2015年08月31日

使徒の働き:はじめに

使徒の働き


はじめに
第01章 第02章 第03章 第04章 第05章
第06章 第07章 第08章 第09章 第10章
第11章 第12章 第13章 第14章 第15章
第16章 第17章 第18章 第19章 第20章
第21章 第22章 第23章 第24章 第25章
第26章 第27章 第28章
全体目次




「Acts(使徒の働き)」は新約聖書の中の5番目の本で、四つの福音書と多数の書簡(手紙)の間に位置するユニークな本です。イエスさまが十字架死~復活を経て天に戻った後、使徒たちをリーダーとして初期の教会がどのように形成されていったか、その様子が書かれています。

「Acts(使徒の働き)」を記述したのはルカで、「Gospel of Luke(ルカの福音書)」と「Acts(使徒の働き)」の二冊は前編と後編の関係にあります。つまり「Luke(ルカの福音書)」がイエスさまについて誕生から十字架死、復活までを書き、「Acts(使徒の働き)」では復活したイエスさまが天へ戻った後の出来事を書いています。

ルカの職業は医者です。それはパウロが書いたとされる「Colossians 4:14(コロサイ人への手紙第4章第14節)」に「愛する医者ルカ、それにデマスが、あなたがたによろしくと言っています」([新改訳])と書いているところからわかります。またパウロの書簡には福音を伝えるためにルカがパウロと共に献身的に働いた様子が記述されています。「ルカ」という名前はギリシア名で、研究によるとシリアのアンテオケの出身の異邦人(ユダヤ人から見た外国人)です。そうするとルカは新約聖書の記述者として登場する唯一の異邦人ということになります。ユダヤ人の保守層は異邦人を嫌います。そんなユダヤ人から始まった教えでありながら、異邦人のルカによる本を新約聖書に収録したのは大変画期的なことと言えます(ルカをユダヤ人だとする説もあります)。

ルカはパウロの3回の伝道旅行のうち第2回と第3回、及び最後にパウロが処刑のためにローマへ護送された旅に同行しました。パウロがローマへ送られる前にカイザリアで2年間牢に入れられていた期間があるのですが、おそらくこの間にルカはパウロのそばで過ごしていて、後日に「ルカ」と「使徒の働き」を記述するための材料を集めたのだろうと言われています。なので「使徒の働き」を読むと、パウロが福音を伝えるためにどのような活動をしたのかを知ることができます。

ルカは出来事を記述する際に、そのときの皇帝や総督、大祭司などの名前を使うようにしていて、これで実際の世界史との関連が客観的にわかるように配慮されています。旅程の記述にあたっても福音書のイエスの誕生の場面でマリヤとヨセフには泊まる宿がなかったなどという記述や、パウロの一行が滞在した場所や周囲の様子を事細かに書くなど、歴史の記述者としての手腕を発揮しています。

ルカが記述した文書の量は「ルカの福音書」と「使徒の働き」の二つの本を合わせると、新約聖書全体の1/4を越える量になります。職業が医者ということもあって、記述は大変客観的にまた冷静に行われています。また記述内容を見るとギリシア語に精通していたことがよくわかり、他の新約聖書の著者よりも視野が広く洗練された印象を与えます。ルカの文章は自然体で読みやすく、「ルカの福音書」は文学上の品質としては四つの福音書の中で最高とも言われます。

「ルカの福音書」が書かれたのはおそらく西暦60~70年頃です。50~60年頃からローマ帝国の迫害が厳しくなり、70年にはついにエルサレムが陥落してイスラエルという国は地上から一度姿を消します。そんな状況下で、ルカは政治や文化に影響力の強いローマ帝国の人たちに対して、クリスチャンとは何か、福音とは何かを正しく客観的に伝えようとしたのだと考えられています。記述の中ではクリスチャンが反政府的な扇動の容疑を受けながら最終的に無罪の判断が下される場面が多数記述されています。

ときにキリスト教は悪意のある迷信で、気づかれないように秘密裏に勢力を拡大したとの批判を受ける場合がありますが、ルカは福音書の中でイエスさまがあらゆる地位や階級の人々と触れ合い、神さまの国についての教えを民衆の前で公然と述べ伝えていたことを記述しました。

「使徒の働き」のテーマはいくつかありますが、代表的なテーマとしてユダヤ人による教会と異邦人による教会の関係が挙げられます。世界で最初の教会はイスラエルの都エルサレムからスタートして各地へ拡がっていき、その途中で次々と異邦人を巻き込んで行きます。ユダヤ人の教会と異邦人の教会、二つの教会がそれぞれ何にこだわり、どのように衝突・和解したのか、初期の教会で最初に明らかになった「違い」は、今日のクリスチャンの間でも「信仰」に関するテーマとしてしばしば挙げられます。

ですが「使徒の働き」の最大のテーマはイエスさまが天に戻った後の信者たちが、どのようにしてイエスさまに関する真実を伝えたか、どのように苦難に立ち向かって勝利を収めたかです。イエスさまに関する福音は地理的にも民族的にも次々と壁を越えて拡がっていきます。そして信者による伝道を助けた「聖霊」についても、その訪れから始まり、様々な働きが各所に描かれています。


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