2016年01月29日
三つの地方
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イエスの時代のイスラエルは、大まかに北から「ガリラヤ」「サマリヤ」「ユダヤ」の三つの地方に分かれていました。
・三つの地方
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ガリラヤ
ガリラヤは三つの地方のうち最も北方の地方で、全体の1/3を占めます。そもそもイスラエルの十二部族のうち「Naphtali(ナフタリ)」の治める山岳地帯で、ユダヤ人と異教徒が混合で住んでいました。
最初の征服の後も異国の「Canaanites(カナン人)」の勢力が優勢だったので異教徒の地として知られていました。その後もソロモン王がこの地方の20の都市を材木の支払いの代わりに他国に渡したり、アッシリア帝国の征服に会うなどして異教徒の植民が進みました。
異国民が長く住んだこともあり、ガリラヤ地方の出身者は方言がとても耳につくことで知られています。
これらの理由からエルサレム周辺に住み純血を尊ぶ保守的なユダヤ人層はガリラヤ地方を嫌っており、福音書の中でガリラヤ地方について皮肉が言われる理由はここにあります。
ガリラヤ地方の北部は海抜1000mにも及ぶ山岳高地で、イエスの時代には深い森林で人がほとんど住んでいませんでした。一方ガリラヤ地方の南部は海抜500~700mで、北部に比べると気候が穏やかで土地も肥沃で主要な産物はオリーブ油、穀物、魚でした。
ガリラヤ地方にはイエスが幼年時代を過ごした「Nathareth(ナザレ)」があります。また十二使徒のうち「Judas of Iscariot(イスカリオテのユダ=最後にイエスを裏切った使徒)」を除くと全員がガリラヤ地方の出身です。
また、この地方にある「Cana(カナ)」の町でイエスは水をぶどう酒に変える最初の奇跡を行い、やはりこの地方の町「Capernaum(カペナウム)」はイエスの伝道活動の中心になりました。
ガリラヤは英語では「Galilee」で「ギャリリー」と発音されます。
サマリア
三つの地方のうち北のガリラヤと南のユダヤに挟まれた中央の地方です。そもそも十二部族のうち「Ephraim(エフライム)」と「Manasseh(マナセ)」の西部に割り当てられた土地です。
大変肥沃で魅力的な土地で、穀類やオリーブ、ぶどうが実り、東西南北に街道が通り交易も盛んでした。このサマリア地方の肥沃な土地のおかげで王国が南北に割れた際に、サマリアを含む北朝イスラエルはいつも経済的に富んでいました。その一方で魅力的な土地は侵略の対象にもなり、また交易が盛んであったために異教徒が多数入り込みました。
サマリアは地方の名前であると同時に町の名前でもあります。サマリアの町は紀元前722年にアッシリア帝国の侵略に屈し、上流中流の市民が連れ去られて、代わりに異国民が植民されました。これらの異国民は国外追放を免れた下層のユダヤ人たちと結婚し混血種のサマリア人が増えました。
サマリア人たちは聖書に書かれた創造主としての神さまを信仰せず、異国の神々や偶像を崇拝しましたので預言者は繰り返し強い言葉でサマリア地方の偶像崇拝、不道徳、そして贅を好み貧しい者から搾取する邪悪を責めました。サマリア地方のユダヤ人が異国人と結婚して混血化したこともあり、保守的なユダヤ人層からは大変嫌われていました。
ガリラヤとユダヤの間に位置し交通の便も良かったので、サマリア地方は南北を行き来する旅人の通り道ではありましたが、宗教上の汚れを嫌うユダヤ人たちはサマリア人との接触を避けるためにわざわざヨルダン川を渡って川の東側を北上して旅をしたほどです。
サマリアは英語では「Samaria」で「サマリア」と発音されます。
ユダヤ
ユダヤは三つの地方のうちもっとも南にある地方です。
「Judea(ユダヤ)」は「Judah(ユダ)」のギリシア・ローマ調の呼び名です。「Jewish(「ジューイッシュ」と発音し「ユダヤ人の」の意味)」から転じた言葉で、そもそもバビロニア帝国に連れ去られたユダヤ人の中で後にパレスチナへ戻ってきた十二部族のうち、ユダ族の人たちを差します。
ユダヤには「Jerusalem(エルサレム)」の都があり、エルサレムには国内唯一の寺院があります。エルサレムはイスラエルの政治上、宗教上の中心地です。
ペルシア帝国の支配下にあったときにはユダヤ人の知事が配置されていましたが、やがてローマ帝国に併合されました。
「Judea(ユダヤ)」は英語では「ジュディーア」と発音されます。
代表的な都市
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・代表的な都市
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Caesarea Philippi (ピリポ・カイザリア)
イエスの伝道活動の最北の町です。ガリラヤ湖のはるか北方、Mt Hermon(ヘルモン山)のふもとにあります。
