2015年08月17日

使徒の働き第15章第22節~第35節:異邦人の信者への手紙

第15章




(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


The Letter for Gentile Believers

異邦人の信者への手紙


22 Then the apostles and elders together with the whole church in Jerusalem chose delegates, and they sent them to Antioch of Syria with Paul and Barnabas to report on this decision. The men chosen were two of the church leaders -- Judas (also called Barsabbas) and Silas.

22 それから使徒たちと長老たちはエルサレムの教会全体と共に代表使節を選びました。そしてその代表使節をパウロとバルナバと共にシリアのアンテオケへ送り、この決定について報告させました。選ばれたのは教会の指導者ふたりで、ユダ(バルサバとも呼ばれる)とシラスでした。

23 This is the letter they took with them: “This letter is from the apostles and elders, your brothers in Jerusalem. It is written to the Gentile believers in Antioch, Syria, and Cilicia. Greetings!

23 これが代表使節が持って行った手紙です。「この手紙はエルサレムの兄弟である使徒たちと長老たちからです。アンテオケ、シリヤ、キリキヤの異邦人の信者たちに宛てています。こんにちは。

24 “We understand that some men from here have troubled you and upset you with their teaching, but we did not send them!

24 私たちはエルサレムから行った数名の者が教えたことで、あなた方を困らせ心配させたことを知っています。しかし彼らは私たちが送ったのではありません。

25 So we decided, having come to complete agreement, to send you official representatives, along with our beloved Barnabas and Paul,

25 それで私たちは完全なる同意の下に、私たちの愛するバルナバおよびパウロと共に、あなた方に公式に代表を送ることを決定しました。

26 who have risked their lives for the name of our Lord Jesus Christ.

26 バルナバとパウロは私たちの主イエス・キリストの名前のために自分たちの命を賭した人たちです。

27 We are sending Judas and Silas to confirm what we have decided concerning your question.

27 私たちはあなた方の質問について、私たちが決定したことを確認するためにユダとシラスを送ります。

28 “For it seemed good to the Holy Spirit and to us to lay no greater burden on you than these few requirements:

28 聖霊と私たちは、続くいくつかの要件を除いては、あなた方に何も重荷を負わせないことを良しとしました。

29 You must abstain from eating food offered to idols, from consuming blood or the meat of strangled animals, and from sexual immorality. If you do this, you will do well. Farewell.”

29 あなた方は偶像に供えた食物を食べること、血や、絞め殺した動物を食べること、性的な不品行を避けなければなりません。あなた方がこれを行えばそれでけっこうです。さようなら。」

30 The messengers went at once to Antioch, where they called a general meeting of the believers and delivered the letter.

30 使者たちはすぐにアンテオケへ行き、そこで信者たちの集会を開いて手紙を届けました。

31 And there was great joy throughout the church that day as they read this encouraging message.

31 その日、信者たちがこの励ましの手紙を読むと、教会全体に大きな喜びがありました。

32 Then Judas and Silas, both being prophets, spoke at length to the believers, encouraging and strengthening their faith.

32 それからユダもシラスもふたりとも預言者であったので、信者たちを励まし力づけながら長い話をしました。

33 They stayed for a while, and then the believers sent them back to the church in Jerusalem with a blessing of peace.

33 ふたりはしばらく滞在し、それから信者たちは平和の祝福と共にふたりをエルサレムの教会へ送りました。

(34, But Silas decided to stay there.)

34 {しかしシラスはそこにとどまることに決めました。}

35 Paul and Barnabas stayed in Antioch. They and many others taught and preached the word of the Lord there.

35 パウロとバルナバはアンテオケにとどまりました。ふたりと他の多くの人々はそこで主の言葉を伝えました。




ミニミニ解説

「使徒の働き」の第15章です。

パウロとバルナバは第1回目の伝道の旅から戻り、その後しばらくシリアのアンテオケに滞在していました。するとエルサレムからやって来たユダヤ人の中に「モーゼの律法が定めるとおりに割礼を受けなければ救われない。」と教える人たちが現れます。

このユダヤ人たちは「~しなければ救われない」と言っていて、つまりイエスさまの福音について、それを受け取るための条件として「割礼」を追加しているのです。救われるとか、救われないとか、救済の話をしていますから、この人たちはパウロやバルナバを追いかけ回したユダヤ人ではなく、少なくとも福音を伝える人たちです。どうやらエルサレムではファリサイ派を中心とする保守派が力を伸ばしています。クリスチャンの教会がエルサレムで生き延びるためには、ヘロデ・アンティパスの迫害や、ユダヤ人たちの攻撃に耐えねばなりません。

