ヨハネの福音書第13章第31節~第38節:イエスさまがペテロの拒絶を予告するヨハネの福音書第13章第1節~第17節:イエスさまが弟子たちの足を洗う

2015年09月18日

ヨハネの福音書第13章第18節~第30節:イエスさまが裏切りを予告する

第13章



(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


Jesus Predicts His Betrayal

イエスさまが裏切りを予告する


18 “I am not saying these things to all of you; I know the ones I have chosen. But this fulfills the Scripture that says, ‘The one who eats my food has turned against me.’

18 私はこれらのことを、あなた方全員に言っているのではありません。私は自分が選んだ者たちを知っています。しかしこのことが、聖書に『私の食べ物を食べる者が、私にそむいた。』と書かれている部分を成就させるのです。

19 I tell you this beforehand, so that when it happens you will believe that I Am the Messiah.

19 私はこのことをあらかじめあなた方に言っておきます。そうすれば、それが起こるとき、あなた方は私が救世主だと信じるでしょう。

20 I tell you the truth, anyone who welcomes my messenger is welcoming me, and anyone who welcomes me is welcoming the Father who sent me.”

20 あなた方に本当のことを言います。私が遣わす者を歓迎する者は私を歓迎しているのです。そして私を歓迎する者は私を遣わした父を歓迎しているのです。」

21 Now Jesus was deeply troubled, and he exclaimed, “I tell you the truth, one of you will betray me!”

21 それからイエスさまは深く苦しんで、声を大きくしました。「あなた方に本当のことを言います。あなた方の一人が私を裏切ります。」

22 The disciples looked at each other, wondering whom he could mean.

22 弟子たちは、イエスさまが誰のことを言ったのかと思いめぐらして、互いに顔を見合わせました。

23 The disciple Jesus loved was sitting next to Jesus at the table.

23 イエスさまが愛していた弟子がテーブルでイエスさまの隣に座っていました。

24 Simon Peter motioned to him to ask, “Who’s he talking about?”

24 シモン・ペテロがその弟子に、「イエスさまが誰のことを言っているのか」、たずねるようにと合図を送りました。

25 So that disciple leaned over to Jesus and asked, “Lord, who is it?”

25 そこでその弟子はイエスさまの方へもたれかかり、たずねました。「主よ、それは誰ですか。」

26 Jesus responded, “It is the one to whom I give the bread I dip in the bowl.” And when he had dipped it, he gave it to Judas, son of Simon Iscariot.

26 イエスさまは答えました。「それは私がパンを鉢に浸して与える者です。」 それからイエスさまはパンを浸し、それをイスカリオテ・シモンの子ユダに与えました。

27 When Judas had eaten the bread, Satan entered into him. Then Jesus told him, “Hurry and do what you’re going to do.”

27 ユダがそのパンを食べると、サタンが彼に入りました。そこでイエスさまはユダに言いました。「急ぎなさい。あなたがしようとしていることをしなさい。」

28 None of the others at the table knew what Jesus meant.

28 テーブルに着いている他の者たちはイエスさまが何を言っているのか、わかりませんでした。

29 Since Judas was their treasurer, some thought Jesus was telling him to go and pay for the food or to give some money to the poor.

29 ユダは弟子たちの会計係だったので、イエスさまが食べ物の支払いに行くように、あるいは貧しい人々にいくらかのお金を与えるように、言ったと考えた者もいました。

30 So Judas left at once, going out into the night.

30 そこでユダはすぐに夜の中へ出て行きました。




ミニミニ解説

ヨハネの第13章です。

前回のイエスさまが弟子たちの足を洗う場面に続く、最後の晩餐の場面です。

第18節、イエスさまは、自分が弟子たちの足を洗って手本を示した話は、テーブルに着いている全員に対して話しているのではないと言います。実は弟子たちの中には「例外」の人物が含まれていて、さらにその人がテーブルに着いているのにも理由があり、それは旧約聖書に書かれている『私の食べ物を食べる者が、私にそむいた。』の預言を成就させるためだと言います。旧約聖書の引用箇所は、Psalms 41:9(詩編第41章第9節)で、ダビデ王が自分の敵について読んだ歌の中で「私が信頼し、私のパンを食べた親しい友までが、私にそむいて、かかとを上げた。」([新改訳])と記述されている部分のことです。

第19節、イエスさまがこのことをあらかじめ言うのは、それによってイエスさまが救世主であると信じられるようにだと言います。これはつまり十二使徒の中から裏切り者が出るという最悪の事態は、旧約聖書にこのように予告されていた出来事の成就であり、近くの者から裏切り者が出たことが逆にイエスさまを救世主として証明することになるという意味でしょう。

第21節でイエスさまは苦しみながらもはっきりと、「あなた方の一人が私を裏切ります」とショッキングな発言をします。

第22節、弟子たちはイエスさまが何を言い出すのか、それは誰のことなのかと互いの顔を見合わせます。

第23節に「イエスさまが愛していた弟子が、テーブルでイエスさまの隣に座っていました。」と書かれている「イエスさまが愛していた弟子」ですが、この弟子はこの後ところどころに登場します。そしてヨハネの一番最後、John 21:24(ヨハネの福音書第21章第24節)には、「これらのことについてあかしした者、またこれらのことを書いた者は、その弟子である。そして、私たちは、彼のあかしが真実であることを、知っている。」([新改訳])とあります。 この「イエスさまが愛していた弟子」はガリラヤの漁師ゼベダイの息子でヤコブと兄弟のヨハネであると言うのが長く通説でしたが、別の説もあります。

