2015年08月27日

使徒の働き第5章第17節~第42節:使徒たちが迫害に直面する

第5章




(英語は[NLT]、日本語は私の拙訳です。)


The Apostles Meet Opposition

使徒たちが迫害に直面する


17 The high priest and his officials, who were Sadducees, were filled with jealousy.
17 大祭司とサドカイ派の高官たちは嫉妬で一杯になりました。

18 They arrested the apostles and put them in the public jail.

18 彼らは使徒たちを逮捕して、牢屋に入れました。

19 But an angel of the Lord came at night, opened the gates of the jail, and brought them out. Then he told them,

19 しかし主の天使が夜に訪れて牢屋の扉を開き、使徒たちを連れ出しました。それから天使は使徒たちに言いました。

20 “Go to the Temple and give the people this message of life!”

20 「寺院に行き、人々に、このいのちの言葉を伝えなさい。」

21 So at daybreak the apostles entered the Temple, as they were told, and immediately began teaching. When the high priest and his officials arrived, they convened the high council -- the full assembly of the elders of Israel. Then they sent for the apostles to be brought from the jail for trial.

21 それで使徒たちは夜明けに寺院に入ると、言われたとおりに即座に教え始めました。大祭司と高官たちは到着すると最高議会、つまりイスラエルの長老全員の集会を招集しました。そして使徒たちを裁判にかけるために連れてこさせるため、牢屋へ呼びに行かせました。

22 But when the Temple guards went to the jail, the men were gone. So they returned to the council and reported,

22 しかし寺院の守衛が牢屋へ行ってみると使徒たちは消えていました。そこで守衛たちは議会へ戻り、報告しました。

23 “The jail was securely locked, with the guards standing outside, but when we opened the gates, no one was there!”

23 「牢屋はしっかり施錠されていました。外には見張りが立っていました。しかし我々が扉を開けると中には誰もいませんでした。」

24 When the captain of the Temple guard and the leading priests heard this, they were perplexed, wondering where it would all end.

24 寺院の守衛長や祭司長たちはこれを聞いて、いったいどうなって行くのかと当惑しました。

25 Then someone arrived with startling news: “The men you put in jail are standing in the Temple, teaching the people!”

25 それから誰かが驚くべき知らせを持って到着しました。「あなた方が牢屋に入れた男たちが寺院の中で、立って人々に教えています。」

26 The captain went with his Temple guards and arrested the apostles, but without violence, for they were afraid the people would stone them.

26 守衛長は寺院の守衛たちと行って使徒たちを逮捕しましたが、乱暴なことはしませんでした。人々が彼らを石で打ち殺すのではないかと恐れたのです。

27 Then they brought the apostles before the high council, where the high priest confronted them.

27 守衛長たちは使徒たちを最高議会の前へ連れて来ました。大祭司が使徒たちと向かい合いました。

28 “We gave you strict orders never again to teach in this man’s name!” he said. “Instead, you have filled all Jerusalem with your teaching about him, and you want to make us responsible for his death!”

28 大祭司は言いました。「この男の名前によって二度と教えてはならないと、あなた方に厳しく命じたはずです。それなのにあなた方はエルサレム全体を彼についての教えで満たしてしまいました。そしてあなた方は彼の死の責任を私たちに負わせたいと思っています。」

29 But Peter and the apostles replied, “We must obey God rather than any human authority.

29 しかしペテロと使徒たちは答えました。「私たちはどのような人の権威よりも、神さまに従うべきです。

30 The God of our ancestors raised Jesus from the dead after you killed him by hanging him on a cross.

30 私たちの父祖たちの神さまが、あなた方がイエスさまを十字架にかけて殺した後で、死者の中からよみがえらせたのです。

31 Then God put him in the place of honor at his right hand as Prince and Savior. He did this so the people of Israel would repent of their sins and be forgiven.

31 神さまはイエスさまを、王であり救世主として、神さまの右手の名誉の座に置きました。神さまがこれを行ったのはイスラエルの人たちが、自分たちの罪を後悔し、許しを得られるようにです。

32 We are witnesses of these things and so is the Holy Spirit, who is given by God to those who obey him.”

32 私たちはこれらの出来事の証人であり、神さまが、自分に従う人たちに与える聖霊もまた同じように証人です。」

33 When they heard this, the high council was furious and decided to kill them.

33 これを聞くと最高議会は怒り狂い、使徒たちを殺そうと決めました。

34 But one member, a Pharisee named Gamaliel, who was an expert in religious law and respected by all the people, stood up and ordered that the men be sent outside the council chamber for a while.

