2015年08月20日

使徒の働き第12章第1節~第25節:ヤコブが殺されペテロが投獄される、ペテロの牢からの奇跡的な脱出、ヘロデ・アグリッパの死

第12章




(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


James Is Killed and Peter Is Imprisoned

ヤコブが殺されペテロが投獄される


1 About that time King Herod Agrippa began to persecute some believers in the church.

1 そのころヘロデ・アグリッパ王は教会の信者たちの何名かに対する迫害を始めました。

2 He had the apostle James (John’s brother) killed with a sword.

2 ヘロデはヨハネの兄弟で使徒のヤコブを剣で殺しました。

3 When Herod saw how much this pleased the Jewish people, he also arrested Peter. (This took place during the Passover celebration.)

3 ヘロデはユダヤ人がこれを喜んだのを見て、さらにペテロを逮捕しました。(これは過ぎ越しの祭りの間に起こりました。)

4 Then he imprisoned him, placing him under the guard of four squads of four soldiers each. Herod intended to bring Peter out for public trial after the Passover.

4 それからヘロデはペテロを牢に入れ、兵士四人ずつで構成する四組の隊に監視させました。ヘロデは過ぎ越しの祭りの後でペテロを人々の前に引き出すつもりでした。

5 But while Peter was in prison, the church prayed very earnestly for him.

5 しかしペテロが牢に入れられている間、教会はペテロのためにとても熱心にお祈りしていました。



Peter’s Miraculous Escape from Prison

ペテロの牢からの奇跡的な脱出


6 The night before Peter was to be placed on trial, he was asleep, fastened with two chains between two soldiers. Others stood guard at the prison gate.

6 ペテロが裁判にかけられる前の夜、ペテロはふたりの兵士の間で二本の鎖でつながれて眠っていました。他の兵は牢の門で監視に立っていました。

7 Suddenly, there was a bright light in the cell, and an angel of the Lord stood before Peter. The angel struck him on the side to awaken him and said, “Quick! Get up!” And the chains fell off his wrists.

7 突然、独房の中に明るい光があり、主の天使がペテロの前に立ちました。天使はペテロを起こすためにペテロのわき腹をたたき、言いました。「急いで。立ちなさい。」 そして鎖がペテロの手首から落ちました。

8 Then the angel told him, “Get dressed and put on your sandals.” And he did. “Now put on your coat and follow me,” the angel ordered.

8 それから天使はペテロに言いました。「服を着てサンダルをはきなさい。」 ペテロはそのとおりにしました。天使は命じました。「では上着を着て私について来なさい。」

9 So Peter left the cell, following the angel. But all the time he thought it was a vision. He didn’t realize it was actually happening.

9 それでペテロは天使について独房を出ました。しかしずっとペテロは幻だと思っていました。ペテロはそれが実際に起こっているとは気づかなかったのです。

10 They passed the first and second guard posts and came to the iron gate leading to the city, and this opened for them all by itself. So they passed through and started walking down the street, and then the angel suddenly left him.

10 二人は最初と次の警備の持ち場を通り過ぎて町へと至る鉄の門まで来ました。そして門は二人のためにひとりでに開きました。そこで二人は通り過ぎて通りを歩き始めました。すると天使は突然ペテロから離れました。

11 Peter finally came to his senses. “It’s really true!” he said. “The Lord has sent his angel and saved me from Herod and from what the Jewish leaders had planned to do to me!”

11 ペテロはついに我に返りました。ペテロは言いました。「これは本当なのだ。主が天使を遣わして私をヘロデから、そしてユダヤの指導者たちが私にしようと企んでいたことから助けてくださったのだ。」

12 When he realized this, he went to the home of Mary, the mother of John Mark, where many were gathered for prayer.

12 ペテロはこのことがわかると、ヨハネ・マルコの母のマリヤの家へ行きました。そこにはたくさんの人がお祈りのために集まっていました。

13 He knocked at the door in the gate, and a servant girl named Rhoda came to open it.

13 ペテロは門で戸をたたきました。するとロダという女中が門を開けに出て来ました。

14 When she recognized Peter’s voice, she was so overjoyed that, instead of opening the door, she ran back inside and told everyone, “Peter is standing at the door!”

14 ロダはペテロの声に気づくととても大喜びして、それで戸を開ける代わりに中へ走って戻り、みなに伝えました。「ペテロが戸のところに立っています。」

15 “You’re out of your mind!” they said. When she insisted, they decided, “It must be his angel.”

