2015年08月23日

使徒の働き第9章第19節~第31節:ダマスコとエルサレムでのサウロの活動

第9章




(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


Saul in Damascus and Jerusalem

ダマスコとエルサレムでのサウロの活動


19 Afterward he ate some food and regained his strength. Saul stayed with the believers in Damascus for a few days.

19 それからサウロは食事をして元気を取り戻しました。サウロは数日の間、ダマスコで信者たちとともにいました。

20 And immediately he began preaching about Jesus in the synagogues, saying, “He is indeed the Son of God!”

20 そしてただちに会堂を巡って「イエスさまは真に神の子である」と宣べ伝え始めました。

21 All who heard him were amazed. “Isn’t this the same man who caused such devastation among Jesus’ followers in Jerusalem?” they asked. “And didn’t he come here to arrest them and take them in chains to the leading priests?”

21 サウロの話を聞いた人々はみな驚きました。人々は言いました。「この人はエルサレムでイエスさまの信者に大変な被害を及ぼしたのと同じ者ではありませんか。ここへやって来たのも、信者を捕らえて鎖につなぎ、祭司長たちのところへ連れて行くためではなかったのですか。」

22 Saul’s preaching became more and more powerful, and the Jews in Damascus couldn’t refute his proofs that Jesus was indeed the Messiah.

22 サウロの伝道はますます力を増していき、サウロが示すイエスさまが真の救世主であるという証明について、ダマスコのユダヤ人たちも反論できないのでした。

23 After a while some of the Jews plotted together to kill him.

23 しばらくして、ユダヤ人が何名か集まりサウロを殺そうと企てました。

24 They were watching for him day and night at the city gate so they could murder him, but Saul was told about their plot.

24 その者たちは昼も夜も町の門でサウロを見張り、サウロを殺そうとしたのですが、サウロはその陰謀について告げられました。

25 So during the night, some of the other believers lowered him in a large basket through an opening in the city wall.

25 そこで夜の間に他の信者たちが、サウロを大きなかごに乗せて町の城壁の穴からつり降ろしました。

26 When Saul arrived in Jerusalem, he tried to meet with the believers, but they were all afraid of him. They did not believe he had truly become a believer!

26 サウロはエルサレムに着くと信者たちに会おうと試みましたが、彼らはみなサウロを恐れていました。サウロが本当に信者になったとは信じていなかったのです。

27 Then Barnabas brought him to the apostles and told them how Saul had seen the Lord on the way to Damascus and how the Lord had spoken to Saul. He also told them that Saul had preached boldly in the name of Jesus in Damascus.

27 するとバルナバがサウロを使徒たちのところへ連れて行き、サウロがダマスコへ行く途中で主に出会った様子や、主がサウロに語られたことについて説明しました。さらにバルナバは、サウロがダマスコでイエスさまの名前によって大胆に伝道したことについても話しました。

28 So Saul stayed with the apostles and went all around Jerusalem with them, preaching boldly in the name of the Lord.

28 そしてサウロは使徒たちとともに滞在し、使徒と一緒にエルサレム中に出かけて行き、主の名前によって大胆に伝道しました。

29 He debated with some Greek-speaking Jews, but they tried to murder him.

29 サウロはギリシヤ語を話すユダヤ人たちと議論しましたが、彼らはサウロを殺そうとしました。

30 When the believers heard about this, they took him down to Caesarea and sent him away to Tarsus, his hometown.

30 信者たちはこれを知ると、サウロをカイザリヤへ連れて行き、サウロの故郷であるタルソへ送り出しました。

31 The church then had peace throughout Judea, Galilee, and Samaria, and it became stronger as the believers lived in the fear of the Lord. And with the encouragement of the Holy Spirit, it also grew in numbers.