34 しかし構成員のひとりで、律法の専門家ですべての人に尊敬されているガマリエルというファリサイ派の人が立ち上がり、使徒たちをしばらくの間、議会の部屋から出すように命じました。

35 Then he said to his colleagues, “Men of Israel, take care what you are planning to do to these men!

35 それからガマリエルは同僚たちに言いました。「イスラエルの皆さん、この人たちにしようとしていることについて、よく気をつけてください。

36 Some time ago there was that fellow Theudas, who pretended to be someone great. About 400 others joined him, but he was killed, and all his followers went their various ways. The whole movement came to nothing.

36 しばらく前にチゥダなる男がいて何か偉い者のように装いました。他に約四百人ほどが加わりましたが、チゥダは殺され、従った者はみな別々の道を行きました。運動のすべては何にもなりませんでした。

37 After him, at the time of the census, there was Judas of Galilee. He got people to follow him, but he was killed, too, and all his followers were scattered.

37 チゥダの後、人口調査のときにガリラヤのユダが現れました。ユダは人々を従わせましたが、やはり殺されて、従った者たちはみな散らされました。

38 “So my advice is, leave these men alone. Let them go. If they are planning and doing these things merely on their own, it will soon be overthrown.

38 そこで私の助言は、こういう人たちは放っておきなさい、と言うことです。行かせればよいのです。もしその者たちが単に自分たちだけのために、これらの計画を立てて実行しているのなら、すぐに倒されます。

39 But if it is from God, you will not be able to overthrow them. You may even find yourselves fighting against God!”

39 しかしもしそれが神さまからのものであれば、あなた方には彼らを倒すことはできません。あなた方は自分たちが神さまに敵対していると気づくのかも知れません。」

40 The others accepted his advice. They called in the apostles and had them flogged. Then they ordered them never again to speak in the name of Jesus, and they let them go.

40 他の者たちはガマリエルの助言を受け入れました。議員たちは使徒たちを呼び入れ、むちで打たせました。それから議員たちは使徒たちに二度とイエスさまの名前によって語ってはならないと命じてから釈放しました。

41 The apostles left the high council rejoicing that God had counted them worthy to suffer disgrace for the name of Jesus.

41 使徒たちは、神さまが使徒たちをイエスさまの名前のために不名誉を受けるに値するとしてくれたと喜びながら、最高議会を後にしました。

42 And every day, in the Temple and from house to house, they continued to teach and preach this message: “Jesus is the Messiah.”

42 そして毎日、寺院や家々で、使徒たちはこのことを教え続けました:イエスさまは救世主です。




ミニミニ解説

「使徒の働き」の第5章です。

前回は不動産を売った代金のことで嘘をつき、死んでしまったアナニヤとサッピラの話でした。その後で使徒たちが数々の奇跡のわざや不思議を行っていたこと、初期の教会の信者たちが定期的に寺院のソロモンの回廊で集会を行っていたこと、エルサレムの人々が使徒たちの癒やしの奇跡を熱狂的に求めていたこと、そして人々が信者たちを尊敬の念を持って見ていたこと、男性も女性も信者の数は増加していたことなどが書かれていました。

第17節、このことについて大祭司とサドカイ派の高官たちは嫉妬で一杯になります。サドカイ派はユダヤの宗教上、政治上の派閥のひとつで、祭司、大商人、貴族などの特権階級で構成されていました。

第18節、それで使徒たちは大祭司とサドカイ派によって逮捕され、牢屋に監禁されてしまいますが、第19節、夜中のうちにすぐに天使によって助け出され、第21節、夜明けになると寺院へ戻って再び教え始めます。

同じ第21節、使徒たちを逮捕した大祭司とサドカイ派の高官たちは夜が明けるとサンヘドリンを招集し、裁判を開くことを告げて牢屋から使徒たちを連れてこさせようとしますが、第22節~第24節、表に護衛が立っているのに牢屋の中には誰もいません。いったい何が起こっているのでしょうか。さっぱりわかりません。

第25節~第26節、そこへ牢屋にいたはずの使徒たちが寺院で教えているとの報告が入り、使徒たちは再び逮捕されます。ソロモンの回廊は使徒たちの教えを熱心に聞く人たちであふれていたでしょうから、そこで手荒なまねはできません。暴動が発生してしまいます。

