2015年09月29日
ヨハネの福音書第2章第1節~第12節:カナの婚礼
第2章
(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)
The Wedding at Cana
カナの婚礼
1 The next day there was a wedding celebration in the village of Cana in Galilee. Jesus’ mother was there,
1 次の日、ガリラヤ地方のカナの村で婚礼があり、イエスさまの母がそこにいました。
2 and Jesus and his disciples were also invited to the celebration.
2 イエスさまと弟子たちも、その婚礼に招かれていました。
3 The wine supply ran out during the festivities, so Jesus’ mother told him, “They have no more wine.”
3 お祝いの途中で、ぶどう酒がなくなったので、イエスさまの母がイエスさまに言いました。「もうぶどう酒がありません。」
4 “Dear woman, that’s not our problem,” Jesus replied. “My time has not yet come.”
4 イエスさまが答えて言いました。「ご婦人、それは私たちの問題ではありません。私の時はまだ来ていないのです。」
5 But his mother told the servants, “Do whatever he tells you.”
5 だがイエスさまの母は手伝いの人たちに言いました。「この人があなた方に言うことを、何でもしてあげてください。」
6 Standing nearby were six stone water jars, used for Jewish ceremonial washing. Each could hold twenty to thirty gallons.
6 すぐ近くに石の水がめが六つ置いてありました。ユダヤ人の清めの儀式のためのものです。それぞれの水がめに80~120リットルは入ります。
7 Jesus told the servants, “Fill the jars with water.” When the jars had been filled,
7 イエスさまは手伝いの人たちに言いました。「水がめに水を満たしなさい。」水がめがいっぱいになると、
8 he said, “Now dip some out, and take it to the master of ceremonies.” So the servants followed his instructions.
8 イエスさまは言いました。「さあ、いくらかくみ出しなさい。そしてそれを宴会の主人のところへ持って行きなさい。」そこで手伝いの人たちはイエスさまの指示に従いました。
9 When the master of ceremonies tasted the water that was now wine, not knowing where it had come from (though, of course, the servants knew), he called the bridegroom over.
9 宴会の主人が水を味わうと、それがぶどう酒に変わっていたので、それがどこから来たのか知らなかったので(もちろん、手伝いの者たちは知っていましたが)、花婿を呼び寄せました。
10 “A host always serves the best wine first,” he said. “Then, when everyone has had a lot to drink, he brings out the less expensive wine. But you have kept the best until now!”
10 主人は言いました。「主催者はいつも最良のぶどう酒を最初に出すものだ。やがてみなが十分飲んだころになると、やや値打ちの低いぶどう酒を出してくる。だがあなたは最上のものを今の時点まで取っておいたのですね。」
11 This miraculous sign at Cana in Galilee was the first time Jesus revealed his glory. And his disciples believed in him.
11 ガリラヤ地方のカナで行われたこの奇跡のしるしは、イエスさまがご自分の栄光を現わされた最初のことでした。弟子たちはイエスさまを信じました。
12 After the wedding he went to Capernaum for a few days with his mother, his brothers, and his disciples.
12 婚礼の後でイエスさまは母や兄弟たちや弟子たちといっしょにカペナウムに行き、数日滞在しました。
ミニミニ解説
ヨハネの第2章です。
第2章はカナの村から始まります。カナはガリラヤ湖の西、20kmあたりにあったとされます。 第1章はベタニヤと言うエルサレムから東へ15kmほどの場所からスタートしました。イスラエルの南部のユダヤ地方です。イエスさまはユダヤ地方で最初の弟子と出会った後、それから北へ100kmほどの旅をしてカナの村に到達したことになります。
そのカナの村で婚礼が行われます。イエスさまの時代のユダヤ人の結婚は、長いときには一週間にも及ぶお祭りだったそうで、婚礼の期間の間、新郎新婦の門出を祝うためにたくさんの来賓が訪れます。町や村で婚礼があると往々にして町全体の人が招かれるのだそうで、町中から誰もがお祝いに来るわけです。逆に招かれているのにお祝いに出向かないことはしきたりに反し、侮辱行為と受け取られてしまいます。
婚礼はそれだけの期間にわたって大勢の人をもてなす、共同体の中で重要な意味を持つ儀式なのですから、婚礼の祝宴の計画は周到に立てなければなりません。だとすると途中でぶどう酒が切れてしまうという事態は、「あら、ぶどう酒がきれちゃったわ。」というような、ちょっとした困り事レベルの出来事ではないはずで、イエスさまの母親(つまりマリヤ)が、この婚礼を催す家とどういう関係にあったのかは明らかではありませんが、主催者はユダヤのしきたり違反、あるいは律法違反とさえ言われかねないほどの大変困難な局面に立たされていたことになります。
第11節によるとイエスさまが水をぶどう酒に変えた出来事は、イエスさまの最初の奇跡だったとのことですから、第3節でマリヤが「もうぶどう酒がありません。」と言ったときには、イエスさまに奇跡を求めていたのではないはずです。自分の息子に、この困難な局面を打開する方法は何かないだろうかと相談したのでしょう。
第4節、これに対するイエスさまの答は「ご婦人、それは私たちの問題ではありません。私の時はまだ来ていないのです。」となっていて、自分には関係のない話だとマリヤを冷たく突き放す答になっています。ですがイエスさまが行動を起こすのは、第5節のマリヤの言葉、「この人があなた方に言うことを、何でもしてあげてください。」を受けてのことです。これは福音書でよく見かけるパターンで、イエスさまや神さまを象徴する人が、依頼を受けて最初に「ノー」と言ったとしても、依頼者がしつこく頼み続けるとか、ひるまずに信仰を表明することで願いが叶えられるケースがたびたび登場します。突き放されたはずのマリヤが、それがまったく聞こえなかったかのように「この人があなた方に言うことを、何でもしてあげてください。」と使用人に指示を出すのを聞き、イエスさまはマリヤが全面的にイエスさまを信頼しているのだとくみ取って行動を起こしたのかも知れません。
第7節、イエスさまの指示は「水がめに水を満たしなさい。」でした。ここに登場する六つの巨大な水がめはユダヤの清めの儀式に使われていたもののようです。当時のユダヤ人は、日常生活で様々な「不浄」なものに触れることで自分も汚(けが)れてしまうと考えていたので、飲食の前に自分の手に水をかけて清める他、外出の後では全身を清めるなど、とにかく生活に大量の清めの水を要しました。
第8節~第10節、水がめからくみ出された水は最良のぶどう酒に変わり、婚礼の祝宴の主催者の危機は回避され、それどころか主催者は最良のぶどう酒が出て来たことに喜びます。
第11節、弟子たちはこの奇跡を目にしてイエスさまを信じました。
第12節、カナでの婚礼の後、イエスさまの一行はガリラヤ湖北岸の町、カペナウムへ移動します。カペナウムはイエスさまがガリラヤ地方で行った伝道活動の中心地になります。イエスさまの一行にはイエスさまの母マリヤとイエスさまの兄弟たちが含まれています。イエスさまの兄弟とはマリヤとヨセフの子供です。つまりマリヤは処女懐胎でイエスさまを地上に送り出した後でヨセフとの間に子供を持ったということです。福音書にはイエスさまには四人の弟と数人の妹がいたと書かれています。特別な記述がありませんが、マリヤの夫のヨセフはこの時点ではすでに死んでいたとの説があります。婚礼に招かれれば夫婦で列席するのがマナーであるはずなのに、ここにはヨセフについての言及がなく、マリヤは問題の解決を夫ではなく長男のイエスさまに頼んでいることがその説の根拠のようです。
english1982 at 22:00│ヨハネの福音書