31 こうして教会は、ユダヤ、ガリラヤ、サマリヤにわたって平安が保たれ、信者たちが主を畏れながら生活すると教会はいよいよ強固な基盤となりました。そして聖霊の励ましを受けて信者の数も増えて行きました。




ミニミニ解説

「使徒の働き」の第9章です。

ステパノの殉教をきっかけにエルサレムではギリシヤ語を話す信者たちに対する迫害が起こりました。この急先鋒がファリサイ派のサウロです。サウロは新約聖書に収められたたくさんの書簡(~への手紙)を記述したパウロのことです。

サウロは信者を逮捕するためにダマスコへ向かいます。ダマスコは現シリアの首都ダマスカスのことでエルサレムからは250km北方にあります。その途上、ダマスコに近づいたところでサウロは突然天からの光に照らされ、地に倒れます。そして「サウロ。サウロ。なぜ私を迫害するのか。私はイエスである。あなたが迫害している相手だ。」と言うイエスさまの声を聞きます。サウロは視力を奪われ、手を引かれてダマスコの町へ入りました。それから三日間、サウロは目が見えないばかりでなく、食べることも飲むこともできませんでした。

ダマスコに住んでいた信者のアナニヤにイエスさまからの指示が来て、アナニヤはサウロをたずねます。アナニヤがサウロの上に手を置くとサウロの目からうろこのような物が落ちてサウロは目が見えるようになりました。サウロは信仰を告白して洗礼を受けます。

今回はこの続きです。

視力を回復したサウロは、ダマスコでユダヤ人が集まる会堂を巡って、イエスさまに関する福音を伝え始めました。信者を狩りだしていた急先鋒のサウロが、突然信者となって、今度は伝道を開始したのですから、周囲の人たちが驚いたのにも無理はありません。

サウロの伝道は大変強力で、第22節には「サウロが示すイエスさまが真の救世主であるという証明」は反論不能だった、と書かれています。これはサウロがファリサイ派の出身だからに他なりません。ファリサイ派はほとんどが律法の先生でしたが、彼らは14才から40才までマン・ツー・マンでユダヤ律法の教育を受けてきた聖書の専門家です。そのサウロがイエスさまと出会い啓示を受け、自分の持っていた聖書知識がどれほど忠実にイエスさまを指し示しているかに気づいたのです。まさに目からうろこが落ちた状態です。聖書の専門家が、その知識に基づいてイエスさまがどれほど忠実に預言を実現した救世主であるかを説けば、これには誰も反論できないでしょう。私は個人的に新約聖書に収められたHebrews(「ヘブル人への手紙」)が好きですが、この本はまさしく旧約聖書をなぞって救世主であるイエスさまを説明する内容になっていますので、興味がある方は読んでみてください。

さらに人々を驚かせたのはまったく変わってしまったサウロの性格だと思います。会堂や隠れ家を襲撃しては信者を捕らえ、鎖を掛け、牢につなぎ、処刑する、どんな信者からも誰よりも恐れられていたその人物が、今度はイエスさまの福音に基づいて、改心と神さまへの回帰を説き、イエスさまを信じなさい、と力強く伝えるのです。これほどの人間の変わり様を目の当たりにした人たちは、何かを感じ深く考えさせられたに違いありません。イエスさまを救世主として受け入れて信じると、その人にどれほどの変化が訪れるかは、イエスさまも他の記述者も聖書の中で繰り返し伝えており、クリスチャンであれば誰もが知り確信していることなのです。

あまりにサウロの伝道が強力なので、第23節、ユダヤ人はサウロを殺そうと企みます。そこでサウロはダマスコの城壁づたいに釣り下ろされて危機を逃れ(当時のこの地域の都市は城壁で四方をグルリと囲まれた城塞都市です)、エルサレムへ行きます。 Galatians(「ガラテヤ人への手紙」)によると、サウロがこの周辺でエルサレムへ行く前にアラビヤに滞在していて再度ダマスコに戻ったと書かれています。サウロが果たしてアラビヤでどれだけの期間何をしていたのか、これを説明する資料は見つかりません。Galatians 1:11-18(ガラテヤ人への手紙第1章第11節~第18節)です。

