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2015年08月18日

使徒の働き第14章第8節~第20節:ルステラとデルベのパウロとバルナバ

第14章




(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


Paul and Barnabas in Lystra and Derbe

ルステラとデルベのパウロとバルナバ


8 While they were at Lystra, Paul and Barnabas came upon a man with crippled feet. He had been that way from birth, so he had never walked. He was sitting

8 ルステラにいたとき、パウロとバルナバは片足が不自由な男性に会いました。彼は生まれつき足が不自由で歩いたことがありませんでした。彼は座って、

9 and listening as Paul preached. Looking straight at him, Paul realized he had faith to be healed.

9 パウロの話を聞いていました。パウロはまっすぐに彼を見て、彼がいやされるに値する信仰を持っていると知りました。

10 So Paul called to him in a loud voice, “Stand up!” And the man jumped to his feet and started walking.

10 それでパウロは大声で彼に呼びかけました。「立ちなさい。」 すると彼は飛び上がって歩き始めました。

11 When the crowd saw what Paul had done, they shouted in their local dialect, “These men are gods in human form!”

11 群衆はパウロのしたことを見ると、現地の方言で叫びました。「この人たちは人の形をした神だ。」

12 They decided that Barnabas was the Greek god Zeus and that Paul was Hermes, since he was the chief speaker.

12 人々はバルナバがギリシヤの神ゼウスで、パウロをヘルメスと決めました。それはパウロが主に話していたからです。

13 Now the temple of Zeus was located just outside the town. So the priest of the temple and the crowd brought bulls and wreaths of flowers to the town gates, and they prepared to offer sacrifices to the apostles.

13 町のすぐ外にゼウスの神殿がありました。それで神殿の祭司と群衆は雄牛を数頭と花の飾りを町の門のところへ持ってきて、使徒たちにいけにえをささげようと準備をしました。

14 But when the apostles Barnabas and Paul heard what was happening, they tore their clothing in dismay and ran out among the people, shouting,

14 使徒のバルナバとパウロは何が起こっているかを聞くと、狼狽して衣服を裂き、群衆の中に走り出て叫びました。

15 “Friends, why are you doing this? We are merely human beings -- just like you! We have come to bring you the Good News that you should turn from these worthless things and turn to the living God, who made heaven and earth, the sea, and everything in them.

15 「皆さん、どうしてこんなことをするのですか。私たちは皆さんと同じただの人間です。私たちはあなた方がこのような無益なことから立ち返り、天と地と海とその中にいるすべてのものをお造りになった生きる神さまに向き直る、良い知らせを届けるために来たのです。

16 In the past he permitted all the nations to go their own ways,

16 過去には神さまはすべての国の人たちがそれぞれ自分の道を歩むことを許しました。

17 but he never left them without evidence of himself and his goodness. For instance, he sends you rain and good crops and gives you food and joyful hearts.”

17 しかし、神さまはその人たちの中に神さま自身や神さまの正しさの証拠を残さずに置くことはしていません。たとえば神さまはあなた方に雨や良い収穫を送り、食物と喜びを与えています。」

18 But even with these words, Paul and Barnabas could scarcely restrain the people from sacrificing to them.

18 しかしこのように言っても、パウロとバルナバはようやくのことで、人々が自分たちにいけにえを捧げるのをやめさせることができたのでした。

19 Then some Jews arrived from Antioch and Iconium and won the crowds to their side. They stoned Paul and dragged him out of town, thinking he was dead.

19 するとアンテオケとイコニオムからユダヤ人たちが到着し、群衆を味方に付けることに成功しました。群衆はパウロを石打ちにし、パウロが死んだものと思って町の外に引きずり出しました。

20 But as the believers gathered around him, he got up and went back into the town. The next day he left with Barnabas for Derbe.

20 しかし信者たちがパウロの周りに集まると、パウロは立ち上がり、町の中に入って行きました。翌日、パウロはバルナバとともにデルベに向かいました。




ミニミニ解説

「使徒の働き」の第14章です。

シリアのアンテオケから最初の伝道旅行に出発したパウロとバルナバは、まず船でキプロス島へ渡り、東から西へ町から町へ、会堂から会堂へとまわり、福音を伝えて最終的に島の西端、ローマ帝国の総督府が置かれていたパポスの町に到着しました。