第27節~第28節、サンヘドリンの宗教裁判が始まり、大祭司が直接使徒たちを問いただします。前回、第4章で生まれつき歩くことのできなかった人を癒やした後でペテロとヨハネが逮捕されたときには、目の前に奇跡の事実をつきつけられて、結局ふたりを裁くことができず、ふたりは特におとがめもなく釈放されたのですが、二度とイエスさまの名前で教えてはならないと繰り返し警告されていました。大祭司はこのことを持ち出して、警告したことを忘れたのかと問いただします。それどころか、いまエルサレムの町は使徒たちの話で持ちきりであり、その使徒たちが繰り返す教えの中には、ユダヤ人が拒絶してローマ帝国に殺させたイエスさまを神さまがよみがえらせた、というくだりが含まれていて、つまりサンヘドリンは悪者の中心に置かれているのです。もちろん使徒たちのメッセージで大切なのは、誰かを悪者にすることではなくて、ユダヤ人が等しく自分たちの罪を認め、神さまに向き直り、許しを請い、神さまを褒め称え、そうすることで永遠のいのちを手に入れることなのですが、サンヘドリンは自分たちを悪者にして人々の尊敬や人気を集める使徒たちに怒りと嫉妬でいっぱいなのです。

第29節~第32節、しかし畏れ多い大祭司から直接尋問を受けているというのに、使徒たちはまったくひるみません。自分たちはサンヘドリンなどの権威などより、神さまの権威に従うと大胆に言います。そして自分たちはイエスさまに関する福音の証人であり、自分たちを通じて語る聖霊もまたその証人である、と言います。

第33節、これを聞いたサンヘドリンは使徒たちを殺そうと決めます。つまりイエスさまの時と同じようにサンヘドリンで死刑の議決を出して、ローマ帝国に死刑執行を依頼しようと考えているのです。

第34節、するとファリサイ派のガマリエルが立ち上がり、使徒たちを議会場から出させた上で、サンヘドリンの議員たちをなだめます。「サンヘドリンが」とか、「ファリサイ派が」とひとまとめに書いてきていますが、構成員にはこのように、いろいろな人がいるのです。この時代の高名なファリサイ派の律法学者はシャンマイとヒレルで、相互に異なる学説を展開して対立していたようですが、ガマリエルはヒレル派のひとりです。Acts 22:3(使徒の働き第22章第3節)ではパウロが「私はキリキヤのタルソで生まれたユダヤ人ですが、この町で育てられ、ガマリエルのもとで私たちの先祖の律法について厳格な教育を受け、今日の皆さんと同じように、神に対して熱心な者でした」([新改訳])と自己紹介しています。つまりパウロもまたヒレル派の法律学者だったのです。

ガマリエルは「イスラエルの皆さん、この人たちにしようとしていることについて、よく気をつけてください」と話し始めます(第35節)。ガマリエルはチゥダとガリラヤのユダを例にあげて、反ローマ帝国の武装蜂起がそれぞれどのような顛末を迎えたのであったか、議員たちの記憶を呼び起こします。その上で、第38節、こういう人たちは放っておきなさい、その者たちが単に自分たちだけのために実行しているのならすぐに倒されます、と言います。驚くべきは第39節です。「しかしもしそれが神さまからのものであれば、あなた方には彼らを倒すことはできません。あなた方は自分たちが神さまに敵対していると気づくのかも知れません」という発言です。つまりガマリエルは使徒たちが神さまの意志を遂行している可能性を否定しないのです。

それからここで注目すべき点のもうひとつは、使徒たちを逮捕してサンヘドリンの扇動をリードしたのが大祭司とサドカイ派の貴族層だったのに対し収拾したのがファリサイ派の律法学者だったことです。サドカイ派とファリサイ派はこの場面でも対立の構図になっています。ファリサイ派は旧約聖書上の律法も口頭伝承の慣習法も、すべてを間違いなく守ることで自分たちが天国に迎えられると信じていた人たちで、その敬虔な姿勢はやはり人々の尊敬を集めていました。律法学者になるためには長く厳しい修行と学習が必要なのですが、その道を志すことは誰にでもできたのです。一般の人々の中から出て、高い志を持って厳しい修行に臨み、そうやってついには律法学者となって敬虔な道を歩むのです。使徒たちをエルサレムから排除したかったサドカイ派の貴族層は、そんなファリサイ派のガマリエルによって事態に水を差されて怒り心頭だったのかも知れません。




english1982 at 21:00│使徒の働き