「11 兄弟たちよ。私はあなたがたに知らせましょう。私が宣べ伝えた福音は、人間によるものではありません。12 私はそれを人間からは受けなかったし、また教えられもしませんでした。ただイエス・キリストの啓示によって受けたのです。13 以前ユダヤ教徒であったころの私の行動は、あなたがたがすでに聞いているところです。私は激しく神の教会を迫害し、これを滅ぼそうとしました。14 また私は、自分と同族で同年輩の多くの者たちに比べ、はるかにユダヤ教に進んでおり、先祖からの伝承に人一倍熱心でした。15 けれども、生まれたときから私を選び分け、恵みをもって召してくださった方が、16 異邦人の間に御子を宣べ伝えさせるために、御子を私のうちに啓示することをよしとされたとき、私はすぐに、人には相談せず、17 先輩の使徒たちに会うためにエルサレムにも上らず、アラビヤに出て行き、またダマスコに戻りました。18 それから三年後に、私はケパをたずねてエルサレムに上り、彼のもとに十五日間滞在しました。」([新改訳])

最後に出てくる「ケパ」とはペテロのことです。第18節の「それから三年後」はパウロがイエスさまと出会ってから三年後の意味と思われます。

エルサレムでも信者の間ではサウロの評判は大変悪かったようですが、サウロと使徒たちとの間を取り持ったのはバルナバです。バルナバはActs 4使徒の働き第4章)に登場しています。Acts 4:32-37(使徒の働き第4章第32節~第37節)です。

「32 信じた者の群れは、心と思いを一つにして、だれひとりその持ち物を自分のものと言わず、すべてを共有にしていた。33 使徒たちは、主イエスの復活を非常に力強くあかしし、大きな恵みがそのすべての者の上にあった。34 彼らの中には、ひとりも乏しい者がなかった。地所や家を持っている者は、それを売り、代金を携えて来て、35 使徒たちの足もとに置き、その金は必要に従っておのおのに分け与えられたからである。36 キプロス生まれのレビ人で、使徒たちによってバルナバ(訳すと、慰めの子)と呼ばれていたヨセフも、37 畑を持っていたので、それを売り、その代金を持って来て、使徒たちの足もとに置いた。」([新改訳])。

バルナバはこの後、サウロと共に活動する様子がたくさん記述されている人で、「Colossians(コロサイ人への手紙)」によると「マルコの福音書」を記したヨハネ・マルコの従兄です。

さきほどのGalatian 1:18(ガラテヤ人への手紙第1章第18節)によると、サウロはエルサレムを訪ねた際にペテロの家に15日間滞在しています。ペテロはエルサレムの教会のリーダー格で、初期からイエスさまと共に行動し、イエスさまから使徒に選ばれ、イエスさまの言動に自分の耳と目で直接触れた人物です。一方のサウロは上にも書いたように、また自分のことを「ガラテヤ人への手紙」の中で言及しているように、聖書の学習や伝承に誰よりも熱心だった人物です。この二人がこの15日間の間、寝食を共にして互いの情報を交換したのです。それぞれが信仰を強め、また福音伝道に役立つ強力な知識を分かち合うための15日間の特別合宿という感じでしょうか。

サウロはエルサレムでも伝道しますが、サウロの伝道スタイルはよほど効果的かつ大胆で強力だったのでしょう、サウロはエルサレムでも同様の迫害に会い、今度は生まれ故郷のタルソへ逃れました。サウロを殺そうとしているのはもともとサウロが所属していたギリシヤ語を話すディアスポラ系のユダヤ人の共同体で、サウロはこの後最後まで命を狙われ続けます。

第31節にあるように、こうして初期の教会は広い地域で着実に信者を増やし、基盤を固めていきました。



english1982 at 21:00│使徒の働き