旧約聖書によると割礼は人がユダヤ人となるために神さまと約束した儀式であるので、割礼を行えば異邦人でもその人はユダヤ人と見なされることになります。保守派は宗教的な汚(けが)れを何よりも嫌います。保守派との対立が避けられないエルサレムの教会では、その対立を可能な限り避けようとするためか、いつのまにか割礼をクリスチャンとなるための条件に加えてきているのです。それでは福音になりません。これは深刻な問題です。

シリアのアンテオケの教会は、問題を解決するためにはパウロとバルナバを含む使節団をエルサレムに送ることが必要だと決め、一行は陸路を600キロ以上も旅してエルサレムに到着しました。エルサレムでは教会のリーダーを務めていたヤコブ(イエスさまの弟)、ヘロデの迫害を逃れて国外に滞在していたであろうペテロ、そしてヨハネも加わって、メンバーとの議論が白熱します。

しかしやがてペテロが自分の経験に基づいて、異邦人が福音を受け入れて神さまから聖霊を授かったとき、神さまはそれがユダヤ人であるか異邦人であるかの区別をしなかったと話し、「救い」は唯一イエスさまの恵みによるのだと、決定的な意見を述べると議論は沈静化します。そして教会のリーダーのヤコブは異邦人の改宗は旧約聖書のアモス書の預言にも合致すると結論を述べ、信者となる異邦人には、ユダヤ人が汚れを避けるために長きにわたって慣習的に行ってきた四つのルールだけを伝えることに決めました。

今回はその決定が書面として手紙にしたためられたことと、その手紙をアンテオケへ持ち帰るパウロとバルナバたちに、エルサレムの教会からユダとシラスが同行することが書かれています。このように証拠となる書面を運ぶ使節団に派遣元から代表が同行することは当時の風習だったのかも知れませんが、これはメッセージの伝達を確実なものとします。私はまずエルサレムでの会議の決定がきちんと書面化されたことに驚きましたが、さらにそれを伝えるために代表が同行するのです。すばらしいことです。

第23節、まず手紙は、「アンテオケ、シリヤ、キリキヤの異邦人の信者たちに」宛てられています。イスラエルの北はアンテオケのあるシリアで(地中海沿いに、いまのレバノンとほぼ同域のフェニキアがありますが)、その北がパウロが逃れていた生まれ故郷のタルソのあるキリキヤになります。手紙はシリアのアンテオケの信者のみならず、この時点で想定できる北方の広域の信者たちに向けて書かれたことになります。

第25節~第26節で、手紙は「それで私たちは完全なる同意の下に、私たちの愛するバルナバおよびパウロと共に、あなた方に公式に代表を送ることを決定しました。」と、エルサレムの教会が全会一致で使節団を送ることにしたことと、「バルナバとパウロは私たちの主イエス・キリストの名前のために自分たちの命を賭した人たちです。」と、エルサレムの教会がバルナバとパウロを公式に同じ教会の信者、兄弟であると認めています。

第28節以降には前回説明した信者が避けるべき四つの事項が書かれています。それは、(1)偶像に供えた食物を食べることを避ける、(2)血を食べることを避ける、(3)絞め殺した動物の肉を食べることを避ける、(4)性的な不品行を避ける、です。前回と順番が入れ替わっていますが、四つの内容に変わりありません。

(1)偶像に供えた食物を食べることを避ける、については、ユダヤ人も旧約聖書の律法に沿って寺院でいけにえの動物を捧げ、これを祭壇で焼却していましたが、異邦人も神と信じる偶像に食物を供えていたのですね。さらにここから推察すると、そのように偶像に供えられた食物は、一般の市民が買って食べられるように、何かしらの流通の経路に乗っていたのです。ユダヤの律法は祭壇に供えられたいけにえをどのように処分するかまでを細かく定めていますから、律法に沿う限りそのようなことは起こらないはずです。

さらに考えると、もし異邦人の宗教で、食物は食べる前には必ず偶像に供える、一度偶像に供えずに食べることは宗教に反すると考えられていたら、流通経路に乗る食物はすべて一度偶像に供えられた食物ということにもなります。いずれにしてもユダヤ人は汚れを避けるために、邪教の偶像に関わった食物には手を付けません。

