2015年08月09日

使徒の働き第23章第1節~第11節:最高議会の前のパウロ(続き)

第23章




(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


1 Gazing intently at the high council, Paul began: “Brothers, I have always lived before God with a clear conscience!”

1 パウロは最高議会を力強く見つめると話し始めました。「兄弟たち、私は澄み切った良心をもって神さまの前に生きてきました。」

2 Instantly Ananias the high priest commanded those close to Paul to slap him on the mouth.

2 即座に大祭司のアナニヤは、パウロの近くにいる人たちにパウロの口を叩くように命じました。

3 But Paul said to him, “God will slap you, you corrupt hypocrite! What kind of judge are you to break the law yourself by ordering me struck like that?”

3 しかしパウロはアナニヤに言いました。「堕落した偽善者、神さまがあなたを叩くでしょう。あなた自身が律法に背いてそのように私を叩くように命じるとは、あなたはいったいどんな裁判官なのですか。」

4 Those standing near Paul said to him, “Do you dare to insult God’s high priest?”

4 パウロの近くに立っている人たちがパウロに言いました。「あなたは神さまの大祭司を侮辱しようというのですか。」

5 “I’m sorry, brothers. I didn’t realize he was the high priest,” Paul replied, “for the Scriptures say, ‘You must not speak evil of any of your rulers.’”

5 パウロが答えました。「すみません、兄弟たち。私は彼が大祭司だとは知りませんでした。聖書には『あなたの統治者の誰についても悪口を言ってはいけない』と書いてあります。」

6 Paul realized that some members of the high council were Sadducees and some were Pharisees, so he shouted, “Brothers, I am a Pharisee, as were my ancestors! And I am on trial because my hope is in the resurrection of the dead!”

6 パウロは最高議会の何名かがサドカイ派で、何名かがファリサイ派であると気づきました。そこでパウロは叫びました。「兄弟たち、私は私の先祖がそうだったようにファリサイ派です。そして私は私の望みが死者の復活にあるという理由で裁かれているのです。」

7 This divided the council -- the Pharisees against the Sadducees --

7 これで議会が割れました。ファリサイ派とサドカイ派の対立になりました。

8 for the Sadducees say there is no resurrection or angels or spirits, but the Pharisees believe in all of these.

8 それはサドカイ派が復活も天使も霊もないと言い、ファリサイ派はこれらすべてを信じているからです。

9 So there was a great uproar. Some of the teachers of religious law who were Pharisees jumped up and began to argue forcefully. “We see nothing wrong with him,” they shouted. “Perhaps a spirit or an angel spoke to him.”

9 騒ぎはますます大きくなりました。ファリサイ派の律法の教師たちが何名か立ち上がり、強烈に論じ始めました。彼らは叫びました。「私たちはこの人に何の悪い点も見いださない。おそらく霊か天使が彼に語りかけたのだ。」

10 As the conflict grew more violent, the commander was afraid they would tear Paul apart. So he ordered his soldiers to go and rescue him by force and take him back to the fortress.

10 口論がさらに激しくなると指揮官は彼らがパウロを引き裂いてしまうのではないかと恐れました。そこで指揮官は兵たちに、行ってパウロを力ずくで救出し、要塞に連れ戻るようにと命じました。

11 That night the Lord appeared to Paul and said, “Be encouraged, Paul. Just as you have been a witness to me here in Jerusalem, you must preach the Good News in Rome as well.”

11 その夜、主がパウロに現れて言いました。「勇気を出しなさい、パウロ。あなたがここエルサレムで私のことを証言したように、あなたはローマでも良い知らせを伝えなければなりません。」




ミニミニ解説

「使徒の働き」の第23章です。

第3回目の伝道旅行を終えたパウロはエルサレムに戻り、エルサレムの教会でヤコブと長老たちに旅の報告をしました。パウロはそこでヤコブたちから、パウロが律法に背くように人々に教える背信者であるとの噂が流れていると聞かされます。パウロはヤコブたちの提案に従い、ナジル人の誓願を立てていた他の四人と共に、寺院で清めといけにえを捧げる儀式に参加して、自分がユダヤの律法を遵守することをアピールしようと試みますが、寺院でパウロを目撃したアジヤ州から来たユダヤ人が暴動を扇動し、これがエルサレム中を巻き込む騒ぎへと発展しました。パウロは危うく殺されかける寸前に、報告を聞いて駆けつけたローマ帝国軍の指揮官に命を救われました。

指揮官は祭司長たちに最高議会を開くように要請し、今回、パウロはユダヤの最高議会であるサンヘドリンの前に立ちました。

サンヘドリンは初期のキリスト教をどのようにとらえていたのでしょうか。第5章ではペテロたちが逮捕され、サンヘドリンの前に立ちました。そのときにファリサイ派でパウロを教育したガマリエルが発言しています。Acts 5:29-40(使徒の働き第5章第29節~第40節)です。