パウロとバルナバは再び船に乗って現在のトルコ共和国のアナトリア(小アジア)の南岸のパンフリヤへ向かい、港町のペルガに着きます。そして150キロほど北上して、ピシデヤのアンテオケ(同じ名前の別の町)に到着しました。ふたりは会堂で福音のメッセージを伝え、多くのユダヤ人と異邦人がイエスさまを信じましたが、ユダヤ人の中にはパウロを中傷し、伝道を妨害する者もいました。ユダヤ人たちが町の有力者と謀って暴動を起こすと、パウロとバルナバは町を出て、150キロほど東のイコニウムに至ります。イコニウムでも同じことが起こります。パウロとバルナバが会堂で教えると、多くのユダヤ人と異邦人が信じて信者となりますが、やがて伝道を妨害するユダヤ人が現れます。ふたりは殺害計画を知って町を脱出しました。

下の地図ではパウロの第一回目の伝道旅行は、黒い線で表されています(地図は『New Illustrated Bible Dictionary』より)。

paul-journey-1


今回、パウロとバルナバが着いたのはイコニウムの南西50キロあたりにあるルステラです。

今回の部分を読むと一連の出来事は屋外で起こっているようですから、いままでのようにパウロとバルナバは会堂を訪ねることはしていません。この日がたまたま安息日でなかったから人々が会堂に集うことがなかったか、あるいはこの町にはユダヤ人が少なくて会堂のない町だったのかも知れません。

第8節~第9節、パウロが福音を述べ伝えていると、聴衆の中に片足の不自由な男がいます。パウロは彼が熱心に耳を傾けているのを見て彼の中に信仰があることを知ります。

第10節、パウロが彼に「立ちなさい。」と言うと、彼は生まれつき足が不自由であったのにも関わらず飛び上がって歩き始めました。これはここまでイエスさまやペテロが行ったのと同じ奇跡です。

ところがこの町では信じがたいことが起こります。男性の足が生まれつき不自由だったことはみなが知っていますから、人々は奇跡の意味を瞬時に理解します。すると人々はふたりを神だと決め、いけにえを捧げようと準備し始めるのです。ゼウスやヘルメスはギリシヤ神話に登場する神々です。ゼウスは神々の王、ヘルメスはゼウスの使いでプロメテウスと共に人気のあった神のようです。第11節にある現地の方言はギリシヤ語の方言です。パウロもバルナバもイスラエル国外に住むディアスポラ系のユダヤ人で、ギリシヤ語を話すことができました。

第14節、パウロとバルナバは人々が何をしようとしているのかを知ると着ていた衣服を裂きました。衣服を裂くのはユダヤ人が激しい怒りや悲しみを表現する方法で、聖書の中には何度も登場します。

第15節からパウロが人々を諭します。どうしてこんなことをするのか、自分たちもただの人間である、ギリシヤ神話のような無益なことはやめて、天地を創造し、宇宙の運行を司る神さまへの信仰に立ち返りましょう、と。

ようやく人々がいけにえを捧げるのをやめたところで、第19節、アンテオケとイコニオムからユダヤ人たちが到着します。これはアンテオケで暴動を扇動し、イコニウムではふたりを殺害しようとしたディアスポラ系のユダヤ人たちです。彼らはふたりを追いかけてルステラにまでやって来たのです。この人たちは何としてもパウロとバルナバを殺そうと大きな怒りに燃えていたと言うことです。

ユダヤ人たちは最初に町の群衆を味方に付け、それからパウロを石打ちにします。そしてパウロが死んだものと思って町の外へ引きずり出しました。ユダヤの律法が定める石打ちの刑は受刑者を最初に町の外に連れて行ってそこで石打ちにしますから、町中で行われた今回の石打ちは単なる私刑です。石打ちは会衆の全員が受刑者に代わる代わる石を投げつけて殺す刑で、これを生き延びる人はいません。人々はパウロが死んだものと思って町の外へ引きずっていきます。パウロは瀕死の状態で意識を失っていたのでしょう。

第20節、ところが驚くべきことにパウロは信者たちの見守る中で立ち上がり、自分で歩いて再び町の中に入っていきます。ここまで使徒たちは人を癒やす奇跡は行いましたが、死にかけた状態から自分自身が奇跡的に回復する様子が記録されたのはこれが初めてです。

それともうひとつ気がつくのは、今回の部分でパウロとバルナバが「使徒(apostles)」と呼ばれていることです。使徒は弟子から区別して直接イエスさまから選ばれた人たちを呼ぶ言葉ですが、ここではダマスコ郊外でイエスさまから選ばれたパウロのみならず、バルナバにもこの単語が使われています。

パウロはバルナバは翌日、ルステラから100キロほど東にあるデルベに向かいました。




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