第24節、イエスさまから席が離れているペテロは、この弟子に(恐らくこっそりと)合図を送って、「誰のことを言われているのか、イエスさまから聞き出せ」と指令を出します。使徒たちの中では恐らくペテロが年長でリーダー的役割を果たしてきていて、兄貴格のペテロが若い弟子に指令を送ったのです。

それで第25節、この弟子がイエスさまにたずねます。「主よ、それは誰ですか。」 このときこの弟子はイエスさまにもたれかかっていますが、当時の食事のスタイルというのは食卓を中心に囲んで、みなで腹ばいに寝っ転がるような形で食べていたようですので、イエスさまの隣で腹ばいになっていた弟子が少し頭をイエスさまの方へ傾けた感じでしょう。

第26節で、イエスさまは「それは私がパンを鉢に浸して与える者です。」と答えます。この答は恐らくイエスさまの顔の近くへ自分の頭を寄せているこの弟子にしか聞こえません。「パンを鉢に浸して与える」という行為ですが、イエスさまは言うまでもなく弟子たちの師としてこのテーブルの主役です。当時はテーブルの主役格の人が自分のパンを裂いて鉢のソースに浸し、それを客たちに渡す形でふるまうのは普通で、この行為は渡された人が客の中から特別に選ばれるような光栄な場面なのでした。そしてイエスさまは自分のパンを鉢に浸し、それをイスカリオテのユダに与えました。これで少なくともこの弟子には、イエスさまが言った「裏切り者」がユダであることがわかりました。この弟子がすぐにその場で何かの合図を送ってペテロに伝えたのか、それが食事の後になってしまったのか、ここには書かれていません。

第27節、「ユダがそのパンを食べると、サタンが彼に入りました。」とあります。つまりサタンは「人に入れる」のです。何度か説明していますが、サタンはもともとは位の高い天使でしたが、神さまの地位へ昇ろうとする野望を持ったことで神さまによって天から地上へ落とされました。このときにサタンに味方した天使の数はすべての天使の1/3に上り、この天使たちもサタンと共に地上に落とされて悪魔・悪霊となりました。

神さまや天使は私たち人間のような肉体を持たず、「霊(spirit)」と呼ばれる存在です。人間は「肉体(flesh)」に「魂(soul)」が宿った存在で、「霊」であるサタンや悪魔は人間の肉体に入って憑依し、人間に様々な影響を及ぼすことができるのです。聖書の中にも悪霊に取り憑かれる人間がたくさん登場します。

一方イエスさまが十字架死を経て復活し、約40日程地上に滞在してから天に戻ると、イエスさまがかねてから約束していたとおり、イエスさまの代わりとして「聖霊(Holy Spirit)」が信者たちに訪れます。そして「聖霊」はイエスさまを信じる者、ひとりひとりに宿りますが、これもやはり聖なる霊が人間に憑依しているのです。父なる神さま、子なるイエスさま、そして聖霊の三つは、三位一体(Trinity)と言って、三つの相を持ちながら、一つの神さまなので、自分の肉体に聖霊を宿すクリスチャンは身体の中に神さまを持っていることになります。さてこの場面でユダの中に入ったのは、サタンと共に天を追われた悪魔や悪霊ではなく、首領のサタン本人です。

ユダは人間ですから、自分にサタンが憑依したことには気づいていないでしょう。ユダは使徒たちの中でお金を管理する会計係をしていて、その中から自分のための金を盗んでいたと福音書に書かれています。ユダがイエスさまに対してどのような気持ちを抱いていたのか、どうしてイエスさまを裏切ったのか、そこには諸説があり、どれも推察の域を出ないので真実はわかりませんが、ユダには少なくともサタンの侵入を許す心の隙があったのです。

聖書は「誘惑と戦うな。誘惑からは逃げなさい。」と書いています。自分は自分の欲望や感情をコントロールできる、そう考えて誘惑と戦おうとする人は最後には負けてしまう、だから誘惑とは戦わないで一目散に逃げなさいと教えています。ユダは自分の心の中にある何かの欲望を捨てずに育て上げ、それを仲間から隠していたのでした。サタンはそういう人間の心の闇につけ込むのです。また聖書には「世の中に光が現れたとき、人々は光よりも闇を愛した。」とも書かれています。どんな人にも心の闇はあります。自分の前に光が現れたとき、闇と決別して光に向かうか、光よりも闇を愛するか、それを選ぶのは人間です。ユダはイエスさまと出会った後も、光に向かうことよりも闇の中にとどまることを選んでやはりサタンにつけいる隙を与えたのです。

第27節の続きで、イエスさまがユダに「急ぎなさい。あなたがしようとしていることをしなさい。」と告げると、ユダは夜の闇の中へと出ていきます。






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