「29 ペテロをはじめ使徒たちは答えて言った。「人に従うより、神に従うべきです。30 私たちの父祖たちの神は、あなたがたが十字架にかけて殺したイエスを、よみがえらせたのです。31 そして神は、イスラエルに悔い改めと罪の赦しを与えるために、このイエスを君とし、救い主として、ご自分の右に上げられました。32 私たちは{彼にあって}そのことの証人です。神がご自分に従う者たちにお与えになった聖霊もそのことの証人です。」 33 彼らはこれを聞いて怒り狂い、使徒たちを殺そうと計った。34 ところが、すべての人に尊敬されている律法学者で、ガマリエルというパリサイ人が議会の中に立ち、使徒たちをしばらく外に出させるように命じた。35 それから、議員たちに向かってこう言った。「イスラエルの皆さん。この人々をどう扱うか、よく気をつけてください。36 というのは、先ごろチゥダが立ち上がって、自分を何か偉い者のように言い、彼に従った男の数が四百人ほどありましたが、結局、彼は殺され、従った者はみな散らされて、あとかたもなくなりました。37 その後、人口調査のとき、ガリラヤ人ユダが立ち上がり、民衆をそそのかして反乱を起こしましたが、自分は滅び、従った者たちもみな散らされてしまいました。38 そこで今、あなたがたに申したいのです。あの人たちから手を引き、放っておきなさい。もし、その計画や行動が人から出たものならば、自滅してしまうでしょう。39 しかし、もし神から出たものならば、あなたがたには彼らを滅ぼすことはできないでしょう。もしかすれば、あなたがたは神に敵対する者になってしまいます。」彼らは彼に説得され、40 使徒たちを呼んで、彼らをむちで打ち、イエスの名によって語ってはならないと言い渡したうえで釈放した。」([新改訳])。

ここに登場するチゥダやガリラヤ人ユダはこの時代に起こった武装蜂起のリーダーたちです。これを読んでわかるのは「サンヘドリン」と一言で言っても、構成員の議員ひとりひとりは別々の考えを持つ人たちで、このときにはガマリエルが、もしかしたらキリスト教が神さまから出てきたものかも知れないとまで言って、ペテロたちを殺そうとする計画を阻止する側に回っています。しかし今回はどうでしょうか。パウロが伝道旅行先で引き起こした数々の騒動や、今回、エルサレム全体を巻き込むこととなった騒動については少なからずサンヘドリンにも情報が届いているはずで、ローマ帝国による支配を受ける属領としては、ローマとの関係を良好なものとするため、このような騒動はできるかぎり避けたいと考えていることでしょう。

第1節で、パウロが自分は澄み切った良心をもって神さまと共に歩んできたとスピーチを始めると、第2節で即座に大祭司がパウロの口を打つように命じます。自分がこれから裁かれようとしている宗教裁判の場所で、神さまの名前を出してこのようなことを堂々とサンヘドリンの前で言う行為は、それだけで神さまに対する冒涜にあたるというのが大祭司の行動の理由でしょうか。

第3節ではパウロも一歩も引かずにユダヤの権威の頂点にある大祭司を偽善者と呼んだ上で、判決が出る前に人を多くの人の前で打たせることこそ律法違反である、と論じます。

パウロが第5節で、聖書には『あなたの統治者の誰についても悪口を言ってはいけない』と書いてあると言っているのは、Exodus 22:28(出エジプト記第22章第28節)の「神をのろってはならない。また、民の上に立つ者をのろってはならない。」([新改訳])のことだと思います。

パウロはサンヘドリンを前に大祭司を敵に回し、どうやら有罪の判決は免れないと考えたのか、議会を混乱へ陥れて状況を打開しようと試みます。なんとしたたかな人物なのでしょうか。パウロは議会の中にサドカイ派とファリサイ派が含まれていることに着目し、二つの派閥が決定的に対立する論点を唐突に持ち出します。

サドカイ派は主に祭司、大商人、貴族などの富裕層階級が母体の派閥ですが、旧約聖書の最初の5つの本、モーゼ五書と呼ばれる「Genesis(創世記)」「Exodus(出エジプト記)」「Levitecus(レビ記)」「Numbers(民数記)」「Deuteronomy(申命記)」しか律法の根拠として認めません。一方のファリサイ派は聖書とユダヤ文化についての専門教育を受けた教師を母体とする派閥で、預言書や歴史書、知恵の書を含む旧約聖書の全体はもちろんのこと、聖書の外側で主に長老たちによって伝承されてきた慣習法に至るまで、これらすべてに同じ権威があると考え、さらに自分たちだけがそのすべてを遵守することで神さまの目に正しく映っていると自負しています。

そしてサドカイ派は死者の復活を信じないのです。福音書ではサドカイ派の人が、夫と死別した女性が律法に沿って夫の兄弟と再婚した場合、その女性が死者から復活するときにはいったい誰の妻になるのか、とイエスさまに詰め寄りました。

第6節、パウロは自分は先祖代々ファリサイ派で、自分の希望が死者の復活にあることで裁かれている、と叫びます。これは嘘ではありません。クリスチャンはイエスさまの復活を信じ、そこに希望を持っているのです。パウロのこの一言で議会はサドカイ派対ファリサイ派の対立の場となり、議場は大混乱に陥ります。

第10節、ローマ帝国軍の指揮官はパウロが心配になり、兵たちに命じて救出させます。

第11節、イエスさまがパウロに現れて励まします。そしてパウロはローマで福音を伝えるように命じられます。



english1982 at 22:00│使徒の働き