使徒の働き:第21章使徒の働き第20章第1節~第12節:パウロがマケドニヤとギリシヤへ行く、パウロの最後のトロアス訪問

2015年08月12日

使徒の働き第20章第13節~第38節:パウロがエペソの長老たちに会う

第20章




(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


Paul Meets the Ephesian Elders

パウロがエペソの長老たちに会う


13 Paul went by land to Assos, where he had arranged for us to join him, while we traveled by ship.

13 パウロは陸路でアソスへ行き、私たちは船で行きましたが、パウロはアソスで私たちが合流できるようにあらかじめ手はずを整えていました。

14 He joined us there, and we sailed together to Mitylene.

14 パウロはアソスで私たちに合流し、共にミテレネまで航海しました。

15 The next day we sailed past the island of Kios. The following day we crossed to the island of Samos, and a day later we arrived at Miletus.

15 翌日、私たちはキヨス島を通り越しました。次の日、私たちはサモス島まで行き、その次の日にミレトに着きました。

16 Paul had decided to sail on past Ephesus, for he didn’t want to spend any more time in the province of Asia. He was hurrying to get to Jerusalem, if possible, in time for the Festival of Pentecost.

16 パウロはアジヤ州でそれ以上を時間を使いたくなかったのでエペソは通り越すと決めていました。パウロはエルサレムへと急いでいて、可能なら五旬節に間に合いたいと思っていました。

17 But when we landed at Miletus, he sent a message to the elders of the church at Ephesus, asking them to come and meet him.

17 ところがパウロがミレトに着くと、パウロはエペソの教会の長老たちに知らせを送り、パウロに会いに来るように頼みました。

18 When they arrived he declared, “You know that from the day I set foot in the province of Asia until now

18 長老たちが到着するとパウロは言いました。「みなさんがご存じの通り、私がアジヤ州に足を踏み入れた最初の日から今日に至るまで、

19 I have done the Lord’s work humbly and with many tears. I have endured the trials that came to me from the plots of the Jews.

19 私は謙虚に、そしてたくさんの涙と共に主の仕事を行ってきました。私はユダヤ人の策略によって私に降りかかった試練の数々に耐えました。

20 I never shrank back from telling you what you needed to hear, either publicly or in your homes.

20 あなた方が聞く必要のあることを語るにおいては、公の場所でも、あなた方の家でも決して尻込みしませんでした。

21 I have had one message for Jews and Greeks alike -- the necessity of repenting from sin and turning to God, and of having faith in our Lord Jesus.

21 私はユダヤ人にもギリシヤ人にも同じ一つの知らせを伝えました。それは罪を悔いること、神さまに向き直ること、そして私たちの主イエスさまに信仰を持つことです。

22 “And now I am bound by the Spirit to go to Jerusalem. I don’t know what awaits me,

22 いま私はエルサレムへ行くようにと霊に心を縛られています。何が私を待ち受けているか、私にはわかりません。

23 except that the Holy Spirit tells me in city after city that jail and suffering lie ahead.

23 ただわかっているのは、どの町へ行っても、聖霊が、牢と苦しみが待っていると、私に告げていることです。

24 But my life is worth nothing to me unless I use it for finishing the work assigned me by the Lord Jesus -- the work of telling others the Good News about the wonderful grace of God.

24 しかし私の人生は、主イエスさまが私に与えた仕事を完遂するために使うのでなければ、私には何の価値もありません。それは神さまの素晴らしい恵みについての良い知らせを他の人たちに伝える仕事です。

25 “And now I know that none of you to whom I have preached the Kingdom will ever see me again.

25 そしていま、私が王国について話したあなた方のうち、誰一人としてもう一度私に会うことがないと私は知っています。

26 I declare today that I have been faithful. If anyone suffers eternal death, it’s not my fault,

26 今日私は、私はずっと誠実であったと宣言します。もし誰かが永遠の死を受けることになっても、それは私の責任ではありません。

27 for I didn’t shrink from declaring all that God wants you to know.

