2015年08月25日

使徒の働き第7章第30節~第43節:ステパノが最高議会に向けて話す(続き)

第7章




(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


30 "Forty years later, in the desert near Mount Sinai, an angel appeared to Moses in the flame of a burning bush.

30 四十年後、シナイ山の近くの荒野で、燃える柴の炎の中に天使がモーゼに現われました。

31 Moses saw it and wondered what it was. As he went to see, the voice of the Lord called out to him,

31 モーゼはそれを見て、それが何なのかと不思議に思いました。それを見るために近づいていくと、主の声が聞こえました。

32 `I am the God of your ancestors -- the God of Abraham, Isaac, and Jacob.' Moses shook with terror and dared not look.

32 『わたしはあなたの父祖たちの神、アブラハム、イサク、ヤコブの神である。』 モーゼは恐怖で震え上がり、わざわざ見定めようとは思いませんでした。

33 "And the Lord said to him, `Take off your sandals, for you are standing on holy ground.

33 そして主はモーゼに言いました。『くつを脱ぎなさい。あなたはいま聖なる地に立っているのだから。

34 You can be sure that I have seen the misery of my people in Egypt. I have heard their cries. So I have come to rescue them. Now go, for I will send you to Egypt.'

34 私は確かに私の民がエジプトで苦難に会っているのを見た。私は民のうめき声を聞いた。だから私は彼らを救い出すためにやって来た。さあ、行きなさい。なぜなら私はあなたをエジプトへ遣わすからです。』

35 And so God sent back the same man his people had previously rejected by demanding, `Who made you a ruler and judge over us?' Through the angel who appeared to him in the burning bush, Moses was sent to be their ruler and savior.

35 つまり神さまは、『誰があなたを私たちの支配者や裁判官に任命したのですか』と、民が以前拒んだのと同じ男を送り返したのです。燃える柴の中に現れた天使によって、モーゼは彼らの支配者として、また救い主として遣わされたのです。

36 And by means of many miraculous signs and wonders, he led them out of Egypt, through the Red Sea, and back and forth through the wilderness for forty years.

36 そしてモーゼはたくさんの奇跡のしるしと不思議によって、紅海を抜け、四十年間荒野を行き来して、 民をエジプトから導き出したのでした。

37 "Moses himself told the people of Israel, `God will raise up a Prophet like me from among your own people.'

37 このモーゼ本人がイスラエルの人々に言っています。『神さまはやがて私のようなひとりの預言者を、あなた方自身の中から立てるでしょう。』

38 Moses was with the assembly of God's people in the wilderness. He was the mediator between the people of Israel and the angel who gave him life-giving words on Mount Sinai to pass on to us.

38 モーゼは荒野で神さまの民と一緒にいたのです。モーゼはイスラエルの民と天使との間の仲介者でした。天使がシナイ山でいのちを与える言葉をモーゼにさずけ、モーゼがそれを私たちに伝えたのです。

39 "But our ancestors rejected Moses and wanted to return to Egypt.

39 ところが私たちの父祖はモーゼを拒絶し、エジプトに戻りたいと言いました。

40 They told Aaron, `Make us some gods who can lead us, for we don't know what has become of this Moses, who brought us out of Egypt.'

40 父祖たちはアロンに言いました。『私たちの先に立って案内するような神々を作ってください。なぜなら私たちをエジプトから導き出したモーゼが、どうなってしまったのかわかりませんから。』

41 So they made an idol shaped like a calf, and they sacrificed to it and rejoiced in this thing they had made.

41 そこで彼らは子牛の形をした偶像を作り、偶像にいけにえをささげ、彼らの手で作ったこの物を喜びました。

42 Then God turned away from them and gave them up to serve the sun, moon, and stars as their gods! In the book of the prophets it is written, `Was it to me you were bringing sacrifices during those forty years in the wilderness, Israel?

42 そこで神さまは民に背を向け、彼らが太陽や月や星々を彼らの神として崇拝するにまかせたのです。預言者たちの書には次の様に書かれています。『荒野にいた四十年の間、あなた方がいけにえの捧げものを運んできたのは、私のためだったのか、イスラエルよ。

43 No, your real interest was in your pagan gods -- the shrine of Molech, the star god Rephan, and the images you made to worship them. So I will send you into captivity far away in Babylon.'