15 人々は言いました。「あなたは気が狂っている。」 ロダが言い張ると人々は言いました。「それはペテロの天使に違いない。」

16 Meanwhile, Peter continued knocking. When they finally opened the door and saw him, they were amazed.

16 一方のペテロは戸をたたき続けていました。ついに人々が戸を開けてペテロを目にすると、彼らは驚きました。

17 He motioned for them to quiet down and told them how the Lord had led him out of prison. “Tell James and the other brothers what happened,” he said. And then he went to another place.

17 ペテロは手ぶりで彼らを静かにさせ、主がどのようにしてペテロを牢から導き出したかを話しました。ペテロは言いました。「ヤコブと他の兄弟たちに何が起こったかを知らせてください。」 それからペテロは他の場所へ行きました。

18 At dawn there was a great commotion among the soldiers about what had happened to Peter.

18 明け方、ペテロに何が起こったのかと兵士たちの間で大きな騒動となりました。

19 Herod Agrippa ordered a thorough search for him. When he couldn’t be found, Herod interrogated the guards and sentenced them to death. Afterward Herod left Judea to stay in Caesarea for a while.

19 ヘロデ・アグリッパはペテロの徹底的な捜索を命じました。ペテロが見つからないので、ヘロデは番兵たちを尋問し、彼らに死刑を宣告しました。その後ヘロデはユダヤを後にして、しばらくカイザリヤに滞在しました。



The Death of Herod Agrippa

ヘロデ・アグリッパの死


20 Now Herod was very angry with the people of Tyre and Sidon. So they sent a delegation to make peace with him because their cities were dependent upon Herod’s country for food. The delegates won the support of Blastus, Herod’s personal assistant,

20 さてヘロデはツロとシドンの人々に大変腹を立てていました。そこでツロとシドンの人々はヘロデと和解するために代表団を送りました。それはツロとシドンの町はヘロデの国の食料に依存していたからです。代表団はヘロデの個人的な補佐官のブラスタスの支援を得ていて、

21 and an appointment with Herod was granted. When the day arrived, Herod put on his royal robes, sat on his throne, and made a speech to them.

21 ヘロデとの会見の約束がかないました。その日になるとヘロデは王室の外衣を着て王座に座り、彼らに対して演説をしました。

22 The people gave him a great ovation, shouting, “It’s the voice of a god, not of a man!”

22 人々は大きな喝采を送って叫びました。「神の声だ。人の声ではない。」

23 Instantly, an angel of the Lord struck Herod with a sickness, because he accepted the people’s worship instead of giving the glory to God. So he was consumed with worms and died.

23 突然主の天使がヘロデを病で打ちました。それはヘロデが自分で人々の崇拝を受け、栄光を神さまに帰さなかったからです。それでヘロデは虫に食い尽くされて死にました。

24 Meanwhile, the word of God continued to spread, and there were many new believers.

24 そうしている間に神さまの言葉は広がり続け、たくさんの新しい信者が生まれました。

25 When Barnabas and Saul had finished their mission to Jerusalem, they returned, taking John Mark with them.

25 バルナバとサウロはエルサレムへの旅行を終えると、ヨハネ・マルコを連れて戻ってきました。




ミニミニ解説

「使徒の働き」の第12章です。

第1節に登場するヘロデ・アグリッパはヘロデ大王の孫にあたります。

イエスさまが生まれた頃にパレスチナを支配していたヘロデ大王は紀元前4年に死に、領地は三人の息子アルケラオ、ヘロデ・アンティパス、ピリポに分けられました。ヘロデ・アグリッパの父はこの三人のいずれかではなく、アリストブロス4世といってヘロデ・アグリッパが生まれた後にヘロデ大王によって殺されています。ヘロデ・アグリッパはローマ滞在中に皇帝のカリグラと知り合いになり、最初ピリポが治めていたガリラヤ湖北東のイトラヤとトラコン地方の統治を任されるようになりました。その後、イエスさまが伝道活動していたときにガリラヤ地方とヨルダン川東岸を統治していて、洗礼者ヨハネを処刑したヘロデ・アンティパスがカリグラ帝によって追放されると、ヘロデ・アグリッパはヘロデ・アンティパスの統治地域も引き継ぐようになります。さらに後にユダヤとサマリヤなどが統治範囲に加わると、ヘロデ・アグリッパはヘロデ大王が統治していたのとほぼ同じ地域をひとりで支配するようになりました。

