これまで、サウルが私たちの王であった時でさえ、イスラエルを動かしていたのは、あなたでした。しかも、主はあなたに言われました。『あなたがわたしの民イスラエルを牧し、あなたがイスラエルの君主となる。』」 3 イスラエルの全長老がヘブロンの王のもとに来たとき、ダビデ王は、ヘブロンで主の前に、彼らと契約を結び、彼らはダビデに油をそそいでイスラエルの王とした。4 ダビデは三十歳で王となり、四十年間、王であった。5 ヘブロンで七年六か月、ユダを治め、エルサレムで三十三年、全イスラエルとユダを治めた。」([新改訳])。つまりユダヤ文化の中で、30歳という年齢は重要な任務を始めるのにふさわしい年齢と考えられていたのかも知れません。

ところでルカの第3章は「皇帝テベリオの治世の第十五年、ポンテオ・ピラトがユダヤの総督、ヘロデがガリラヤの国主、その兄弟ピリポがイツリヤとテラコニテ地方の国主、ルサニヤがアビレネの国主であり、」([新改訳])という文章で始まって、そこから洗礼者ヨハネの活動を記述し始めました。ここに書かれている「皇帝テベリオ」はローマ帝国の初代皇帝のアウグストゥスを継いだ第二代皇帝のティベリウスのことで皇帝在位は西暦14~37年の23年間です。と言うことは「治世の第十五年」は西暦28年(あるいは29年)ということになります。イエスさまが伝道活動を開始したのがこの年で、そのときの年齢が30歳だとしたら、イエスさまの誕生は紀元前1~2年ということになります。現在はイエスさまの誕生年はヘロデ大王の没年にあたる紀元前4年と考えるのが通説のようで、だとすると西暦28年のイエスさまは32歳だったことになります。

同じく第23節、イエスさまは郷里のナザレではヨセフの息子として知られていたと書かれています。この「~の息子」の言い方は、当時のユダヤ社会では当たり前に行われていた人物紹介のやり方だったようです。ヨセフはマリヤの夫で村の大工でした。マリヤはヨセフと結婚する前、婚約していたときに聖霊によってイエスさまを身ごもっています(処女懐胎)。その経緯は第1章と第2章で読みました。この「ヨセフの息子として知られていた」の部分を[KJV]で見ると、「being (as was supposed) the son of Joseph」となっていて、つまり「ヨセフの息子である」という記述の間に括弧付きで「(と考えられていた)」という言葉が挿入されています。これは実際にはヨセフはイエスさまの父ではなくて、イエスさまが処女懐胎の形でマリヤの胎内に入ったことを言っているのでしょう。

また同じ第23節にはイエスさまの父として知られていたヨセフが、ヘリの息子であったと書かれ、その後でアダムからヘリに至る家系図が書かれています。新約聖書ではイエスさまの家系図は二箇所に登場します。今回のルカの第3章と、マタイの冒頭第1章です。ルカの家系図は上へ上へと遡っていきますが、マタイの第1章の家系図はアブラハムからスタートして下っていきます。その最後の部分、Matthew 1:15-16(マタイの福音書第1章第15節~第16節)を見てみると、「15 エリウデにエレアザルが生まれ、エレアザルにマタンが生まれ、マタンにヤコブが生まれ、16 ヤコブにマリヤの夫ヨセフが生まれた。キリストと呼ばれるイエスはこのマリヤからお生まれになった。」([新改訳])となっており、マリヤの夫ヨセフの父はヤコブです。これはヨセフの父をヘリとするルカの記述とは異なってしまいます。これはヘリがマリヤの実父であり(つまりヨセフの義父)、ルカはマリヤの側の家系図を記述したから、と考えられています。

またルカの系図に特徴的なのは、マタイの家系図がユダヤ民族の父祖にあたるアブラハムから下ったのに対し、ルカの家系図は最後の第38節のところで「カイナンはエノスの息子、エノスはセツの息子、セツはアダムの息子、アダムは神さまの息子でした。」とアダムと神さまにまで到達させているところです。マタイの福音書はユダヤ人向けに書かれた福音書と考えられているので、イエスさまの家系図をユダヤ民族の父祖のアブラハムから下らせて、途中にダビデを登場させ、イエスさまが旧約聖書に約束された正当なダビデの血筋の王であることを説明しているのでしょう。

一方ルカの福音書は異邦人(外国人)にあてて書かれた福音書と考えられているので、家系図は最初の人間であるアダムにまで遡らせ、イエスさまが神さまの期待と愛情を注がれて一番最初に創造された人間のスタート地点へと通じる様子を明らかにし、神さまが「Genesis(創世記」)の第3章で蛇に語った預言が、いよいよイエスさまを通じて実現するのだとほのめかしているのかも知れません。 神さまが蛇に語った預言とは、Genesis 3:14-15(創世記第3章第14節~第15節)のことです。「14 神である主は蛇に仰せられた。「おまえが、こんな事をしたので、おまえは、あらゆる家畜、あらゆる野の獣よりものろわれる。おまえは、一生、腹ばいで歩き、ちりを食べなければならない。15 わたしは、おまえと女との間に、また、おまえの子孫と女の子孫との間に、敵意を置く。彼は、おまえの頭を踏み砕き、おまえは、彼のかかとにかみつく。」([新改訳])。ここに登場する蛇は、神さまによって天から追放され、地上に落とされた高位の天使サタンと解釈されます。蛇はアダムの妻のエバをそそのかして、アダムとエバに人類最初の「罪」を犯させることに成功しました。結果として人間は汚(けが)れ、神聖な神さまから切り離されてしまったのです。ところが神さまはその蛇に対してエバの子孫が蛇の頭を踏み砕くだろう、と最終的にはサタンの計画は失敗するのだと予告するのです。この預言を十字架死の形で成就したのがイエスさまです。






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