43 いや違う。あなた方の本当の関心は自分たちの異教の神々にあった。モロク神の社、ロンパの星の神、そしてあなた方がそれらを拝むために作った偶像ではないか。それゆえ、私はあなた方を遠くバビロンの地へ移して監禁する。』




ミニミニ解説

「使徒の働き」の第7章です。

初期の教会で、おそらくディアスポラ系のギリシヤ語を話すユダヤ人を代表となるべく選ばれた七人のリーダーのうち、筆頭格のステパノは驚くべき不思議としるしを行って人々に福音を伝えていました。ところが活動先のディアスポラ系の会堂の人たちから議論を挑まれ、告発を受けて逮捕されてしまいます。ステパノはサンヘドリンの前へ引き出されて大祭司の尋問を受けますが、ステパノは逆にこれを福音を伝える好機ととらえて長いスピーチを始めました。

ステパノが語る話は旧約聖書の「Genesis(創世記)」から始まる、ユダヤ人なら誰でも知っているユダヤ民族の歴史です。神さまからユダヤ人の父祖として選ばれたアブラハムの子孫は、三代目のヤコブの息子ヨセフがエジプトへ奴隷として売られたことをきっかけとして、民族全体が一度エジプトへ移り住みました。ヨセフはエジプトを飢饉の危機から救った功績で、国王に次ぐ国家のナンバー2の座にまで上り詰め、ユダヤ民族はその恩恵でエジプト国内で手厚い庇護を受けますが、国王の代が移り、ヨセフの功績をよく知らない王が王座に就くようになると、国内で人口を増やしていくユダヤ人は脅威に映るようになります。ユダヤ民族はやがてエジプト人の奴隷の身分へと落とされ、過酷な生活を強いられ、迫害に遭うようになります。

ユダヤ人をこの窮状から脱出させるために神さまが遣わしたのが預言者モーゼです。モーゼはエジプト王がユダヤ人に下した命令どおり、生後三ヶ月で捨てられますが、王の娘がモーゼを見つけて育てます。王室で育ったモーゼは、ある日自分の民族を訪ねてみようと思い立ち出かけますが、訪問先でユダヤ人を守ろうとしてエジプト人を殺してしまいます。さらには自分の民族からも告発を受けてエジプトの地を後にしました。

今回はこの続きです。

殺人の告発の脅しを受けて、ミデアンの地に逃れていたモーゼに、ある日神さまが現れます。荒野で炎を上げて燃える柴を見つけるのですが、炎を上げながらも柴は燃え尽きる様子がありません。モーゼが柴に近づくと、神さまの声が聞こえます。Exodus 2:23-3:10(出エジプト記第2章第23節~第3章第10節)を引用します。

「23 それから何年もたって、エジプトの王は死んだ。イスラエル人は労役にうめき、わめいた。彼らの労役の叫びは神に届いた。24 神は彼らの嘆きを聞かれ、アブラハム、イサク、ヤコブとの契約を思い起こされた。25 神はイスラエル人をご覧になった。神はみこころを留められた。1 モーセは、ミデヤンの祭司で彼のしゅうと、イテロの羊を飼っていた。彼はその群れを荒野の西側に追って行き、神の山ホレブにやって来た。2 すると主の使いが彼に、現われた。柴の中の火の炎の中であった。よく見ると、火で燃えていたのに柴は焼け尽きなかった。3 モーセは言った。「なぜ柴が燃えていかないのか、あちらへ行ってこの大いなる光景を見ることにしよう。」 4 主は彼が横切って見に来るのをご覧になった。神は柴の中から彼を呼び、「モーセ、モーセ」と仰せられた。彼は「はい。ここにおります」と答えた。5 神は仰せられた。「ここに近づいてはいけない。あなたの足のくつを脱げ。あなたの立っている場所は、聖なる地である。」 6 また仰せられた。「わたしは、あなたの父の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である。」モーセは神を仰ぎ見ることを恐れて、顔を隠した。7 主は仰せられた。「わたしは、エジプトにいるわたしの民の悩みを確かに見、追い使う者の前の彼らの叫びを聞いた。わたしは彼らの痛みを知っている。8 わたしが下って来たのは、彼らをエジプトの手から救い出し、その地から、広い良い地、乳と蜜の流れる地、カナン人、ヘテ人、エモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人のいる所に、彼らを上らせるためだ。9 見よ。今こそ、イスラエル人の叫びはわたしに届いた。わたしはまた、エジプトが彼らをしいたげているそのしいたげを見た。10 今、行け。わたしはあなたをパロのもとに遣わそう。わたしの民イスラエル人をエジプトから連れ出せ。」([新改訳])