第2節、ヘロデ・アグリッパは十二使徒のひとりヤコブを殺します。ヤコブは「ヨハネの福音書」と「ヨハネの黙示録(Revelation)」を記したとされるヨハネの兄弟です(おそらく兄です)。父はゼベダイといって家はガリラヤ湖で漁師をしていました。十二使徒のうち、ペテロ、ヤコブ、ヨハネの三人はイエスさまの側近に位置づけられ、いつもイエスさまの近くにいて、いくつかの重要な場面に遭遇しています。ヤコブはステパノに次いで二人目の殉教者であり、十二使徒では最初に殉教した人になります。処刑は斬首だったようです。

第3節、当時ヘロデ・アグリッパはファリサイ派と利害を共にしていたようで、ヤコブの処刑がファリサイ派に好意的に受け入れられたのを見ると、さらにペテロを逮捕します。

第4節、ヘロデ・アグリッパは過ぎ越しの祭りの後でペテロを裁判にかけて殺すつもりだったようで、ペテロを牢に入れて厳重な監視をつけます。

しかし第5節~第11節でペテロは奇跡的に脱獄してしまいます。

第12節、牢から出たペテロはヨハネ・マルコの母であるマリヤの家へ向かいます。ヨハネ・マルコは「マルコの福音書」を記した人物とされ、その母であるマリヤの家が初期に信者が集会を行った家であると考えられています。おそらくイエスさまと十二使徒が最後の晩餐を行ったのも、復活したイエスさまが使徒たちに現れたのも、聖霊が訪れたときに使徒たちが集会を持っていたのも、この家ではないかと考えられています。ペテロがこの家に向かったとき、信者たちは集まってペテロの無事を祈っていました。

第13節、ペテロが戸をノックするとロダという女性が応答に出て、ペテロの声を聞くと喜びのあまり、戸を開けるのを忘れて信者たちの元へ戻ってしまいます。第16節にあるように外に残されたペテロは戸をノックし続けています。

第17節、信者たちと再会したペテロは「ヤコブと他の兄弟たちに何が起こったかを知らせてください」と告げて他の場所へ向かいます。この「ヤコブと他の兄弟たち」というのはイエスさまの兄弟のことでしょう。イエスさまの父母にあたるマリアとヨセフの夫婦は処女懐胎でイエスさまを世に送り出した後、四人の男子と複数の女子を持ちました。四人の兄弟はヤコブ(James)、ヨセフ(Joses)、ユダ(Judas)、シモン(Simon)です。このうち長男のヤコブがこの後、エルサレムの教会のリーダーとなりますが、ペテロが「ヤコブと他の兄弟たちに何が起こったかを知らせてください」と告げたと言うことは、イエスさまの一家はこの家とは別の場所に住んでいたと言うことになります。

第18節~第19節、牢では厳重な監視下に置かれていたはずのペテロが見つからないことで大騒ぎになります。そしてローマ帝国では囚人を脱獄させてしまった番兵は死刑に処されます。

第20節~第23節はヘロデ・アグリッパの死の顛末です。人々がその声を「神の声だ。人の声ではない」と賞賛するのをそのまま受けたことにより殺されてしまいます。「栄光を神さまに帰さなかった」と言うのは、人々が自分の声を賞賛したとき、そのことについて神さまを褒め称えなかった、ということです。

第25節には、バルナバとサウロがエルサレムへの旅行を終えて、ヨハネ・マルコを伴って戻ってきたと書かれています。ヨハネ・マルコは「マルコの福音書」を記述したと言われる人です。ここまでサウロはシリアのダマスコで改宗し、その後しばらくアラビヤに滞在してから再度ダマスコに戻ります。ここでギリシヤ語を話すディアスポラ系のユダヤ人に命を狙われると、城壁の窓から吊り下ろされて脱出し、エルサレムへ向かいました。

エルサレムではバルナバが使徒たちとの間を仲介し、サウロはペテロの家に15日間滞在しました。エルサレムでもサウロはディアスポラ系のユダヤ人と議論した結果、命を狙われるようになり、カイザリヤ経由で生まれ故郷のタルソへ逃れています。シリアのアンテオケで異邦人への伝道が開始されて信者が増えると、ここにエルサレムからバルナバが派遣されました。バルナバはタルソからサウロを連れてきてアンテオケで合流しています。以前も書きましたが新約聖書のColossians(コロサイ人への手紙)によると、バルナバとヨハネ・マルコは従兄です。




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