ヨハネの福音書第18章第28節~第40節:ピラトによるイエスさまの裁判ヨハネの福音書第18章第1節~第14節:イエスさまが裏切られて捕らえられる、大祭司の館でのイエスさま

2015年09月13日

ヨハネの福音書第18章第15節~第27節:ペテロの最初の否定、大祭司がイエスさまを尋問する、ペテロの二度目と三度目の否定

第18章



(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


Peter’s First Denial

ペテロの最初の否定


15 Simon Peter followed Jesus, as did another of the disciples. That other disciple was acquainted with the high priest, so he was allowed to enter the high priest’s courtyard with Jesus.

15 シモン・ペテロはイエスさまについて行きました。弟子のもう一人もついて行きました。その弟子は大祭司の知り合いだったので、イエスさまと共に大祭司邸の中庭に入ることを許されました。

16 Peter had to stay outside the gate. Then the disciple who knew the high priest spoke to the woman watching at the gate, and she let Peter in.

16 ペテロは門の外にとどまらなければなりませんでした。大祭司の知り合いの弟子が門を見張っていた女性に話をすると女性はペテロを入れてくれました。

17 The woman asked Peter, “You’re not one of that man’s disciples, are you?”  “No,” he said, “I am not.”

17 その女性がペテロにたずねました。「あなたはあの男の弟子の一人ではないでしょうね。」 ペテロは言いました。「いいえ。私は違います。」

18 Because it was cold, the household servants and the guards had made a charcoal fire. They stood around it, warming themselves, and Peter stood with them, warming himself.

18 寒かったので邸のしもべたちや警備役人たちは炭火をおこしました。彼らはそのまわりに立って暖を取っていました。ペテロも彼らといっしょに立って暖を取りました。



The High Priest Questions Jesus

大祭司がイエスさまを尋問する


19 Inside, the high priest began asking Jesus about his followers and what he had been teaching them.

19 中では大祭司がイエスさまに弟子たちのことやイエスさまが弟子たちに教えていたことについて尋問を始めました。

20 Jesus replied, “Everyone knows what I teach. I have preached regularly in the synagogues and the Temple, where the people gather. I have not spoken in secret.

20 イエスさまは答えました。「私が何を教えているかはみなが知っています。私は人が集まる会堂や寺院でいつも教えていたのです。隠れて話したことはありません。

21 Why are you asking me this question? Ask those who heard me. They know what I said.”

21 なぜあなたは私にこの質問をするのですか。私の話を聞いた人たちにきいてください。彼らは私が話した事を知っています。」

22 Then one of the Temple guards standing nearby slapped Jesus across the face. “Is that the way to answer the high priest?” he demanded.

22 そばに立っていた警備役人のひとりが平手でイエスさまを打ちました。彼はたずねました。「それが大祭司に対する答え方か。」

23 Jesus replied, “If I said anything wrong, you must prove it. But if I’m speaking the truth, why are you beating me?”

23 イエスさまは答えました。「もし私が何か間違ったことを言ったのなら、あなたはそれを証明しなければなりません。ですがもし私が正しいことを話しているとしたら、なぜあなたは私を打つのですか。」

24 Then Annas bound Jesus and sent him to Caiaphas, the high priest.

24 アンナスはイエスさまを縛りあげ、大祭司カヤパのところへ送りました。



Peter’s Second and Third Denials

ペテロの二度目と三度目の否定


25 Meanwhile, as Simon Peter was standing by the fire warming himself, they asked him again, “You’re not one of his disciples, are you?”  He denied it, saying, “No, I am not.”

25 その頃シモン・ペテロが火のそばに立って暖を取っていると、人々は再び彼にたずねました。「あなたはあの男の弟子の一人ではないでしょうね。」 ペテロはそれを否定して言いました。「いいえ私は違います。」

26 But one of the household slaves of the high priest, a relative of the man whose ear Peter had cut off, asked, “Didn’t I see you out there in the olive grove with Jesus?”

26 しかし大祭司のしもべのひとりで、ペテロが耳を切り落とした人の親類の人がききました。「私はオリーブの木立であなたがイエスと一緒にいるのを見かけなかったでしょうか。」

27 Again Peter denied it. And immediately a rooster crowed.

27 ペテロはもう一度否定しました。するとその直後におんどりが鳴きました。




ミニミニ解説

ヨハネの第18章です。

前回、ゲッセマネと呼ばれるエルサレムの東側にあるオリーブの木立でイエスさまが逮捕されました。イエスさまを捕らえたローマ兵や寺院の警備役人たちはイエスさまを縛りあげ、最初に大祭司カヤパの義父のアンナスのところへ連れて行きました。アンナスはカヤパがローマ帝国から大祭司に指名される前に大祭司を務めていた人です。

大祭司の家は高い壁に囲まれた屋敷で、中庭では火を焚いて暖が取れるようになっていました。第15節、ペテロともう一人の弟子が捕らえられたイエスさまの後についていきます。イエスさまを助けようとするでもなく、かと言って逃げ去るでもなく、引き立てられていくイエスさまの後ろからコソコソとついていきました。