モーゼは神さまに選ばれてエジプトで苦難にあえぐユダヤの民の元へ送られ、そこで数々の奇跡のしるしや不思議な技を行って、最終的にユダヤの民をエジプトから脱出させました。有名な紅海の水が左右に開いてユダヤの民が乾いた地面を渡るシーンはここで登場します。第37節にある『神さまはやがて私のようなひとりの預言者を、あなた方自身の中から立てるでしょう。』は、旧約聖書のDeuteronmy 18:15(申命記第18章第15節)に書かれています。「あなたの神、主は、あなたのうちから、あなたの同胞の中から、私のようなひとりの預言者をあなたのために起こされる。彼に聞き従わなければならない。」([新改訳])

この部分、預言者を示す「prophet」の前には不定冠詞の「a」がついていますから、モーゼのような預言者を「ひとり」遣わす、と神さまが約束していることになります。この「ひとりの預言者」がいったい誰のことなのかは、ユダヤ民族の中でも大きな議論となりました。イエスさまの時代にはモーゼの後継者であるヨシュアがそうであったという考えが支配的だったようですが、ここでステパノはそれがイエスさまだったのだと言いたいのです。

モーゼは神さまとイスラエルの民との間で仲介者としての役割を果たし、神さまのメッセージを直接神さまから聞いて、律法の形にして民に伝えました。また十戒の刻まれた石版をシナイ山の上で授かり、これをユダヤの民に示しました。福音書の中のイエスさまは、律法の裏にある神さまの意図や計画を話しています。つまり律法はどうして神さまから授けられたのか、神さまの意図はどこにあったのか、律法の裏にある神さまの真意を伝えることで、本当の意味での律法の成就、あるいは律法の完成を教えました。ステパノは、神さまが言った「私のようなひとりの預言者」、つまりモーゼのような預言者とは、神さまとユダヤの民と間に立って仲介を行う人のことであり、そうであればそれはヨシュアではなくてイエスさまだと言いたいのです。

第38節には「Moses was with the assembly of God's people in the wilderness.」とあり、私はこれを「モーゼは荒野で神さまの民と一緒にいたのです。」と訳しました。この「assembly」(集合)の部分の原語は「(神さまから)呼び出された者たち」の意味だそうで、神さまはユダヤの民をわざわざ呼び出し、モーゼを通じて律法を授けることで自分の民との特別な契約を結んだ、と言っています。

ところがどうでしょうか。第39節以降にあるように、ユダヤの民は荒野での辛い生活が続くと、奴隷の状態でも良いからエジプトへ帰りたいと不平を言い始め、モーゼが十戒を授かるために民を留守にしてシナイ山へ登っている間に、モーゼの兄のアロンに頼んで子牛の形をした偶像を作り、それを自分たちの神として拝み始めました。つまり神さまが契約を結ぼうと、モーゼを通じて呼び出したユダヤの民は、モーゼを拒絶し、自分たちで偶像を作ることで契約を自分たちの側から破ったのです。こうしてユダヤの民は選ばれた民としての資格を喪失します。

ユダヤの民は神さまの意図から外れて歩み続けた結果、第43節に書かれた予告のとおりにバビロンの地へ連れ去られ、そこで70年の間監禁されてしまいます。これが起こったのはユダヤ人のエジプト脱出から約900年後、紀元前600年ごろのことです。

次回もステパノの話が続きます。




english1982 at 20:00│使徒の働き