27 それは、神さまがあなた方に知って欲しいと思うことのすべてを告げることにおいて、私は尻込みしなかったからです。

28 “So guard yourselves and God’s people. Feed and shepherd God’s flock -- his church, purchased with his own blood -- over which the Holy Spirit has appointed you as leaders.

28 ですからあなた方自身と神さまの人たちを見張りなさい。神さまの群れ、つまり神さまがご自身の血で買い取った神さまの教会に食べさせ、世話しなさい。聖霊がそのリーダーとしてあなた方を選んだのです。

29 I know that false teachers, like vicious wolves, will come in among you after I leave, not sparing the flock.

29 私が去ると、悪い狼のような偽りの教師たちがあなた方の中に入り込み、群れを殺さないではいません。

30 Even some men from your own group will rise up and distort the truth in order to draw a following.

30 あなた方自身の中からでさえ、信者たちを引き抜くために真実をねじ曲げる人たちが起こるでしょう。

31 Watch out! Remember the three years I was with you -- my constant watch and care over you night and day, and my many tears for you.

31 注意しなさい。私があなた方といた三年を思い出してください。夜も昼も、あなた方のためにたくさんの涙を流して、常にあなた方を見張り、世話をしてきたことを。

32 “And now I entrust you to God and the message of his grace that is able to build you up and give you an inheritance with all those he has set apart for himself.

32 いま私はあなた方を、神さまと、神さまの恵みの言葉に託します。神さまの言葉はあなた方を育て、神さまご自身ために取りおかれたすべての人たちと共に、あなた方に遺産を渡すことが出来るのです。

33 “I have never coveted anyone’s silver or gold or fine clothes.

33 私は誰かの金銀や衣服を欲しがったことはありません。

34 You know that these hands of mine have worked to supply my own needs and even the needs of those who were with me.

34 あなた方は、私のこの両手が、私自身の必要のために、さらには私と共にいた人たちのために働いたことを知っています。

35 And I have been a constant example of how you can help those in need by working hard. You should remember the words of the Lord Jesus: ‘It is more blessed to give than to receive.’”

35 そして私は懸命に働くことで、あなた方がどうやって物を困窮する人たちを助けられるか、常に手本となってきました。あなた方は主イエスさまの言葉を思い出すべきです。『受けるよりも与える方が幸いである。』」

36 When he had finished speaking, he knelt and prayed with them.

36 話し終わると、パウロはひざまずき、長老たちと祈りました。

37 They all cried as they embraced and kissed him good-bye.

37 長老たちは、みな泣いて、パウロを抱きしめ、別れの口づけをしました。

38 They were sad most of all because he had said that they would never see him again. Then they escorted him down to the ship.

38 長老たちがとりわけ悲しかったのは、パウロが彼らは二度とパウロに会うことがないと言ったからです。それから長老たちは船までパウロに付いていきました。




ミニミニ解説

「使徒の働き」の第20章です。

パウロは第三回目の伝道旅行に出ています。パウロは陸路を北から西へ向かい、キリキヤのタルソを抜けてデルベへ至り、そこからルステラ、イコニウム、ピシディアのアンテオケへと進んで行き、小アジアを抜けてエーゲ海に面するエペソに至りました。 エペソではユダヤ会堂を出て、活動の拠点をツラノの講堂へ移すと、そこで二年間、毎日福音を伝える活動をしました。結果としてアジヤ州全域の人たちが福音のメッセージに触れたのでした。エペソでは大変な騒動が起こりましたが、パウロはその後、エーゲ海を越えてマケドニヤに渡り、ギリシヤへ南下してコリントに三ヶ月滞在しました。

ここから伝道旅行は帰路に入り、パウロは陸路をマケドニヤのピリピまで北上し、ピリピから船でエーゲ海を渡り、再び小アジアのトロアスに至りました。トロアスではルカ自身が合流しました。

下の地図ではパウロの第三回目の伝道旅行は、紫色の線で表されています(地図は『New Illustrated Bible Dictionary』より)。

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今回の第13節にあるアソスは、トロアスの南にある港町です。一行はここから船に乗り、小アジアの西の海岸を南下していきます。