ここで「もう一人の弟子」と書かれているのは、ガリラヤの漁師ゼベダイの息子でヤコブと兄弟のヨハネであり、このヨハネがヨハネの福音書を記したと言うのが通説です。が、ガリラヤ地方の漁師のヨハネが富裕階級の大祭司と知り合いというのには違和感があります。この弟子はこの場面の他にもヨハネの福音書の何カ所かに登場しています。そして最後にこの福音書を記したのは自分です、と書いています(名前は名乗りません)。最近はイエスさまの弟子の中にゼベダイの息子のヨハネとは別の、若いヨハネがいたのではないか、という説が支持されているようです。

この「もう一人の弟子」は大祭司と知り合いであるが故に大祭司邸の中庭へ入ることを許されました。さらにそのコネを利用して「もう一人の弟子」は外にいたペテロを大祭司邸の中に招き入れることに成功します。ところがあろうことかペテロは門番をしていた女性から「あなたはイエスの弟子ではないですか?」とたずねられます。ドキリとしたペテロは第17節で「いいえ、違います。」と、自分とイエスさまとの関係を否定します。ペテロは第18節では他の人たちに混じって火にあたっています。

第19節~第24節がアンナスによる尋問の記述です。そして第24節でアンナスはイエスさまをカヤパのところへ送った、とあります。共観福音書の記述と総合すると、イエスさまは最初にアンナスの元に送られ、アンナスは夜中のうちにイエスさまを尋問します。これは非公式な予備審問の位置づけです。そして夜が明けると同時に正式なサンヘドリンの最高議会が開かれ、ここでは大祭司カヤパを議長としてイエスさまに正式に有罪を宣告し、イエスさまをローマ総督ピラトへと引き渡すのです。 ヨハネの福音書では大祭司カヤパによる審議の様子は記述されていません。

第25節から書かれているのは、ペテロによる二度目と三度目の否定です。ペテロは都合三回にわたってイエスさまとの関係をたずねられ、すべてについてそれを否定しました。イエスさまを三回否定したときペテロはおんどりの声を聞きます。これはヨハネの第13章でイエスさまから言われていたことです。John 13:36-38(ヨハネの福音書第13章第36節~第38節)です。「36 シモン・ペテロがイエスに言った。「主よ。どこにおいでになるのですか。」イエスは答えられた。「わたしが行く所に、あなたは今はついて来ることができません。しかし後にはついて来ます。」 37 ペテロはイエスに言った。「主よ。なぜ今はあなたについて行くことができないのですか。あなたのためにはいのちも捨てます。」 38 イエスは答えられた。「わたしのためにはいのちも捨てる、と言うのですか。まことに、まことに、あなたに告げます。鶏が鳴くまでに、あなたは三度わたしを知らないと言います。」([新改訳])。

ペテロにとってイエスさまは自分の師であり、旧約聖書が約束する救世主だと信じた人です。ペテロはそのイエスさまが捕らえられ、尋問を受けている間には近くにいて火にあたって暖を取り、三度に渡って自分とイエスさまの関係を否定しました。そのときにおんどりの鳴く声を聞き、ペテロの脳裏にイエスさまから言われた言葉がよみがえります。恐らくペテロは大変な自己嫌悪と卑下の念におそわれたことでしょう。他の福音書ではここでペテロが激しく泣いて走り去る様子が書かれています。

たとえばイエスさまはMatthew 10:32-33(マタイの福音書第10章第32節~第33節)で、「32 ですから、わたしを人の前で認める者はみな、わたしも、天におられるわたしの父の前でその人を認めます。33 しかし、人の前でわたしを知らないと言うような者なら、わたしも天におられるわたしの父の前で、そんな者は知らないと言います。」([新改訳])と言っています。イエスさまが旧約聖書に約束された救世主であり、神さまの元から来た存在であると、たとえ私たちがひっそりと心の中で信じていたとしても、他の人の前でそれを恥じてイエスさまを知らないと否定するようなら、そんな人は自分も父なる神さまに対して取りなしをするようなことをしない、と言っているのです。

ペテロはここで公然と他の人の前で三回もイエスさまを否定してしまいましたから、イエスさまが語った基準に満たないことになりました。父なる神さまの前で拒絶されても当然の状態です。聖書によれば人間が肉体の死を迎えるとき、肉体を離れた魂が行く先は二つ、神さまのいる天国か、サタンの投げ込まれるのと同じ火の池へ投げ込まれるか、のどちらかです。ペテロはイエスさまから拒絶されてしまうのですから、これで天国への道が閉ざされるのではないかと思われます。しかし実際はどうでしょうか。イエスさまは死後復活すると再度ペテロの前に現れて、自分の罪を悔い改めて自分のために働くようにと話します。その後イエスさまが天に戻り、聖霊を受けたペテロが福音を伝える様はまるで別人のようです。イエスさまは神聖なる神さまなので「正しさ」について妥協はありません。「正しいこと」と「悪いこと」は明確に区別します。しかし「悪いこと」をした人間の側に自分の罪を認めて悔い改めようという気持ちがある限り、イエスさまに許せない罪はないのです。






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