ヘルモン山は、ヨルダン川の水源となる山で、おそらくここがイエスの姿の変貌が起こった場所です(Matthew 17/マタイの福音書第17章)。またこの地でペテロはイエスを救世主と呼びイエスが教会を築くことを約束します(Matthew 16/マタイの福音書第16章)。
英語では「シサリア・フィラパイ」のように発音されるので、耳で聞いて日本語の聖書表記の「ピリポ・カイザリア」と結びつけるのがとても難しい都市名です。
Bethsaida (ベツサイダ)
ガリラヤ地方の町です。ヨルダン川がガリラヤ湖に北方から注ぎ込む地点にあります。
イエスはガリラヤ地方で多数の奇跡を行いましたが、ベツサイダの住民は相変わらず信仰を持たなかったことから、この町は、Capenaum(カペルナウム)、Chorazin(コラジン)と並び、激しく叱責されました(Matthew 11/マタイの福音書第11章)。
この町でイエスは目の見えない人を町の外へ連れだして癒し(Mark 8/マルコの福音書第8章・Luke 10/ルカの福音書第10章)、この町の近くで5,000人の人の空腹を満たしました(Luke 19/ルカの福音書第19章)。
ペテロとアンデレの兄弟はこの町の出身と言われています。
英語では「ベスセイダ」のように発音されます。
Capernaum (カペナウム)
ガリラヤ地方の町でガリラヤ湖の北岸にあります。
この町はイエスの伝道活動の中心地でした。この町でイエスはマタイを弟子に呼び、この町で「いのちのパン」の話をし(John 6/ヨハネの福音書第6章)、他にも多数の奇跡を行いました。
英語では「カパーニアム」のように発音されます。
Cana (カナ)
ガリラヤ地方の町でナザレの北方約6kmほどの場所にあります。
イエスが最初に奇跡を行った町で、イエスはここで水をぶどう酒に変えました(John 2/ヨハネの福音書第2章)。またイエスは王室の役人の死にかけていた息子を癒しました(John 4/ヨハネの福音書第4章)。
十二使徒のひとりナタナエルはこの町の出身です。
英語では「ケイナ」のように発音されます。
Nazareth (ナザレ)
ガリラヤ地方南部の町で、イエスが幼年時代から育った町です。
イエスの母親マリアが天使から救世主イエスを授かることを告げられたのもこの町で、マリアとヨゼフはこの町からベツレヘムへと出発し、二人はその後イエスを連れてエジプトへ逃れ、それから再度この町へ戻ってきました。
イエスが最初に伝道の説教をして最初に拒絶されたのもこの町です(Matthew 4/マタイの福音書第4章・Luke 4/ルカの福音書第4章)。
英語では「ナザレス」のように発音されます。
Caesarea (カイザリア)
地中海に面した大きな町でヘロデ大王によって建築されローマの初代皇帝アウグストゥスにちなんで命名されました(Caesar=カエサル=シーザー=ローマ皇帝)。
大変大きな港町でローマ帝国の中ではパレスチナの首都でした。
英語では「シサリア」のように発音されるので日本語の聖書表記の「カイザリア」と結びつけるのが難しい都市名です。
Samaria (サマリア)
サマリア地方にあり、過去にイスラエル王国が南北朝に分裂したとき北朝イスラエルの首都だった町です。
イエスの時代にはユダヤ人から忌み嫌われるサマリア人の町です。ユダヤ人の保守層はサマリア人が異邦人との混血であること、異邦人の宗教と関係を持つことで大きな偏見を持ち、この町に住む人々と可能な限り接触を避けようとわざわざ何キロも遠回りをして旅をしていたほどです。
英語でも「サマリア」のように発音します。サマリア人は英語では「Samaritan」と途中に「t」が挿入されて、「サマリタン」と発音します。
Jerusalem (エルサレム)
ユダヤの寺院がありユダヤ人にとっては政治上、宗教上の中心地です。最も神聖な町として聖地エルサレムはユダヤ主義の心のふるさとでもあります。
赤子のイエスはこの町の寺院でユダヤ律法と慣習に沿って神の前に捧げられ、後にイエスはこの町で過越の祭に参加し、二度に渡って寺院の中から商人や両替商を追い出し、さらにたくさんの奇跡と説教を行いました。
またイエスはこの町で逮捕され、裁判にかけられ、十字架で死に、墓所に葬られ、三日後に復活しました。
英語では「ジェルースラム」のように発音され、慣れるまでは頭の中で「エルサレム」と結びつけるのに苦労します。
Bethany (ベタニア)
エルサレムからすぐ東にある町で、マリア、マルタ、ラザロの家族が住んでいた町です。イエスがユダヤ地方で行った伝道活動の中心地です。
英語では「べサニ」のように発音されます。
Bethlehem (ベツレヘム)
エルサレムから南に10kmほどのところにある小さな町でイエスが生まれた町です。
英語では「べスレヘム」のように発音されます。
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2016年01月28日
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