第16節には「パウロはアジヤ州でそれ以上を時間を使いたくなかったのでエペソは通り越すと決めていました」とあり、船はエペソには立ち寄らずに、100キロほど南にあるミレトに着きます。エペソではギリシヤ神話の女神アルテミスを奉る神殿の参詣者を顧客に見込む事業者たちが行った扇動演説をきっかけに、町全体が大騒ぎになる出来事がありました。パウロは出来るだけ早くエルサレムに到着したかったようなので、エペソに立ち寄ることで無用のトラブルに巻き込まれるのを避けたのでしょう。

第17節、パウロは代わりにエペソの長老たちをミレトに呼び寄せ、彼らに話を聞かせます。第18節~第35節はその話が長く引用されています。

第20節~第21節、パウロは福音の伝道活動をするに於いては、人々の前でも、信者個人の家でも、相手がユダヤ人でも異邦人でも、伝えるメッセージはいつも同じだと書いています。それは自分の罪を認め悔いること、神さまに向き直ること、イエスさまを信じること、の三つです。

第22節~第23節、パウロはエルサレムへ行くようにと聖霊に強く導かれています。そしてその聖霊がパウロに、この先、パウロを牢と苦しみが待っていると繰り返し告げます。パウロは先に大きな苦しみがあると知りつつ、聖霊の導きでエルサレムへ向かっているのです。

第24節は、大変強烈なメッセージです。自分の人生はイエスさまに与えられた仕事を完遂するために使うのでなければ何の価値もない、とパウロは言います。クリスチャンは福音を信じ、つまり永遠のいのちを信じます。「永遠」と言うのは終わることのない時間です。終わりのない時間というのは想像を絶しますが、終わることのない「永遠」と、自分の限られた「人生」の関係とは果たして何なのでしょうか。

イエスさまも地上で「人生」を過ごされました。イエスさまの人生は神さまから与えられた使命を完遂することだけに費やされました。「人生」という期限のある時間を過ごす間に、一人一人の人間が、時間や労力やお金を何に費やしていくのか、何で心を満たして生きていくのか、神さまはきっとそれをご覧になっているのだと思います。パウロはその時間を、イエスさまに与えられた仕事を完遂することを第一にして使います。そういう気持ちで心を満たし、そうでなければ神さまから与えられた人生に価値を見いだせない、と言います。そしてその言葉がどのように実践されていくか、私たちはこうして使徒の働きやパウロの書簡で読むことができます。パウロはとても真似することの出来ない、信仰の実践者のお手本だと思います。

第26節~第27節、パウロは福音を伝えるに於いては常に誠実で、伝えるべきことのすべてを躊躇することなく大胆に語ったので、それを聞いた人がどのような選択をするかはその人次第だと言います。結果としてその人が最後の裁きで有罪とされ、永遠のいのちを受けられずに死ぬことになったとしても、それはパウロの責任ではないと言います。

第28節以降はこれからエペソの教会を守る長老たちへの警告です。

第29節は「悪い狼のような偽りの教師たち」が現れると警告し、第30節は「あなた方自身の中からでさえ、信者たちを引き抜くために真実をねじ曲げる人たち」が現れると言います。これはここまでに出現した伝道活動の敵についてです。それは福音を受ける前提として、まずユダヤ人になるための「割礼」の儀式の必要性を主張する割礼派(ユダヤ主義)の人たちであったり、やがて現れ、キリスト教会から「異端」と宣言されるようになる、聖書に異なる解釈を持ち込む人たちのことです。こう言う敵と戦うためには、牧者である長老は、いつも警戒し、目を見張らせ、そうやって群れの世話をするしかないのです。

第33節~第35節、パウロは自分の活動資金のみならず、行動を共にする信者たちを養うために、自分の手を使って懸命に働いて手本を示したと書かれています。

パウロはエペソの長老たちに別れを告げ、エルサレムへ向けて出発します。



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