(2)血を食べることを避ける、については、旧約聖書のLeviticus 17:10-14(レビ記第17章第10節~第14節)に以下の記述があります。

「10 また、イスラエルの家の者、または彼らの間の在留異国人のだれであっても、どんな血でも食べるなら、わたしはその血を食べる者から、わたしの顔をそむけ、その者をその民の間から断つ。11 なぜなら、肉のいのちは血の中にあるからである。わたしはあなたがたのいのちを祭壇の上で贖うために、これをあなたがたに与えた。いのちとして贖いをするのは血である。12 それゆえ、わたしはイスラエル人に言った。『あなたがたはだれも血を食べてはならない。あなたがたの間の在留異国人もまた、だれも血を食べてはならない。』 13 イスラエル人や彼らの間の在留異国人のだれかが、食べることのできる獣や鳥を狩りで捕らえるなら、その者はその血を注ぎ出し、それを土でおおわなければならない。14 すべての肉のいのちは、その血が、そのいのちそのものである。それゆえ、わたしはイスラエル人に言っている。『あなたがたは、どんな肉の血も食べてはならない。すべての肉のいのちは、その血そのものであるからだ。それを食べる者はだれでも断ち切られなければならない。』([新改訳])。

ここには明確に「あなたがたの間の在留異国人もまた、だれも血を食べてはならない。」と、異邦人についても明記されています。

(3)絞め殺した動物の肉を食べることを避ける、については、上のレビ記の引用の中でも、動物は「食べることのできる獣や鳥を狩りで捕らえるなら、その者はその血を注ぎ出し、それを土でおおわなければならない。」と、動物の殺し方を特別に定めていますから、ここから派生した実践的な慣習法があったことは十分推察されますし、つまり「絞め殺した動物の肉」が、ユダヤのそうあるべき動物処理方法から逸脱していたのだろう、と考えることができます。

(4)性的な不品行を避ける、についてはやはりレビ記に記述があります。Leviticus 18:6-20(レビ記第18章第6節~第20節)にかなり細かい既定があります。

「6 あなたがたのうち、だれも、自分の肉親の女に近づいて、これを犯してはならない。わたしは主である。7 父をはずかしめること、すなわちあなたの母を犯すことをしてはならない。彼女はあなたの母であるから、彼女を犯してはならない。8 あなたの父の妻を犯してはならない。それは、あなたの父をはずかしめることである。9 あなたの姉妹は、あなたの父の娘でも、母の娘でも、あるいは、家で生まれた女でも、外で生まれた女でも、犯してはならない。10 あなたの息子の娘、あるいはあなたの娘の娘を犯してはならない。それはあなた自身をはずかしめることだからである。11 あなたの父の妻があなたの父に産んだ娘は、あなたの姉妹であるから、あなたはその娘を犯してはならない。12 あなたの父の姉妹を犯してはならない。彼女はあなたの父の肉親である。13 あなたの母の姉妹を犯してはならない。彼女はあなたの母の肉親であるから。14 あなたの父の兄弟をはずかしめてはならない。すなわち、その妻に近づいてはならない。彼女はあなたのおばである。15 あなたの嫁を犯してはならない。彼女はあなたの息子の妻である。彼女を犯してはならない。16 あなたの兄弟の妻を犯してはならない。それはあなたの兄弟をはずかしめることである。17 あなたは女とその娘とを犯してはならない。またあなたはその女の息子の娘、あるいはその娘の娘をめとって、これを犯してはならない。彼女たちは肉親であり、このことは破廉恥な行為である。18 あなたは妻を苦しませるために、妻の存命中に、その姉妹に当たる女をめとり、その女を犯してはならない。19 あなたは、月のさわりで汚れている女に近づき、これを犯してはならない。
20 また、あなたの隣人の妻と寝て交わり、彼女によって自分を汚してはならない。 」([新改訳])

第32節によると、エルサレムの教会から来たユダとシラスも預言者、すなわち神さまの言葉を預かる話者として、福音を伝える説教を行っています。

第34節の、「{しかしシラスはそこにとどまることに決めました。}」は括弧に入っていて、これはつまり、原典として見つかる聖書の中に、この節を含む原典と含まない原典が存在することを表しています。「Acts(使徒の働き)」は、このすぐ後の展開で、パウロが次の伝道旅行にシラスを伴うことを記述した箇所があるのですが、今回の第33節を読むとシラスはエルサレムへ帰ってしまっているので、それではつじつまが合わないから、と言うことで写本を作るときに気を利かせて(?)、第34節を追加した人がいたと言うようなことでしょう。



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